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2014年3月11日火曜日

誰?

誰?


女子 「やせくんがまたホラを吹いてます」

B 「やあ、やせクン」

A 「ガリです。ガリガリに疲労してます」

B 「はあはあ…ぼくがだれだかわかりますか?」

A かたてで目を押さえて、かたてを握手のように震わせて前に出す。

  「目が見えなくなりました。あなたは網を引いていました?」

B 「うんこたれです」


女子 「ゲラゲラ」 または観客

ヴィクターの司令室  上


♦      ue




ヴィクターの司令室

時空小説外伝











1


ヴィクターの時空警察内のオフィス。
戦闘任務ではなくビジネス部門などの部署。
若きヴィクターが責任者を務める。
といってもヴィクターは三十を少しすぎている。

親騎兵団の三名は戦闘以外の任務の規定はない。
そのため、このオフィスにはいない。

話が前後するが…のちほどこの部屋が結成されたときの様子を書く。


オフィスのメンバーにヴィクターがいった。
「3日後から出張の予定が入って留守にするからな。詳しくは掲示板をみてくれ」

時空警察の職員に採用されるとメンバーしか閲覧できない、ソーシャルネットのようなサイトのアカウントがもらえる。
職員は時々パソコンやスマートフォンからチェックしている。
署内の張り紙みたいなお知らせ、防火や防犯、その他のポスター、給与明細、退職希望の方の手続き、各種申込書類のフォーマット、人事異動報告、などその役職に即したページだけ閲覧できる。必要事項、書類がメール形式でとどいたり、必要なファイルが添付されてきたりする。
郵便のように自分でも送ることができる。
また、署内新聞みたいに情報も発信できる。
あるいはうわさ話しのような、つぶやきもかきこめる。
本当に見られると書きにくいことはやっぱり書きにくい。
だが、直接いいづらいが、上や周囲に提言したいことなど匿名的に書けるので、上はそれをときどきのぞいて時空警察内部の様子を掌握する参考としている。


ヴィクターは婚約者アルアロリアのいるラァ・ガードに飛ぶ。





2


宇宙船での旅の中、ヴィクターは思いだし考えた。

厳しいことをいわれないといけないのはあいつらのほうだろ!?
そう思って育ってきたところがある。
だが、気がついたとき、自由になる力を手に入れているのは自分の方だ。
注意されるはずなのに何も言われないやつらは軟弱になってみじめになっている。

…最初…自分が損ばかりしている。そう思っていたのが、考え方がチェンジした。
なるほど、オレは鍛えられている!!

だが、必要以上に人を寄せ付けない風貌があるのも確からしい。
フォルトナト…あいつにもそういわれた。
ヘタなやつはオレをみてまねをしようとする。
マネするな…
無銭飲食は罪だが、心をオレみたいに閉じているといろんな人との出会いがその分減るんだ。

トレードオフ。
なんでも都合よくはできていない。
オレでも軟弱なやつらでも、………誰でも例外ではない。

親騎兵団の三名はおいてきた。
本来なら同行させてガードさせるべきだが、あいつらになれてない状況でつれて来たら、ややしんどい。身動きが苦しくなりそうだ。
オレの力はそんなもんだ。

結構いろんな環境の変化が固まっておこったからな。
ダイナミックソルジャーという地位にもついたし、婚約もした。




3


ラァ・ガードというの土地のマッシュルームクラスというタウンについた。
案内は武に長けた武人とかではなく、民間人らしきひとだった。

「…長い橋ですが、ムーンブリッジを渡るか、船で行くと『五つのリゾートの島』があります」
「リゾート(行楽地)…?いや、あまり興味ないかもな」
「…そうですか」

アルアロリアもっと離れたコモンスル宮でまっているという。

そのまえに。
帝国グラウディウスがどのくらい進んだ世界なのか見せてもらった。

まずは武器。

【リバーキャップアクス】
【帯電竜槍ミューザム】

「リバーキャップアクス…川岸の森林を先祖の開拓者たちがこの斧で伐採して土地を切り開いたとの伝承があります。そのときパイプをふかし、頭にはハットをかぶっていたと。絵本にそういうさし絵がよくでてきます」
「なるほど…耐久性がよさそうだ。シンプルにできているからな」
「そう!わかっていらっしゃる。未開拓のフロンティアをすすむというような縁起物でもあります」
「屈指の根性で切り開けって聞こえてきそうだ」フンとヴィクターはすこし笑った。
この土地、帝国グラウディウス帝国の一部分。
この星の景観は…雪解けの春のド田舎。林がさびしく残った雪から秋の稲みたいな黄色が雪に踏まれて横倒しのようにでてきている。
そんな開拓地のような印象がある。
が、少し行くとハイテクシティのような整備された道路があるな。

