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2014年12月6日土曜日

World planet huger ワールド・プラネット・ハンガー 6








6


World planet huger
ワールド・プラネット・ハンガー

閉ざされた世界











19 毛皮のコート


アレクセイは朝、売店をながめた。
「久しぶりに何か買っていくか…」
新聞を買って、あったかい飲み物を買った。

いつもの大部屋にはいると、スピカが毛皮のコートをきている。
「毛皮かよ。高そうだな」
「おう、おはよう」

ホビンがクスッと笑ってコンピュータをたたく手を止める。
アレクセイは仕事を無視して、新聞を広げて飲み物を飲みだす。
「…毛皮の密猟がアリアネロンの近隣の沼沢地帯で、って書いてあるぜ」
「ほんと?あっほんとだ。これ本物だもん」
スピカはそういいはっていた。

マチルダがはいってきた。
アレクセイはいった。
「まったく、お前らふたりいるとソースが薄くなるぜ」
スピカがいった。
「なによ。本十冊買ってきて読みなさいよ」
「買えるかよ。このご時世によ。新聞でもぜいたく品だぜ」


アレクセイはその夜、夢を見た。
夢の中は惑星アルヘレンとは違う冷たさだった。
アレクセイは仕事をしているが、きびしくされている。
自分の他の人はみんな正しく、きちんとしており、非のうちどころがない。
しかし、冷やかに感じられた。
爽快感はある意味ある。だが、きびしさで身がはりつめた。
そこで目が覚めた。
(実際のオレなんか、城によばれて政治みたいなことやらされてる。アルヘレンも末期みたいな世界だぜ。でも、な。優秀なやつだけの世界にいくとさっきの夢みたいな感じかよ。一番下っ端だぜ。俺の本職は将棋指しだったけどな。人材不足のご時世だ…)




20 太陽?



ああ、そうだ太陽が暗くなって…
寒い時代がきて。
太陽?
そうだ、あの輝く太陽を考えれば!

アレクセイは太陽を想像した。
水素原子か何かが燃えて灼熱の巨大な太陽。
そこにはアレクセイから遠いなにか自由があった。
自分たちが餓えているエネルギーが自在にある。
すぐ、近く。目に見えるほどの距離に。

すぐ、いい気分になった。
溢れるほど光と熱がある。ありあまる。
豊だ。
そこには無限の自由があった。


なぜ気がつかなかったのだろう…


ホビンもスピカもおどろいた。
アレクセイもだった。
アルヘレンの市民にはまだ公表されていない未開封の情報だが。
「太陽を中心にして惑星アルヘレンと反対側に惑星があるだって?!」
「そうです、天文学者が計算していいだされたのですが」

数学的に計算すると惑星の天体軌道にずれがある。
惑星アルヘレンと同規模の惑星が太陽をはさんで常に反対側に存在するとして方程式を計算しなおすと、微妙な観測とのずれがぴたりと一致するという。
「そんな…真反対だから決して見えないというのか」
ホビンも驚いた。
「マチルダ…」
スピカはマチルダが来ないかうろたえた。

「人工衛星を飛ばして確認したいとの」

いまのアルヘレンだと人工衛星を飛ばすのも市民の食卓を犠牲にする。
だが、そうシビアでもない。
「どうする?費用はかかるし税金からの話だが…」

プランは潰されなかったが実行は見送られた。


世界は単位時間当たり常に計算している。
宇宙は数学が骨格に収まり支配しているのは間違いない。
物理学はそれを浮き彫りにして発展してきた。
どうじに、計算することによって、計算処理によって、
発明され、文明が発展し、新しい出来事がおこる。
つまりは未来の世界に向かって進むのだが、
問題はその宇宙船の速度だ。
「だれか、大企業があたらしいハンディコンピュータつくらないかな」
そう思っているが、それは未来の世界を先取りしている。
計算がもたもたしてみんながさぼっていると古臭い世界に閉じ込められる。
画期的な計算が終了すると、次世代のマシンが構築され、アレクセイやホビンに渡される。
完璧に構築された未来世界とは計算をしこたまこなした未来を手早く与えられたときに実現する。
だけど、処理された情報は終わったものとしてあまりかえりみられない。
クロスワードパズルや推理小説の過程をはぶいて結果だけ進んだみたいなもったいないこともよくおこるのである。
早く先に進むのもよいが、計算だけで終わって現実過程を楽しまないということに…




21 首都、無政府状態に近づく


アレクセイは首都アリアネロンの市民の声明に腹を立てた。
「くっそう。口で言ってないで手本を見せろだってえ。…わかるけどな。だったらおれたちのいうことをきくなよ」
「まあまあ」
ハーモット伯爵はかなり汗をかいていた。
「政府も政府と認められなくなりつつある。無政府状態にどんどん近づく」

