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2014年1月31日金曜日

Another War ―もうひとつの戦争― 第六部





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Another War  ―もうひとつの戦争―


第六部


Another War  ―もうひとつの戦争―















1



時空警察のトレーニングセンター

フォルトナトと相棒の若手警察隊員スキャッチがリングで格闘の練習試合をしている。
「いきますよ、連続技!」
「フン」
素手での格闘だった。

若手スキャッチの技を大柄で筋肉質のフォルトナトは軽くさばく。
相手が撃ち疲れたところ、反撃が飛ぶ。
「ぐっ、ごっ!くそ、ならこれでどうだ」
大げさにフォルトナトのパンチをかわすと外からソバットを打ち込んだ。
ビョンと後ろに飛び下がり、フォルトナトは手からライトニングカッターを手裏剣のように飛ばした。
「ライトニングカッター!!」

「おお、すげえ」
トレーニングセンターのほかの客が見物していう。

よけられない!!腕をクロスしてスキャッチはうけとめる。
ズギャャガガ!
どちらも白いシャツ一枚と軍事用のズボン姿だ。

「まいりました。かないませんよ。まだまだ…」

一枚張りの、さんのないガラスの大窓が天井から床までつらーっと輝いている。
そこにマジックドラゴンがグレートシティの上空を飛んでいるが映っている。

フォルトナトとスキャッチがアラビアンアクスを握るとそのまま外に飛び出した。

モビルバイクに二人乗りするとドラゴンの着地しそうなあたりに走った。

マジックドラゴンはやや広い土地に座りこんでいる。
フォルトナトがアラビアンアクスをかまえる。

【トリプルアクス】

肩に斧を担いで右手で打ち下ろす。
ドガ、アラビアンアクスの刃が地面にめり込む。
ズン
左で担ぎなおして打ち下ろす。
マジックドラゴンは羽ばたいて後ろに避ける。
追いかけるようにあゆみまた右で打ち下ろす。
とらえた。

ドシ! 3451

フレイムボム!
マジックドラゴンは魔法を唱えた。
「ぐつ」
火焔をフォルトナトはオーラでガードした。
345

「フォルトナトさん!」
スキャッチに任せろと合図する。

【ピンポイントクラッシュ!】
ブーメランのようにアラビアンアクスを投げると、ドラゴンの首をかっきり、戻ってくる。
3971

ライトニングボルトをドラゴンは唱えてきた。
一瞬きらめく雷と違い、なぜかゆっくりと電撃がやってくる。

よければいい、フォルトナトはそう判断した、が縛りつけられたかのように地面から足が動かない。
「むう」
磁力のような力が働いているらしい。

フォルトナトは自らの体で受け止めた。
グルウウウオオオオオンバチバチバチ
894

「大げさな火花だが、…大した熱量でもない」
アラビアンアクスを担いだままジャンプする。
チェーンブロック!!
魔法でできた半透明の鎖がまとわりつこうと襲ってくる。
月面宙返り!
鎖をかわすとアクスをマジックドラゴンの首ごとに斬り落とした。
ドザシュ

「やったぞ」スキャッチが叫ぶ。
フォルトナトは斧を担いだ姿勢で着地した。




2



時空警察ではヴィクターとアルアロリアの結婚をもりあげるイベントとして、メガロポリスで武器防具のコンテストを開くことにした。

全宇宙から腕の立つ武器職人、武器メーカーの知恵と技術の結晶を作品として開発してほしいとお触れを出した。

メガロポリスの武器職人、アークスはダイナミックシリーズを完成させると設計図を公開した。




ダイナミックソード
ダイナミックアーマー
ダイナミックヘルメット
ダイナミックシールド




ダイナミックモードで変身ロボのように武器や鎧が変形するという。
それをうけていろんな星から武器職人やメーカーが名乗りを上げた。

エカルテでオートクチュールやマクスウェルアーマーを製造した電磁クラブも、「そういうことなら参加するしかないか」と参加した。「開発途上のパワーオブザガード…いや、別に新作を造るか」と意気込んでいる。

ラグナクロクのテレポートソードの開発者もニュースを聞いて興味を持った。
ゴールド・ウィンのバイオソード、マンティコアを作成した研究所もさわいでいる。
オーバーランスの発明者もオーバーブレードという剣を企画しだした。
グッド・ソードを開発した、時空警察のお偉いさんも高いビルの自室で秘書と頭を悩ませている。