察したかのように話しかけてくる。
たぶんオレがあたりをみまわしたからだ。
「この土地では、都会の喧騒を中和させる工夫がとられています。人口密度が高くても何かが重たくなる。やわらげているんです。さびしい様な天念の自然と未来的なフォルムのシティのバランス感覚を」

!なるほど、考えてやがる。そう思った。
「これは?帯電竜槍ミューザム」
「仮想的に魔法が使えない戦士でも魔法と同じ効果が。電磁力剣と同じですね」
こいつは民間人だ。戦闘をしている戦士の回答ではない。だが、いい。自分で試す楽しみがある。一本買って帰ろうか。

その民間人風の案内役はいってきた。
あとから分かったが、タクシーを乗り継ぐみたいに、場所を移るとこんな感じの案内人を紹介され、ジュールの報告書のようなセルウィウスだったか、統率者が出むくことはなかった。

「ところで、ズルとアイディアとの違いがわかりますか?」
「それは…そうか、うまいやり方や工夫という点で変わらないような気もするな」
「われわれは暮らしの貧しい。今よりですが先時代にくらべ豊かになりました。働いて創造すればそこにある。働きたくないものは貧しいままでいよ。これが教えになっています。いわゆるスパルタの一種ですが、反対論もなくもないのですが、われわれの教率になっています」
(教率:きょうりつ。導く教え、おきてのようなもの。造語)

「ズルとアイディアは確かに似ているかもしれませんが」
「うん」
「高さによるといいます」
「自分がいる高さ…」
「そう。ズルをすると高く上がれない。高くないと出てくるアイディアがそれに比例する」
「オレは結果が教えてくれると教わった。ズルするやつは結局自分が損している。うまく自然はできていると」
「よいアイディアでも周囲の迷惑を考えないとズルに近くなります。一線を引くのも大事な作業かも」
「オレは思う。他人とやりとりするときにズルという概念がでる。自給自足ならない。だから…人は取引する、つながる相手を選ぶ。ズルするとつながれる相手は同一になる。人とつながる以上迷惑は最低限考えるさ」
「時空警察領はパワーオブバランスというのかともおもいました。いや、それは帝国のほうかな」
「…」




4


マッシュルームクラスのハイテクシティな市街地にモーターカーで移動した。
帝国の最新のコンピュータ展示場にいってきた。

「これが…」
箱の形はそんな変わらない。スタイリッシュなデスクトップだった。
こんどは女性の案内人だった。
「ハイ、3D-OSです」
「スリーディ!?」

みるとコンピュータの画面が一枚のグラフックシートにアイコンが並ぶのではなく、三次元空間のように奥に進んだりできる。
「なるほど…」

案内人の女性がいう。
「制作企業ではOS革命とかOSを再発明するといって開発しております。これは第一号機で」
ブラウザも改良されている。
ネットのウェブページのアドレスを保存しやすく、整理もしやすい。
3D空間にアイコンを整理すると感覚で覚えやすい。
しかも、よく考えて作られていて使いやすいブラウザだった。

「さらに、サイコグローブというウェアラブルデバイスもあります」
グローブを手につけると3Dの中のデジタルにさわれる。
触感も振動などを介して伝わる。
「おおっ、すごい」

重力のある3D空間は物が落ちる。無重力だとアイコンが浮いている。

「デジタルの音楽レコードやアプリ開発者、映画制作もとでは作品が立体的なモノのように仮想的に扱えることを喜んでおります」

確かにデジタルがモノのようだ。
商品ならなおさらモノをつくっている、売っている感覚がリアルに近くて喜ばしいだろう。

3Dデスクトップの中で風まで吹いて揺れた。
ヴィクターはここまでいくとゲームみたいだと感じた。

一台パソコンを買いこんで宇宙船に運んだ。


5


コモンスル宮に向かう道中のことは割愛する。

宮殿では執事のような案内人がいた。
宮殿に入り、扉をくぐろうとすると止められた。
「ヴィクター様。こちらの通路は男子禁制の女性専用でして」
よく見てみると看板のようなものに書いてある。
「失敬…」

