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2014年1月8日水曜日

二層式洗濯機の初夏


二層式洗濯機の初夏





こ汚い、コインランドリー。まわりまわった夏。かろうじて生きていた大学生。誰が置いていくのかわからない缶入りのピース(たばこ)、(この時代カンピーといっていた)をふかし、洗濯をする夏の夜2:0040くらいか年齢不詳の営業マンが扉を開けて入ってきました。
「おお、学生!お前も生きていたか」
「営業マンさんも、ミート君の腕をもってきたんですか?」
「いや、ガキのとき店員のおばはんがきつかったなっていまさら思い出してさ」
「小銭ではらうからですよ」
「ピース一本ちょうだい。いや、男同士のたまりばってむさくるしいようでいて意外とお洒落じゃん。二層式洗濯機シリーズなんかさ…」
「女のたまりばのむさくるしさは男同士なんてもんじゃないとか?」
「それだよ、全員しかめっ面して、悪口の嵐だろ?」
「まー、それはそうですかね。なんで営業マンさんは男なのにそんなの知ってるんですか」

「いや、ガキのときからPTAの手伝いとかさ」










二層式洗濯機の朝日


二層式洗濯機の朝日






昭和40年代。
さびれたコインランドリー。
大学生が朝方の4:00にコインランドリーへ行くと、営業マンさんが新聞を読んでいました。
「おっ、早いな」
「営業マンさんはこそ、どうしたんですかこんな朝早く?」
「今日から出張なんだよ、始発で汽車に乗るからさ。お前は?」
「いや、朝のラジオ体操まで時間があるから来ちゃったんですけどね」
「朝飯食べたか?」
「まだです」
「ジャーン、チキンラーメン。この時代から発売されたんだよ。たぶん。憶測だけどな」
「でもお湯がないですよ」
「洗濯機の水道を使えよ」
「いやですよ汚い」
「おまえ、水道なんて、みんなつながってるの、水洗トイレも、洗濯機の水道も、台所の蛇口も」
「気持ちの問題ですよ、逆流して、黴菌が繁殖しちゃてないかななんて」
100℃で3分加熱すれば大丈夫だよヤカンに水入れろ」
「うわわわわああああああああああああああああああああぁぁぁぁ」
「なに?なんがあったの」
「水道からオタマジャクシが~!!!
「気にすんな、オタマジャクシってね、ジプシーとかは食用なの。卵ない代わりにオタマラーメン」
「食べるんですか~!?」
「ウナギは食べるけど、オタマジャクシはダメですって国際的に通用しないの」
「いや、チキンラーメンって3分て書いてあるけど、お湯を沸かす時間を考えると6分かかりますよ」
「気にすんな、食え」
備え付けの割りばしで食べる二人。
「なにそれ、スディクリッツマクロ経済学?枕?」
「いや、昨日は枕にして寝ちゃいましたけどね、読まないと試験が近いんですよ」
「マクロスっていまTVでやっているよな」
「たぶんやってますよ」
「それじゃ駅に行くけど、勉強頑張れよ、学生!」
「僕も、ラジオ体操に行ってきますよ」

外ではスズメが鳴いていた。








二層式洗濯機の調べ


二層式洗濯機の調べ






昭和40年代。
しなびたコインランドリー。
二十歳の大学生と40頃の営業マン。
「いや、この時代って、レコードじゃなくてカセットテープだと思うんですよ。素敵だなこの曲」
「なに、『あのピアノ曲喫茶店で聴きたいな』なに ? この音楽。喫茶店で聴くモンじゃないの ? 荒んだコインランドリーにラジカセ持ちこんで聴くもんじゃないでしょ」
「いいんです」






「なに、この解説 ? 昭和40年代に喫茶店でかかってました ? ウソつけ聴いたことねぇよ。なに、昭和40年代って今か、今かかってんだよ」








二層式洗濯機の秘話


二層式洗濯機の秘話






昭和40年代。
科学者マインドを持つ二人の男。
夜中の1時に洗濯に通います。
「ヘイヘイヘイ!インターネットって知ってるか、学生 ?
「なんですかそれ?
「簡単にいえばな、TVを電話回線につなぐんだよ。そしてこのブロック崩しの会社にダイヤルするとTVでブロック崩しができちゃうんだよ」
「そんなことできちゃうんだ」
「アメリカのペンタゴンじゃもうやってるらしいけどな、今、世界中の偉い人が集まってこの会議やっているんだよ。日本じゃ政府高官しか知らないけどな」
「ふーん、インターネットか」
「スペースインベーダーを発明したアメリカの天才少年もこの会議に参加しているらしい。トップシークレットだから誰にも言うなよ」
「へーっ営業マンさんは物知りだなぁ」
「お前もニュースくらい見ろって、ニュースじゃやってないけど。俺どんなに遅く帰っても、朝一で新聞に目を通すぞ」
「それはそうなんですけど、こないだの彼女にふられちゃいましたよ」
「ヘイ! ヘイ! ヘイ! 学生さん何があったんだよ」
「いあね、恐竜公園で彼女が恐竜に噛まれちゃったんですよ。腕に跡が残っちゃいましてね。それで」

「お前それBCGのハンコ注射の跡じゃないの? だまされたんだよ。そういう時こそ科学者マインドで分析だよ」








二層式洗濯機の涼しさ


二層式洗濯機の涼しさ







昭和40年代。
3時過ぎ。
今年最後と思い込みたくなっちゃうような蒸し風呂のような熱中夜。
むさくるしいコインランドリーの夜。
「おい、暑くて目が覚めたよ」
戸が開いて、40前後の客が入ってきました。
「あ、営業マンさん。営業マンさんも眠れないんだな」
「洗濯機回そうぜ」
「洗濯機置き場ってなんか、涼しいんだよな」
「あれだよ、遠心力で水がなんかこう、涼しいんだよ」
「こんなに暑くちゃばてちゃいますよ」
洗濯物はないけど、洗濯機を回す二人。
「涼しいですよ、この二層式洗濯機」
「あれだよ、水冷式の扇風機?そんな感じだよ」
「リボンシトロン飲んじゃいましょうよ」
「ダースケース全部あけるなよ、23本次の客に残しとけよ」
栓抜きで栓を開ける二人。
「水モノばっかり飲まさるんだよな」
「甘え、リボンシトロン。朝方からビールはヤバいしな」
「ラジカセで深夜放送聴いちゃいましょうよ、どうせ眠れないんだし」
「近所迷惑じゃないの?」
「誰も眠れてる人いませんよ、熱中夜ですよ」
「まあ、一応は、音小さくしておけよ」
~♪
「素敵だなこの曲」
「なに、ツィン・オレンジの青空の雲?ラジオ体操の音楽?これ」
「わざわざ違う体操場まわって変わったスタンプ集めてるんですよ。ほら」
「ふーん。集めると何かもらえるの」
「大学の夏休みが終わると、先生に褒められるんですよ」

「ふーん」