アレクセイは力を落としていった。
「わかるけどな…おれたちのやっていることは自分たちだけのことにならない。内輪のことですですんだらどれだけありがたいか。さわっているんだぜ、俺達、市民の奴らに。さわりたくないのにやっていることでさわってしまう。いじられた向こうは抗議する権利があるんだ」
「企業と違って国家だから首にもできませんしね…」
ホビンが半分他人事というように言い放った。

いっそのことアレクセイは政府のまねごとをやめたくなった。
勝手にしろ、自分たちの旗をあげやがれ。
やってみたらわかる。
自分なんか政府に助けてもらわねえと何もできねえ癖しやがって。
…いつから社会派になったんだオレは。
オレは社会科の教科書じゃない。
でもな、反対に政府に命令される側だとわかるんだ。
ついこのあいだまでそうだったから。
どうする。政治家みたいな職務にいるからだ。
誰にもさわりません。その代り向こうも因縁つけてこられねえ。
そのかわりひとりぼっちだ、それは。

アレクセイの青年のような心は迷いを感じた。
確かにその瞬間、だれか自分たち以外にアルヘレンの時計の針を進ませる計算をしてくれる人物を求めた。

街をぶらつくと声をかけられた。
「よう、アレクセイ!またなんかやってくれよ。今度は政府が何をするのか楽しみだからさ」
こうもいわれた。
そうか…好意的なやつもいたのか。
そうだろうな、全市民意見なんて一致するか。

「ねえ、お見合いの席を設けてよ、めぐりいいやつ」

お見合いだと。
うん、科学技術ばかりでそういうプランを考えてもみなかった。
五穀豊穣の祭り。
今の時代の豊作はもしかしたら、ネットの接続の良さなんじゃないのか?
「最近、ネットのつながりが悪い。身に覚えがある。コンピュータの環境のイイワルイは…」
だけど、見合いなんて競技みたいに片方持ち上げればかたほう不利になる。
ジャッジになるとどっちの味方もできないんだぞ。
それに…よっぽどうまくやらないと、けばい、悪臭のするイベントに悪化するんだ。
オレのじいちゃんの頃がそうだった。
古今東西、どうすればいいのか研究されたが、決定打はない。
それどころか、最初よくても同じのを繰り返すと腐敗していくんだそうだ。なぜか。
やった結果劣悪だった五穀豊穣の祭りは悪魔の祭りとして歴史に残されたりする…
本人たちは悪気はなかったはずだ…




22 アイアンヘルム


「アイアンヘルム…!?」
アレクセイはホットミルクをこぼしそうになった。
「さよう」
ハーモットの爺は窓の外の雪が降らないが、積雪があってもおかしくない寒さの空を見た。
アリアネロンの近辺は、厳しい寒さと、雪の少なさがあり、太陽が曇ってから気象が惑星中で変化していた。気象の変化を研究していたらいくら時間があっても足りなくなる。

アイアンヘルムとは首都アリアネロンより西、さらには北にやや過ぎた地方。
アルメロンの地域を牛耳っているという。
「アルヘレンの軍隊で特殊教育や特殊訓練をした。効果がはっきりしなかったならな。なにもおこらんじゃろう。ところが研究を重ねて作られた訓練のプログラムは相当な力を発揮した。魔人のような力を持った軍人が生育されたのじゃ」
「それがアイアンヘルム…」
マチルダが息を飲んでいった。
「そう。厳しい訓練や教育の果て、そだったのは通常ない力を持った魔人だった。やつは軍を逃げ出し、自分の兵士を集めてアルメロンの地域を固めた」
「知っているぜ。ベザスでもいた。アーベルだかってな」
「首都や正式政府は、わしらだが力を失い。連中が力を集めておる」



アルメロン


アイアンヘルムはどうするか思案に暮れていた。
アルヘレンの惑星は統一国家をいいはっているが、形骸化してきている。
オレたちみたいに地方を牛耳っているのがあちこち点在してきている。
藩なんだ。州といってもいい。言葉の問題だが…
政府軍から独立し、死ぬ気で仲間を集めて反乱をしたが、ついに自分の藩をかためるにいたった。ところがだ、それに成功したはいい。政府もそう力はない。うちをつぶせない。
だが、よその藩、州ともめて体力が続くほど自分に能力が余っていないのに気がついた。
はっきりいって考えてなかったぜ。
惑星ごと自分が統一して支配したいのか、それとも、そんなことしても意味がないのか。
ここまでは、よく考えないでこれたが…
どうする。
州ごとの抗争がつづけば戦国時代になる。
暴走行為のつもりがかなりあったが、今から大人しくしても、攻撃的になっても負担がかかるのにかわりない…









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