ジュールとヴィクターが時空警察のコーヒールームでコーヒーを飲んでいた。
「もはや、オレ本人の結婚式を通りこしている感があるけどな」ヴィクターはカウンターでコーヒーに手をつけずそういってため息をついた。
「むーう?結婚なんて当人同士のことでもあり、親類全部が関係者でもあり…さわがれないのも、さみしくもあるし。割り切るタイミングは芸術的センスの問題だと思うよ」
「さわがれても、迷惑でもあるしな」
「あのお譲さまは?」
「帰った。オレがあんなやわなやつだとは知らなかったけどな」
「恐怖や困難なんて手なづけて乗りこなせるようになれって時空警察の訓示だけど」
「わかるな。操縦なんだ。運転。なんでも最初は怖いけど、恐怖と闘って乗りこなせるようになると楽しいんだ。あのテュポンなんて厳しくて辛い怪物だった。あいつさえ操縦して乗りこなせるようになれってな」
「ラハブの従者も彼のもとにかがむ。みたいな話だよ」
「ベリアルマスターという称号もあったな」




3



アルアロリアたちはアルキメデスにもどらずラオディキアという都市のある惑星に移動した。
ロームルスもこの惑星にいる。
ジュールが親善調査にむかった星は別だった。

コモンスル宮


アルアロリアの侍女のひとりにクレアという女剣士がいた。
護衛も務めのうちで、看護学や医学も多少の知識を持ち合わせている。



エドアール
剣術レベル:15
クレア
剣術レベル:6
アルセウス
剣術レベル:4
アルアロリア
剣術レベル:0




アルアロリア
愛:25
クレア
愛:17





この日もアルアロリアの身辺を守っていた。
クレアは幼少期からを振り返っていた。
父も母も中流というのか、皇帝のいる宮殿などで働く縁がある家柄だった。
両親とおなじで自分も両の屋根がしっかりとはられ、雨雪をしのげる生活をおくってきたようにおぼえている。
だが、学校や教育、剣術など屋根のように自分たちを支える帝国の課す義務は息が詰まる教育の連続であったように覚えている。
民に親切であろうし熱心に鍛えるスパルタ的な国民風であったが、華やかなできごとより、地味な紙の上の書面に顔をうずめていなくてはならない勉強が年度年度課せられており、体の鍛錬も、楽しいとか汗を流すという程度ではなく規則づくめのように感じた。
アルアロリア様をみるとどうだろう。
自由である。だが夏休みや冬休みに自分で何をしていいのかわからない状態が続くのだ。
アルアロリア様は女性である。だが、男子に生まれたほどではないけれども、自分で考えて行動することが、今度は義務である。
何をするのも自分である。だが、迷路で迷っても誰も助けてくれないようなのが日常なのだ。
クレアはそのため、自分とは役割が違うがどっちが幸福かと嫉妬して考えるのは馬鹿らしいとすぐ気がついていた。
自由もありそうで違う自由を束縛されている。
自分が今みたいにアルアロリア様直属の、男子でいう側近のような立場にいるのはこれに気がついているからであると自分で自負していた。
愚か者は常にあっちの方が幸福そうだと嫉妬して自ら苦しむ。
あっちの方が楽して幸せだと。
そうではなくて、苦労の成分と蜜の味が自分と異なるだけだと。


学業の休暇にアルアロリア様と面識を持った。
建国記念日の長期休暇のときであったと記憶している。

大学では医学、看護学、剣術を修めた。
剣はクラブ活動などではなく、キッチリした修練をこなし、男子顔負けの力量まで力をつけた。
さらに拳銃もおぼえた。特別育成教育として。乗馬もかなりの腕に達した。
遊びごと習い事の範疇ではなく実用の初歩まで会得するのが私の常だった。

大学卒業前に奉公が決まり、就職を探さないで残りの学校生活を送った。
女子大では卒業とほぼ同時に結婚していく生徒が2割ほどいた。
3割が就職など。半分は卒業後も花嫁修業のような、なんだかそんなゆとりある生活をする。

卒業と同時に奉公にでるため、それまでの住居を引き払い、宮殿のある土地に旅するようにでたときを懐かしく思い出す。
あのとき気がつかなかったが、昼食に旅先のレストランでの食事は、お別れの涙の味がまじっていた。
うっとうしい覆いを脱ぎすてて、新しい日差しが差し込めるような希望もその旅には含まれていた。重い鎧をすてて全く違う生活に踏み入れるように。

