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2014年1月14日火曜日

ファジオの旅行記



















1


ファジオとエルダの旅行は前の前の章あたりから始まっているのだがこの章はこのタイトル。

ブロームインについてエアポートすぐ近くのホテルに投宿している。
翌日はツアーバスでブロームイン城、魔法殿の見学。

ファジオは「はとバスツアー」みたいだとおもった。
バスにのりっぱなしで4時間。
ドライブインのようなもので休憩をはさんで。

宇宙船で前の座席にいたオヤジがまたいる。
「やや、トイレでひっかかった。ジュースも買ったがまたトイレに行きたくなるな」
でかいマウンテンがあってそれの外周を回るかのように道路を走った。
さっぱりとした気分だったが、自然が残る田舎の道路みたいであり、独特の文化の土地にもみえる。

「農村地帯ね」
「向こうに見える大きい山にはサンダーバートという怪鳥がすんでおり…」
ツアーコンダクターがマイクで解説する。

ファジオは携帯プレイヤーで音楽を聞きだした。

なんだか道路の交通量が多くなり、道が複雑になりだした。
あっちにも複数の路線がこんがらがるようにクロスしだす。
同一車線に後ろのバスが横づけで走りだした。
一気に閑散とした道路がにぎやかになったが、信号やら看板やら複雑多岐だ。
(見ている方はいろいろみるものが出来て楽しいが、運転手はシンドイかな…)
「市街地区にはいってきたみたいだ。あと少しでホテルか」
「うん」
ただまっすぐ走っていただけが、いろんな車があっちにもこっちにも走る。
十字の交差点も頻繁だ。

ストップしたり動いたりをくりかえす。

完全に停車するとホテル前だった。
前のホテルとも違った。



2


翌日はブロームイン城の見学。
またバスツアーだ。

「城といっても中に入れないのか」ファジオはそういって写真を撮った。
「現役のお城だからね…」エルダがそういう。
ツアーコンダクターがそれをきいていたかのようにいう。
「えー、次の魔法殿では中を見学できます」
オヤジが「やや、カメラを忘れた。スマートフォンのカメラでとるしかないか。点検したはずだが…」といっていた。


そのまま、バスで魔法殿に。
なかで魔法騎士の訓練を見せるという。
「ホウ」
型稽古で本当には打ちあわなかった。
ツアー用の催しだ。

「…」
あれじゃ、どのくらいの戦闘力か計れないな。そう考えていた。
次に魔法を実演してくれた。
「エアーアタック!」
「フレイムボム!」

「おおおー」
「あたしにもカメラかして…」
エルダにカメラを渡して、解説が書いてある展示物をみてみる。
魔法殿の奥には入れないが見学用のスペースだった。

一泊して、帰りは反対の道路を回ってエアポートにもどる。
そこでツアーから切り離れた。

「そうですか。では」
ツアーコンダクターは端末にインプットしていった。

エアポート近くのホテルと違い、自室にキッチンがついている。
ペンション風だった。
近くのスーパーにいって買い物をしてきた。
包丁もナイフやホークもひとそろいある。
まな板などもあった。
クッキング道具がそろっている。
暖炉もある。
家庭科の実習室みたいな感じがした。

エルダが作った料理を食べた。
「このあとどうする?」
「…」地図を見ながらいった。「関所をこえてゴールドウィンに行く。そこで一泊してエアポートからエジオンに帰ろう」
「OK」




3


エカルテ城

このたびの戦いのご苦労さん会をひらいている。
エドアール、トム、オーブリー、エドガー、秘書猫、ホワイトが王間にあっ待っている。

「腹にたまるもの食えないから酒とつまみだけな」
乾杯。

トムがいった。
「王間は食堂じゃないぜ」
「まあせかすな」

クラークがいった。
「え、時空警察が敵のボスとの最終戦を引き受けた。時空警察で引き分けだったそうだ」
一瞬空気が凍った。
「なんだって!?」
「…安穏とできない。そりゃそうだ天国じゃないんだ」エドアールがそういった。
「すさまじい稲妻がなってましたからな」

「敵はどうもギリシア神話のテュポンにイメージが近いらしい。巨人で肩から蛇をはやしている。巨大魔人ロボみたいな図体とかな」
オーブリーがいった。
「ゼウス神で、てこずるあいてだ。そりゃもめないほうがいい」



