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2014年5月1日木曜日

Another War ―もうひとつの戦争― 第八部








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Another War  ―もうひとつの戦争―


第八部


Another War  ―もうひとつの戦争―



1


「じゃ」プツ
ヴィクターが通話を切る。
携帯電話でアルアロリアと話していて思った。
自分より三神の向こうの世界に詳しい娘。
最近のジュールもだ。

話の形だけでもイメージしてもらい、一枚かんでもらえれば恩の字だ。
そう思っていたが違った。
「ひめゆり団地じゃみんなそうなんだと」と腹を立てているおばさんみたいでなくてよかった。

なぜか安心する。
家の中に暖房が灯った気分だ。
自分は最先端の世界で遅れているくらいだ。
他の連中はもっと進んでいる。

アルアロリアは夢見る少女と現実を理解して大人の女の両方のいいところをもっている。
自分には贅沢すぎるレディなのかもしれない。
ヴィクターはそう思った。
そして同僚でライバルのジュール。
最近、いろんな意味でぬかされてきた気がする。
ヤツにしては欲というのかやる気がメキメキ見える。



2



時空警察の時空戦士たちは、未来人、子供の魂のままスーパーヒーロー、正義漢があるがその根拠を時空警察に依存している。
そんなイメージでデザインされている。

では、グラディウス帝国のキャラは?
正常な精神・知能のなかに数滴狂気、キチガイ、壊れている人がまじっているように人格をつくりあげてみたい。
いかにも違う世界の人みたいに感じる。目を見ると狂っている。でも自分たちより正常か…
慈悲の心が通常のキャラとズレていたりする。狂気の部分をディフォルメして極端に書きだして特徴ある人物像に仕立て上げる。


グラウディウス帝国領・ラオディキア

ロームルスの私城

ロームルスが邸宅のソファにこしかけ杖をわきに置いている。
青年が立たされている。
「セプティミウス君…あーどっこいしょ。私はね、ひっきりなしに仕事すると歯がガタガタになる。ただでさえ眼球が飛びだして右半身マヒの毛があるしな。化けものみたいに私をいう奴が多い。これもかつての激務のためだ。国を建てるために奔放した。戦争、政治、経済、モンスターとの戦い、発明、交渉、貿易、支配なんでもやったさ。でも、グラウディウスに帝国を譲渡してからは、追っかけ仕事を避けるようになった。きりがない。欲張ればな。そこで君ならどうする?セプティミウス君、君はぼくの腹心だがね」
「さあ、休養を取るとかかな。老王」
「ゼンマイを巻かれないとストップするのか?君は」
「…ぼくが慈悲の心を失って凍りつくのを老王は嫌だと思っている。それはたしかさ。ぼくに甘えることができなくなると困るのさ、年寄はつらい」
「そのとおりだ、セプティミウス」
「そのかわりぼくはいつまでもあまちゃんだ。帝国の創始者の相棒でありながら出世競争から外れた。エリートにあこがれがないわけじゃない」
「君が欲がないんだ。人に罰を与えると自分が歯科で痛い思いをしそうだから嫌なんだ。でも、よろこんで人をいじめるやつよりトップの才能があると思うけどね。
今日の仕事はひとつだけだ。あとはぐずぐずしてやり過ごす。大事な一つの仕事に力を込めて温めるんだ。そのかわり数をこなさなくていいと自分と約束する。
この歳になって、仕事は量じゃないさ。帝国のトップはかれだ。わたしじゃない。ゆったり時間をすごして大事な一点に集中するのさ。そうすれば疲労が蓄積して失敗しない。質の良い仕事を後に残せるのさ」
「ふーん。グラウディウス皇帝なんか朝から晩まで仕事だろうけど…現役だからな。あっちは。アルキメデスでバリバリ仕事してた方が楽しかったかもしないな」

老王はソファのわきにある本を取った。
ここでロームルスは老人のような口調から血気盛んな若者のようにしゃべりだした。

「読んだかこの本!?『グワンデルマルス交想曲』」
「いいや。今度読んでみるよ」
「作曲できないから本を書いて作曲した」
「どういうこと?どうやって字で書くのさ?!ああ、楽譜のことか」
「いや、小説と散文のようなスタイルで作曲している。これだ!手足がもげてものこっている片一方で何かつかめ。何かできることを発見しろって本だ。君もいつか片手を失ったり縛られたりする。自由を奪われる」
「その本と同じ。最初から音楽ができないから制限されているよ。なんでもさ」
「君は美男子だ。わたしは若いころから鬼面だった。すがすがしい青年の君と違ってはったりはきくかもしれないがなあ、さわやかな日常は晩年に来る。若いときに青春を謳歌できるのはどんな感じだ?」

セプティミウスは自分の自慢の剣 Ice Sword・ブリザードスタイルの鞘をいじった。
「迷うよ。選択肢があるようで制限されていて、謳歌する青春の土地は帝国だ。でも老王?大事な一点の仕事って?」
「うむ。それは今度の演説だ。そのことをゆっくり考えている」


アルキメデス

皇帝グラウディウスが報告書を読んでいていった。
「なに!?老王が演説。フン、公会議でも34ヶ月に一度しか参加しなくて許されるご隠居の身で。珍しくやるきがあるな。ゆとりある勤務だまったく。だが、帝国が資金不足になったとき売れと老王から渡された国宝も保有資産もある。そうは逆らえない身上だ。わたしもな」