宮殿にある巨大なスクリーンかと思わせる絵画。
寸法がでかいのとはっと思わせる造りは製作者が見事に知恵を絞ったものだ。
一度や二度そこの廊下を横切ったくらいでは見あきたりしない。
わたしは美術も学生のうちに専攻しておけばよかったと、感心しながら思ったものだ。


ドルシエラとビョンデッタという二人の娘が大広間のアルアロリアのところにやってきた。
「アルアロリア…時空警察の男の方とお顔をあわせたそうね。話がうわさになっているわよ」
アルアロリアはあまり顔色が良くないという面持ちで答えた。「そうね。会ってきたわよ」
ビョンデッタもいった。「時空警察との橋渡しとなる大結婚ですものね。さすがのアルアロリア妃も緊張と責務で眠れない毎日かと思ってお見舞いのつもりでしたけど」
アルアロリアは切り返した。「グラウディウス帝国も戦争やら、不慮の出来事で決して心配事が尽きないというのに、ずいぶん無責任なゆとりね。あなたたち、いいこと…。帝国とはいえ無敵連合ではなくてよ」
「あら、あなた今売れているこの御本『実は私は飢えたことがなかった』をもう読んだのかしら?自分が実力者だと高ぶっていると、本当に飢えたとき助けてもらえないのよ」
「最新の哲学かしら?」
すらりとした美貌のビョンデッタもいった。
「あら、さすがは時空警察の殿方といっしょになるかた。あなたの悪いところは、あのねえ、知っている?教えてあげようかしら」
「なんなのよ」
「道徳を支配国にまで押し付けるやり方。時空警察の好かれにくい点よ。支配してなお自分たちの哲学や道徳を押し付けようとする。二重に苦しむの。新しい道徳と支配で。親切とおもって入るが重いのよ。我が帝国のほうが最先端をいっている。昔の支配者や王公のやり方にみえるけど、支配するだけであとは自由にさせておしつけがないスタイルなのよ。グラウディウス帝国は」
アルアロリアは少し動揺した。言っている意味を読書と経験、新聞記事やニュースで判断できたからだ。
「チェスなら一手負けというところかしらね」
アルアロリアは歯ぎしりして悔しがった。
「あら、悔しいのならこの、プテミス(グラウディウス帝国で流行っているトランプのようなカードゲーム)で勝負をつける!?」
「受けて立つわよ」

アルアロリアとドルシエラ、ビョンデッタは二時間ばかりプテミスの勝負にあけくれた。
大広間のテーブルで勝負が繰り広げられた。
三人とも疲れきっておしまいになり、さすがのドルシエラたちも無言でひきあげていった。

クレアが進言した。
「アルアロリア様、あの二人の挑発にあまりお乗りになりませんよう」
「ええ…そうね」





4



アルアロリアはサンダーバードのひなを飼っていた。
ブロームインにいるサンダーバードは親鳥となっているが、ひなのサンダーバードは普通の小鳥より大きめなだけのサイズだった。
容易に人間には飼いならせないが、アルアロリアの愛情と根気からなせる技だった。

この小鳥はアルアロリアを慕い、歌声でアルアロリアをなごませたりしていた。

のちにアルアロリアはこのサンダーバードに窮地を助けてもらうことになる。
だが、今はコモンスル宮に滞在していた。

溶けたチョコレートをココアのようにして飲んでいた。
ビョンデッタとドルシエラがやってきた。
「ごきげんよう、アルアロリア。ラァ・ガードにはいつまで滞在するの」
ラァ・ガードという土地に、ここコモンスル宮がある。
海をはさんで、ラオディキアというロームルスの個人自宅兼城のある地がみえる。
「さあ、お父上とグラウディウス皇帝が決めるのだろうけど…あなたたちこそ、何かすることがあるの」
割と小柄なドルシエラが答えた。
「お言葉ですこと。私たちを“シンデレラ”の意地悪な姉たちみたいに思っているのでしょうけど、これで結構親切よ」
「なにか?」
「これで勝ったら教えてあげてよ」
ビョンデッタは象牙製のプテミスのカードを手に持っていた。