しばらくのち、アルアロリアがやってきた。
「…この間は失礼を…初めてで緊張していた」
初めて会ったときよりは落ち着いていた。
都合の悪くないが、いまさら考えなくてもいい事実を会話した。
それほど話しこまなかった。
お互いの了承を得て電話番号とメールアドレスを教え合った。


宮殿のアルコーヴに宿泊することになった。
かなり広い宮殿のようだ。
未来風というより風通しの良い古代風。
地球でいうエジプトの柱があるようなかんじか、ギリシア、ローマ文化とファンタジーの合いの子のようなつくりでもある。

食事にはアルアロリアはいなかった。
給仕が料理を運んでくれた。
うまい肉がでた。
肉を焼いて運んでくる。
酒もうまい。
だが、警戒しながら喰った。
毒?違う。
うまいもの食いすぎて腹を壊した奴のことを思い出した。
やたらうまい肉だが、がっついて喰いすぎたら、なれない旅先で腹を壊す。
酒もだ。

旅の道中新しいもの、面白いものをたくさん見た。
スタイリッシュなアートも、
ああいうものも全部だ。胃に負担が来る。
なんならテレビ、ネット、マンガ、ラジオ全部そうだ。
コンテンツや華美なもの。
ああいうもの全部胃で消化する。
神経が脳と胃とどういうふうにかつながっている。
食い物の飯だけで胃が膨れるんじゃないと知っている。
だから、コンテンツを見過ぎると腹があまり減らないことがある。

酔ってきた。
頭が軽くぼーっとする。

『サルサビールという、決して悪酔いしないという酒を飲んでみたい…』
あなたの腹には苦いが、口には蜜のように甘い。
プーニベルゼへ…



アルコーヴ(小部屋・客室)にもどると狭く地味だ。
食後にまぶしいものなど見せられたら、悪酔いが進む。
この落ち着いた造りも考えている。
ちょうど絵画で背景を地味な色でべた塗りしている絵のように…
一日にほしい量を超えるだろう。
腹ごなしに都合がよく、頭もリラックスする。




6


比較的早朝に目が覚めた。
水差しの水をゴクゴク飲んでいると携帯電話にメールが来た。
ピロリ

[もう会えたころ?。今度は目を回さなかったかい。 ジュール]
ベットのわきに立ったまま、携帯電話を操作した。
[体調良好。面白いパソコンを買ってきた。いいなづけに関して。ある程度なれた。ヴィクター]
送信して鞄にしまう。

朝食を喰い終わってまた部屋に戻ったとき、地震があった。
「?!」

アルアロリアに挨拶して旅路をひきかえすところだったが、彼女に言わせるとこの土地で地震などそうないという。
まもなく壁にかけられた平面モニターからニュースがはいった。
コモンスル宮の比較的近くに洞窟が地震のせいでもりあがるようにできたという。
しかも、狼のかたちをしているという。




7


調査団が結成されるというがそれより早く、
行ってみると狼の頭の形をした洞窟だ。

中に入ってみる。

【フェンリスダンジョン】
そう確かに書かれている。
「古代人が創った迷宮?」

比較的入口付近にまた看板のように書かれている。
【オーディンはとうとうフェンリルに飲み込まれた。無限陣の中。息子のヴィダルが鉄の靴をフェンリルの下あごにかけ口を引き裂いた。父神の仇を取った】
そう書かれている。

ヴィダル?オレのことか…?
そう一瞬思った。

さらに、【ヴィダルとは森、広い場所の意味】
と書かれ、宝箱がある。
「ゲームとか海賊ものの映画みたいだ…」
ミミックだと嫌だなと開けてみると、【鉄の靴】と書いてあり、鉄の靴が入っている。
「鉄の靴…」
これ以上奥は暗くて、荷物の中からLEDカンテラをとりださないといけなかった。



