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2014年7月4日金曜日

『冥界の美酒』



『冥界の美酒』


メソポタミア神話風に






七年の不作が終わり、大地に作物が実りました。
七年分の農作物が繁るかのような豊作でした。
人間は、生け贄を捧げ神々に祈りました。
神々は宴会を開き、酒を飲み始めました。
知恵の神エアは酒を飲んで気分がよくなり、天神アヌに訪ねました。
「世界で一番の美酒とはどのような酒なのでしょうか?」
アヌは口を開いていった。
「この世に二つとない美酒がある。それは、神々が飲むための酒ではない。我々は人間が捧げる酒を飲むべきなのだ」
大地の女神イシュタルが天神アヌに訪ねました。
「父神アヌよ、その酒はこの世界のどこにあるのでしょうか?」
アヌは口を開いていった。
「冥界にいるお前の姉のエレシュキガルが所蔵している」
イシュタルは宴会を抜け出し、冥府へと降りて行きました。
エレシュキガルが口を開いていった。
「ようこそ、イシュタルよ。不作の時期が終わり、大地に豊作のときがきたそうな。豊作ができるだけ長く続くことを願います」
イシュタルが口を開いていった。
「エレシュキガルよ。その豊作の祝いにあなたが所蔵する、美酒を少しだけ味あわせてください」
エレシュキガルが口を開いていった。
「一滴だけなら分けてあげましょう。酔うほど飲めば、永遠の不作がきて、冥界に死者が収まりきらず、地上にあふれ出すことでしょう」
イシュタルは冥界の酒を飲みほし、酔いました。
エレシュキガルはすぐに、冥府の扉を開き、イシュタルを地上に押し返しました。
イシュタルが大地に横たわったまま、冥府の酒に酔いしれていると、体が巨大な竜になり、地上からはみ出ました。
酔いがさめたイシュタルに天神アヌは言いました。
「永遠の不作が七年で収まるよう、イシュタルはその体で大地を支えよ」
イシュタルが言いました。
「いったい、いつまで、この姿で大地を支えるのですか?」
天神アヌは言いました。
「お前の力なら、七回寝ておきるまでで不作は収まる」








『五つの風』






『五つの風』



メソポタミア神話風に




伝わるところによれば、昔の人々は神々により創られ、地上に広がりました。神々からあたえられた「火」「火風」「冷風」「強い風」「弱い風」を使い、農耕をおこない、街を建て、文明が発達していました。


「火」「火風」「冷風」「強い風」「弱い風」を神々からあたえられるとき、人々の中の代表者が五つの風を記録するため粘土に刻みました。
風を刻んだ者は、街をおさめ、その子孫たちが国を創り、おさめました。


そのさらに子孫達は、五つの風を使い他の土地に「粘土に刻むこと」と五つの風をあやつる方法を広めようとしました。


神々は人間が増えすぎるのを、抑えるために怪物を創り、人間のもとに送りこみました。


人々は天にいるイシュタル女神に祈りを捧げました。
「われわれ、人間が増えれば、あなたのための神殿も、増えることでしょう」
「あなたに捧げる祈りと生け贄もたえてなくなることは、永遠にないでしょう」
「どうかわれわれに怪物を抑える力をあたえてくれますように」

イシュタル女神はこれをきき、口を開いていった。
「怪物は神々とは違います。
神々のように永遠の生命を持ちます。
あなた達人間とも違います。
 あなた達人間と違い永遠の生命を持ちます。
 しかし、神々や人間と違い怪物には自分の意思がありません。
 粘土に刻みなさい、
 怪物を知るための数の文字を」


「五つの風と数の文字があれば、怪物を退けることができる」
「しかし、イシュタル女神の言葉は怪物は不死だといった。不作のある時期があることはあきらめるべきだ。」
「それが、女神イシュタルの意思か、五つの風の一つはイシュタルがあたえたものだ」
「われわれはイシュタルと神々の意思に逆らうべきだ。」
「イシュタルを殺すことができないように、不死の怪物はたおすことができない。それでも、イシュタルの意思に逆らうのか」
「不作の時期はながすぎる」


人々の中から選ばれた若者は、イシュタル神殿の一つに登り、怪物にむかった。
「イシュタルの意思に逆らおうとも、われわれは、五つの風をつかって、おまえを封じ込める。なぜなら、五つの風をあたえたのは神々とイシュタル女神だからだ」
火をぶつけると、怪物は動きが止まった。
火風をぶつけると怪物は腕が動かなくなった。
冷風をぶつけると怪物は火を吐くことができなくなった。
強い風をぶつけると怪物は苦しみはじめた。
弱い風をぶつけると怪物はねむった。


若者は剣を怪物に斬りつけた。
怪物はねむりから覚めた。
怪物は苦しみがとまった。
怪物は火を吐いた。
怪物は腕を動かし、若者を切りさいた。
怪物は若者を飲み込んだ。
怪物は五つの風を大地にむけてほうり投げた。


イシュタル女神は怪物を創ったシャマシュにいった。
「人間がいなくなれば、大地を耕す者がいなくなります。
 不作の時期はながすぎたのです」
「あなたこそ人間が増えすぎるのをとめるべきだといったのだ
五つの風を人間から取り上げるべきか、取り上げぬべきか、イシュタルよ、あなたがきめたまえ」
「わたしは五つの風のうち一つを取り上げよう」
それをきき、シャマシュは口を開いていった。
「わたしは三つを取り上げよう」
他の神々はいった。
「人間からは風をすべて取り上げるべきだ」
イシュタルはいった。
「人間の住む大地をうつしてあげるべきだ。
そうすれば、祈りと、私たちのための神殿と、生け贄はうしなわれることはない。」
シャマシュはいった。
「不作の次期はあなたが責任を持つべきだ。
私は、人間に船を教えよう」
天神アヌはいった。
「アヌは天を創った、イシュタルは大地を創った。人間は粘土に文字を刻んだ。だが、不作の時期はだれが創ったのだ?」


昔の人は海を渡ってこの土地にきた。