プテミスを発明した企業はすごろく風のゲーム盤から、各種のボードゲームを発明していた。
創始者は元数学科の大学院生で理論をまなび、規則性のしくみやチェスのメカニズム、マジックゲーム(囲碁)などから緻密な計算と斬新な発想で、新しいゲームを次々編み出している。
シンプルでいながらカラフルなボードや、古風な情緒のあるゲームで大金持ちになっていた。
だが、発明のため何度か災難に見舞われているという話だった。


「プテミスで三番勝負ね。いいわよ。クレア、あなたもまじってちょうだい」アルアロリアはクレアとコンビで2対2のプテミスを勝負した。

ビョンデッタは象牙のカードを手際よくシャッフルしていく。
サクサクサク、ビョオオオオオッ。
そしてリズミカルに配りだした。
「いくわよ」

勝負はビョンデッタとドルシエラの勝ちだった。
「まあ、機嫌がいいから教えてあげるわ。宮廷音楽家があなたの結婚式のために新しいウェデングメロディを作曲して下さるという話よ」
「まあ、」
「あなたのためでなくて帝国のためかもしれないけど。おほほ」





5




時空警察

メガロポリスの首都グレートシティ。
時空警察の基地にヴィクター専用の部屋と王間が改築された。

ジュールがいう。
「ぼくなんか、いろんな部屋をたらいまわしだよ。専用の部屋なんてまだないし、いろんな部署や特殊任務をいったりきたりだ」
マンデンブルー大佐がいった。
「私のときなんか、30代で自分の部屋なんか持ったことなんてなかったよ。出世頭だな君は」
ヴィクターがいった。
「時空警察は若いころは経験を積ませて修業させるしきたりでしょ」
「そうだな。大佐以上の職は、戦闘任務とビジネスの両方の経験者でないとつけない規則だ」
時空警察には戦闘を担当しないキャリアの幹部もいる。
だが、総司令官、総裁などの任務には就かない。

「緊張しないかい」ジュールがいう。
「少しな。だが本当のトップになったわけじゃない。正式にランクが上の任務についただけだ」
ヴィクターはそういった。

グルーザー女史が厳しい口調でいった。
「直属の護衛兵がつくわよ。あなたが自分で任務をいいわたすのです」
「兵を選ぶのはオレじゃないんでしょう…」

ヴィクターとジュールは兄弟ではないが、どちらも姉がいる。
マンデンブルー大佐の息子くらいの歳ではあるかもしれないが、息子というわけではない。




6



王間で三名の直属の部隊になる戦士に任命の儀式を果たす。
ヴィクターならどうかわからないが、胃が痛くなりそうな仕事だ。

三名の戦士が王間で腰をかがめている。
ヴィクターは王座に座っている。

ヴィクターは結局ダイナミックソルジャーという独自のポジションについた。

親騎兵団という直属の三名は…?

【ヘンリー・クローバー】
【バルナバ】
【クロスナイト(ジャン)】

ヴィクターは前の日少し緊張したが、当日は平静でいた。
「ヘンリー・クローバー…親騎兵団の任務を言い渡す。顔をあげよ」
「……ハッ」
「おまえは以前は何をやっていた?」
「……旅をして放浪しておりましたが…剣の腕をみこまれて時空警察にまねかれました…」




7



「……ふーん、そうか」
ヴィクターはそういいながらヘンリーの顔をみた。
(戦闘力は…特防隊Aランク…いや、Bランクの隊長くらいか…)

「次のバルナバ」
「ハッ、任務を全うし剣の腕をあげる所存でございます」
「わかった…たよりにする。もともと時空警察の隊員だな、おまえは」
「ハイ…デカポリスの出身ですが、この度召集にあずかりました」
「そうか、よろしく頼む。次はクロスナイト?名前は」
「皆、ジャンなどと呼びます」
「というと?」
「孤児院で育ちました。生まれたとき捨て子として置かれていたと聞いています。もとより捨てられた命、恐れるものなどありません。剣士として戦場でこの身を朽ち果てるつもりであります」
「…そう逸るな。人生には楽しみもある。酒は飲むか」
「…たまに飲みますが、剣の腕に勝る楽しみはございません。親騎兵団に任じられ心より感謝しております」
「わかった…ジャン、いやクロスナイト。戦場では頼む」

こうして親騎兵団三名の任命の儀式が終わった。



















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