8


LEDカンテラのランプをつけて進む。
壁に書かれている。
【すぎたるはおよばざるがごとし。666をこえると0にもどるので注意。歳入も力も】
「鉄げた仮説…!!ネットビジネスや儲かる商売で稼ぎすぎた奴とか、だんだん金が入るのが重たく制限されていくのかもな」

【ヴィダルだけはロキの揶揄から免れた】
「…」

ハイパワードソードは今回の旅に持ってこなかった。もっと正確にいうと宇宙船にはある。
あれだとでかくて重装備になる。
今は軽装だ。

剣:ドラゴンソード
鎧:リニアアーマー
楯:メビウスシールド
靴:鉄の靴

鉄の靴は重かった。

また、宝箱がある。
開けて見た。
【バーラルアクス】
血みどろの斧だ。血も半分乾燥している。
「…いらね…」
そのままにして置いてきた。

【ラグナロク(北欧神話における神々の最終戦争)の後の世界でもヴィダルは生き残った】
「ハルマゲドンの後も生き残ったか…」
【善人しかいない理想の大地が滅びの世界から、前にもまして清められ浮かび上がるという】
「善人だけの大地か…予言?」
そのときモンスターが現れた。

【スパイシーリザード】

カンテラの明かりが当たった限りで刺激的にカラフルなでかいトカゲのようだ。
「ちょうど、ドラゴンソードだ」
剣をスラリと抜く。
鏡のように磨かれた刀身。

バクテリアブレスをふきだしてきた。
オーラの圧力ではじく。
ブオンン
ドラゴンソード 9999
一体たおした。

「…もどるか」




9


コモンスル宮

どんな天才でも絶対卒業できるわけがないスクールというのが帝国にはある。
そのスクールを卒業した数少ない才女がアルアロリアの侍女にいた。
男性の最高頭脳者でも卒業した者はまれだ。
博学で魔法にも長けている。
ノヴィ=ゾルカといった。
身の丈高く。
同から足元までまっすぐですらりとし、均整の取れているが、やや、やせ形の。
手足が長くか細く奇妙であるが意味深な手ぶりをしている。
全身を覆うような服装で身を包み、ヴェールがところどころかかっている。

アルアロリアとクレアとゾルカの三人で室内にいる。
冬には暖炉に火がともるこの部屋で雑談していた。

「アルアロリア様…有機物の生命体であるわたしたちは無作法なもの、不都合なものをあえて客人に見せません。清潔であるよういるための工夫や知恵に余力をさくのが、レディとしての道であります」
クレアは無言でうなずいた。
「そうね。汗をかいたらタオルでふくように」
アルアロリアとクレアはスキーウェアの下だけはいたようなスーツをきている。
これから室内運動して体を動かす。

ゾルカはなおも言う。
「もし大勢の前で、自分が注目されたらどうでしょう?プロボクサーのように身構えるでしょう。顎を引いて首を曲げ、かまえるのです。でないとスキを残しますから。周りの人が興味あるのはあなたであり、周りの人どうしではないのです。大勢の敵に囲まれるに似ているでしょう。では、大通りで人が通り過ぎていきますが誰も相手にされないとどうでしょう?かまえず脱力します。あまり相手にされないと大声で呼び止めたくなるでしょう。ですが身も心も楽です」

「ゾルカ…周囲の注目についてもっと教えてちょうだい」
「視聴率のように、他人の注目を集めるとそうなります。そのとき喉が詰まるのは首を曲げて構えているからでもあり、かまえないとボディブローのようにスキができることでもあります。①むやみに注目を集めないこと②人を刺激して怒らせないこと。中傷などもってのほかです③体術のように平時から身のこなしを鍛えること④女王の地位など体に負担がかかることを知ること。いわば地位が一段上がるだけでボクシングの階級が変わるような負担があります。腹八分といいますが、よくばらないこと。それが幸福を維持する秘訣なのです」
「そうね。ありがとう、あなたの智慧と博学さと勤勉に感謝するわ」



10


ひきかえそうとした、ヴィクターにフラフラ近寄ってきた男がいた。
麦藁帽子をかぶった黒ネコ男で、手にサイダーのビンをもってラッパ飲みしている。
気さくなネコ男は話しかけてきた。