3



セプティミウスは街でマルキウスの一味に遭遇した。
「やあ、セプティミウス君じゃないか。元気でやってるか。君は姿勢がいいから就職できたけど、オレらはこのとおり街ぶらついてる。君は帝国でも一流の生活の仲間いりじゃないか」
セプティミウスは驚いた顔をして挨拶をした。
「カルプ君…いや、マルキウス君じゃないか」
「君は学校休みがちでついに退学したけど就職には有利だったみたいだ。オレたち学校は結構頑張って卒業まで通い続けたけど。でも、オレら職がないのは自分のせいだもんな」
軍団の仲間がセプティミウスをみながらいった。
「カルプあつかいされるくらい、生意気だからな」
「カルプって誰だ?」

「…そんなオレらでも、できることはある。帝国のむこうに時空警察なんて領域あるだろ?あっちのほういってもなにかできるし、何か苦手ってことは反対に得意なものどっかあるってことだから」
マルキウスはゆっくりとしたしゃべりかたで心から吐き出すようにいった。
セプティミウスは単独でマルキウスの集団にかこまれながらいった。
「安心したよ…今の帝国で組織に従属しない気かと…今の帝国は誰でも帝国の一員だといううたい文句のご時世だよ」
「ありがとう、セプティミウス君。オレらなりにやってみようと今いろいろ考えている、じゃ元気でな」
マルキウスは大きな剣を抱えてゾロゾロ引き返していった。


セプティミウスは思った。
自分もマルキウスも貴族的な出身ではなく、どちらかというと貧しいうちの子だった。
だけど、老王はぼくを腹心にした。
昔のワル仲間だけど。
マルキウス、いまあってもぼくで怖い。



4



時空警察やコインメタトリーはモンスターの襲撃にあうのに帝国は襲われないのかという疑問に答える話。
小説に書かれなかっただけで実際は各地でモンスターに襲われているのだった。

「老王、いってきます。モンスターの襲撃だ」セプティミウスは情熱に燃え出動した。
「ああ、発明のしすぎで災難が襲ってきたな。嫌な話だ。食えるなら発明などしない方がいいのかもしれないのに…」
ロームルスは慌てるには経験がありすぎたが、やる気に関してふぬけのようになっている年齢だった。

【スマートクリーム】

「ぼくがひとりで倒せる」
クリームシチューのような粘液性のぶよぶよした魔人だった。
スライムがアバウトに人形をとったような怪物。
頭脳のようにキラキラひかる発光装置が頭部にある。
LEDのようにスマートな頭脳を持っているのかもしれない。

「ロボット頭脳のスライムか」
セプティミウスはにこやかなままアイスソード・ブリザードスタイルを抜き打ちした。

【紙縫い】
キラ!シャー!!
スドン
まっぷたつ!
切り裂かれた胴体が凍りついていた。

エドアールとどっちが強いだろう。

老王ロームルスは話を聞いて安心しなかった。
「…そうか、だがそんな簡単な相手だろうか」
「たしかに…軟体だけど、ぼくの氷の剣は冷凍してしとめるんだ」



5


ごうというつむじ風が舞う。
セルウィウスの統括するエリア。

【ブラックパズズ】
巨大化した黒いドラゴンフライ…

兵のひとりが発見し報告した。
帝国は第一階級(クラッシス)百人隊と若頭セルウィウスをブラックバズズ討伐に投入。

その姿は黒ずんだヤモリ。
爬虫類のラバーのような粘液質の肉体。
ハエのような羽に蠅の面持ちもっている。
緑色のパズズやドラゴンフライがトカゲトンボなら、ブラックパズズはハエヤモリだった。

若頭であるセルウィウスが手本を見せるため初手を撃った。
「いくぞ、百人隊の意地を見せろ!ルオオオオオ」
背中にしょった機械剣エアロソード!
ガシャンガシャンガシャンとロックが外れる音が響く。
ブッシューと蒸気機関のように湯気がふきだす。
「くらえ、スプラッシュ/クラッシュュス!!!!!!!」

バランスを崩したような、それでいて姿勢を保った態勢で強烈な一撃をブラックパズズめがけて放つ!!!

ドッオオオンン 5687

煙がもうもうと上がり敵は倒れている。
巨体は倒れておきあがらない。

「…エアロソードで蠅たたきとは思わなかった」セルウィウスはそういって剣を修めた。
ガシャンガシャン!ロックがかかる。

「デンジャラスマシンガンで撃てい!」セルウィウスは号令をかける。

ドガガッガガガガ
800
784

むくりとおきあがり、黒い風船のような肉体を力ませる。
【砂嵐】

ザザザザザ

「うおっ」
「目が」
一個団体に875ダメージ。
セルウィウスも口に砂が入りはき出した。
「ペッペッ!まったく、気色悪い!!」

ブルーライトカノンを構えた団体が青い光線を放つ。
「ダメージは少ないが…防ぐことはできまい!」
345265
「若頭!ダメージはありますが、威力が」
「ぬうううん。いったいやつのスタミナはどのくらいなんだ!?」

ブラックパズズの爪が襲う。
百人隊の隊員が切り裂かれる。

さらに、バクテリアブレスをはきだした。
シュガアアアア
「うっご、ごっほごほ」



6


ビームサーベルをもった百人隊が斬りかかる。
ドス 457
チュオン 601

「よし、さがれ、こいつでケリをつける」
【バーチャルブースター】

フルンフルンフォンンンオオオン!!
セルウィウスが構えたバーチャルブースターから高エネルギーが発射される。

ドフォン 

ブラックパズズは喰らったまま砂嵐をおこして消えた。

「消えたか…」