4


ゴールドウィンにトレインでむかう。
関所を越えエアポート近くのホテルに泊まる。
クラーク、パーカー、アルフレットが最初に泊まったホテルと違うが近くに止まった。
「ゴールドウィン城は遠いからここで最後にしよう」
エルダも不安になってきたのか賛成した。
かなり高層なホテル。
そのかわりすごく細い。
ホテルというより自宅の一室という雰囲気がコンセプトだと見てわかった。
電話が身長くらいの台にのっている。

窓の外は高い。ビルが並んでいるがその向こうは山が見える。
どうやら、ゴールドウィンはエアポート近郊にビル群がならび、もう一方のシティが城の周辺だという。エカルテとの国境も城に近い。
だがエカルテ領域の道路にはいると山道だ。

「お城周辺とここのエアポートとシティを二分しているの?」
「…まあ、おおざっぱにそうらしい」

街に行って買い物してきた。
ショッピングモール。
買物は輸送してもらった。
帰ってから届くか。

大型書店。
おしゃれだが、精神が疲弊しなくもない。
体力がそろそろ底をついてきた。

みるとメガネをかけた小学低学年くらいの女の子が元気にステップを踏んでいる。
絵本を抱え、周りに子供とお母さんがいる。
ファジオは見ていった。
「力強い女の子だ」
リズミカルにダンスのような仕草をしている。口がにっこりしている。
「ホント。この子となかよくなったら友達がたくさんできそう…」エルダもそういった。

その後、ゴールドウィンのエアポートから帰路についた。



5


時空警察

「テュポン…」
「テューフォンとかも発音するらしいよ」
ジュール、ヴィクター、マンデンブルー大佐、グルーザー女史が小会議を開いている。
「根元ともいえる女神ガイアがゼウスを滅ぼすために生んだとある」
大佐がいう。
「…身の丈が天の星にかすり、両手が世界の端から端まで」
ジュールがいう。
「その肩には100のドラゴンが生えているか」ヴィクターがそういった。
「あの二匹が両腕じゃあなく…」
「型の100匹のうちたった2匹だったら…」グルーザー女史がいった。
「脅威だ。人類はまだまだ苦しめられる」
「宇宙の底で世界を支えている大蛇かもしれないぞ」大佐がそう言い捨てた。「人類の宇宙の原理をつかさどっているのかもしれん。根本の原理なんて気がつくだけで無尽蔵に近い力を取り出せるんだ。原子力のようにな。扱うのに危険ではあるが」
「宇宙の底のぬしは究極原理を秘めているか…原子力と違う原子力だ。物事の基本原理を紙の上でいじるとか気がつくとかすると、大エネルギーが発電できるんだ。Typhon。電話:テレフォンを発明した時もこいつが出てきたのかもな」ヴィクターがいった。
「アイデアとか作曲、発明、詩的表現もそうだけど、頭の中だけの事変のようにみえて高い金がかかるんだよ」
「奇跡の真珠の効用は?」女史がきく。
「まだ」大佐がいった。
「アンドロイドとかサイボーグとか人工心臓とかが生身の体を手に入れられるアイテムとかか」ヴィクターがいった。



6


ファジオは帰りの宇宙船の中考えていた。
普通旅先で過去を振り返ることはあまりないだろう。先を意識せざるを得ないからだ。
だが、今は直通の船に乗ってもう後は黙っているだけと安心していた。

旅行など肉体労働だった。
直通で現地の周辺ならまだいいが、こんなに歩いたり乗り換えたりしたら、肉体が疲労して仕方ない。スタイリッシュな旅行など、直通のトンネルで苦労なく出来ているのだろうか。

自然、旅のスタートからいままでを振り返っていた。
少し早すぎるかもしれない。
だが、ほんの数日前と今の自分で10年も昔のように感じられた。
怖かったというのは本音である。
その分成長して違う自分になった。なってしまった。
出発前の自分が思い出せない。

エジオンについたらみんながいる。
エルダを見て思ったが、女は怖いから男性にしがみつくのかもしれない。
戦争中、景気のいい方にすり寄る女とかいたら、それは最悪の女だろうが、選ぶなら安心できるほうをとるのは不思議ではないと思った。
だが、腰ぬけは女でも男でも負担になるのだ。
都合のいい方に走るのは腰ぬけの女という照明を自分でしているようなものだからだ。
エルダはそれをしない。
限度はあれど自分と同じくらい薄情を嫌っているだろう。
最初から肩身の狭い方につく女もいるかもしれない。ガンジーを女にしたような。

エジオンについたらみんないる。
アルフレットなど自分も頼りにしてしまう。
自分一人の孤高では本当には生きられない。
生態系の中で人間生きているのだから。

船はどんどん加速しエジオンに向かって飛んだ。