「では問題。フェンリル(巨狼)をしばることができたという魔法のひもの秘密は?猫の足音、女の髭、岩の根っこ、クマの足の腱、魚の息、鳥の唾液からできたひも?」

ヴィクターは落ち着き払って答えた。
「一種の力帯だ。力が最大まで高いフェンリス狼はどんな鎖も暴れてちぎってしまう。それなら…666の力のフェンリス狼に力帯をまきつけると…力が0に戻ってちぎれなくなる」
「正解。なら歳入が0になったとき、どうやったら克服できる?」
「ハンデをつける…666を超えたなら、パワーアップするんでなくて下げるアイテムをつければいい」
「まあ…正解。偉い人とは?」
「他人が決めることだ。自分で自分のことなんか偉いなんて決められねーな」
「正解」
ニコッと歯を見せて黒ネコ男は笑った。
「でも、その先の問題は難しいと思うよ」

テレポートの魔法をかけられた。
ヴィクターはグニューンと空間がゆがむのを感じた。
気がつくと入口まで戻されていた。
「正解だから、ふりだしまでもどる」
そう麦藁帽子からニコニコ笑っている声が聞こえた。

「ハッ」
みると天に巨大なモンスターがいる。
【大地を支えるカバの一体】




11



ヴィクターはホワイトグラス(片メガネ)を装着すると空を飛んだ。
大地を支えるカバと対峙する。

ビュオオオオオー
上空は風が吹く。

「ホワイトグラス データ検索」
カシャカシャカシャ
時空警察のデータバンクから解析してモンスターを特定している。

にぅうーおおん
「うっ」

どこかの惑星の誰かの念がヴィクターの脳にとどく。
「クッ、そんなことオレにいわれてもどうしょうも…」

ドラゴンソードを腕をいっぱいに伸ばして構える。

ジュールがホワイトグラスに出た。
≪‘どうした?ヴィクター≫
黒い、シルクのような制服をきている。襟元には金色のもようが。
黒いジャージのようにもみえるブロンドの髪のジュールはみちがえるように神々しくたくましく見えた。
「怪物だ。特定を頼む」
≪OK≫

【通信障害】
ガガガガガ%#
「くそ、電波が」

そのあいだに『大地を支えるカバ』は口に巨大なエネルギーを蓄積しはじめた。
GOUUUUUUUUUU
「あのでかさ…」
ホワイトグラスがつながった。
≪ヴィクター!78%の可能性でそいつは『夢を喰うバク』≫
「バク!?」
≪ホワイトグラスの通信電波も食っている≫
「そうか」

やはり思念でヴィクターは頭を混乱させられた。
誰かの脳と通信が乱れている。
≪ソフトバンクならぬソフトバクだよ。でたらめに通信している。これがバクの力か≫
「ソフトバンク!?」

ヴィクターはバクの巨砲をホワイトグラスで分析した。
≪ガガ・・このエネルギー量だと地上にぶつかれば大地や建物が半壊のおそれ≫
背中の楯を手に取ろうとした。
「楯だ、メビウスシールド、こいつならいけるか」
メビウスシールドは攻撃を跳ね返す。
ホワイトグラスに文字が並び解析情報を流す。
≪ガガガガ・・72%の確率で楯が破損。メビウスシールドでは防げない熱量≫
「なんだと!?」

ならどうする…!?
ホワイトグラスでデータを検索しても頼りになる分析がでてこない。
「クソッ、時空警察のデータバンクはこんな貧弱だったのか」

バク(漠)は巨砲をうってきた。
【ビックパーキングボール】

ヴィクターはかなり慎重に計算した。
この高さならラァ・ガードに誘爆の危険はない。
精神力のスタミナも持つ。

グオン

ビックパーキングボールがおそってくる。
ヴィクターは素手で受け止めた。
ジュールのバリアハンドの応用で未開発の技だった。

トゥムムムムフォオンン

ヴィクターはそのとき考えていた。
実際バリアハンドをつかっているジュールはよくわかっている。あとからマネした自分はバリアハンドのなんたるかをよく知っていない。
「クッ…」

自分で一から開発したのなら知り尽くしていたかもしれないが、なれない人マネからはいった技で余計に精神力とオーラをつかった。
「グググ、重い」
スピンを書けるようにビックパーキングボールを回転させはじき返す。
グルン
なんとか巨砲をはじきかえし、空に飛んでいった。
「ハァハァ、どこかの星にあたったりするなよ…」

バクはそのあと消えた。




12



地上の野原に着地し、ジュールを思い出した。
「新しい制服…?」
そのとき携帯電話にアルアロリアから着信があった。
アルアロリアの両親が五つの島のリゾート(保養地)のひとつにつれていくという。

着替え室からでてきた、アルアロリアにクレアとノヴィ=ゾルカのふたりが集まってきた。
クレアがいった。
「アルアロリア様、あの保養地でしたら警護の必要がないかとおもわれますし、ヴィクター様がいらっしゃいますので我々は同行しません。ですが何かあったら連絡をください」

ゾルカがいった。
「アルアロリア様、今ある不幸の大半はうぬぼれから生じていると考える生き方があります。素直に相手を認める心です。もし、周囲を見下せばどうでしょう。あなたは高い者どころか、周囲がつまらなく見えて楽しめないでしょう。すばらしい人の中に入れられたと考えれば、見とれるものが多数あるでしょう。こうべを垂れることを恥じと思うことこそ地位の高きものにあるまじき、なのではないでしょうか。具体的なやり取りはその場になってからすればよいのです」

「ありがとう。さすが簡単には卒業できるわけのない学校を卒業しているだけあるわね」

「階段を無理して駆け上がろうとすると躓くものなのです」
「ステップを踏むように、一段一段ゆっくりのぼっていくわ」
「その心構えです」

グレィホークという静かに上昇し空を飛ぶ専用小型飛行機にのせてもらった。
アルアロリアの両親と自分、アルアロリアの4人だ。

一気に空を飛んでリゾートについた。



13


高台にいた。
テーブルについた。
もっと大勢の人数の客もいる。
それぞれ簡単に仕切られている。
高い建物の屋上から海が見える。
空は赤紫にはれ上がり、夕方の安堵の情緒を醸し出す。
ティンパニー(タイコの一種)が風が来る方角から聞こえてくる。

アルアロリアの父親と母親、ヴィクターの隣にアルアロリアが座る。
「君は、視察できたという仕事も兼ねているのかもしれないが、まあ、くつろぎたまえ」
そういわれた。
勤務時間が終わった後の開放感のような感じで楽になってきた。
潮の音もきこえる。

知性的な周囲のざわめきが温かく感じられる。
平安京の夕暮れをみているようだ。七福神のような宝をしょった神が海の向こうからやってきそうな雰囲気だった。

オーダーを給仕がききにきた。
「なににするの?」
両親がいるせいかアルアロリアは強気の様子に見えた。
アルコールの入ったストローで飲む酒がでた。
食べ物はチーズとかつまみしかない。

打ち上げ花火が上がった。
赤紫のグラディエーションの空、海の色もにじむかのように揺れている。
リゾートっていっても花火を見て酒を飲むだけか。

アルアロリアの両親と雑談して、この人たちはいい人たちだ。
そう思った。いい人に力を割いているから帝国での出世競争に負けて皇帝の位置につけなかったのかもな。

デジタルカメラで花火を撮影している客たちもいた。
楽団の演奏がきこえてくる。あとは花火。
それだけだ。あとは解放感と居心地の良さ。

「ハイ、ストローとお酒」
アルアロリアがグラスをわたしてくれる。
酒は甘味がやや強い。ジンジャーエール似ている風味だと感じた。


花売りがかごに入れた生花を売っていた。
といってもタダというのかコミだ。
ヴィクターたちも一輪買ってみた。
切り花をテーブルの上において飾った。


案外くつろいで景色を見ていた。
そして次の日の朝宇宙船でメガロポリスに帰還した。



14


帰国後、ヴィクターはマッシュルームクラスでかった3Dパソコンに熱中した。
【3Dブロック崩し】

三次元のブロックを崩していく。
縦横斜めにブロックがうかんでいる。
ヴィクターは人工知能プログラムを開発し、手ばなしで電源を入れっぱなしにしておくと試行錯誤してゲームオーバーをくりかえしながらバーのコントロールがうまくなる装置をつくった。
学習してスマッシュがうまくなっていく。
時間を長く接続するだけだ。

さらに箱入りお菓子が送られてきた。
一列ごとに立派な菓子がならんでいる。
「一個食べるか」

ヴィクターはひとつ封を切って食べたが甘いものが半分甘ったるいだけになってきていた。