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2014年11月30日日曜日

World planet huger ワールド・プラネット・ハンガー 4






4


World planet huger
ワールド・プラネット・ハンガー

閉ざされた世界











13 マチルダの幼少の記憶


首都アリアネロンにおいては、マチルダの力によってほんのりと温かい土地や街になっている。
決してアレクセイの力ではなかった。

そのマチルダがいつだったか話したことがあった。

元旦。食事のにぎわいの席から離れて地下室の倉庫にワインのビンをとりにいった。
父にいいつけられ、お使いに走った。
その新春、ことさらにぎやかで、明るい食堂と違い、薄暗く寒い廊下。でもその当時のマチルダは戻れば暖かいし、安心できる。まさか幽霊がこわいとかそんな年でもなかった。
ネズミでもはしっているのか、不思議な音は聞こえてくる。きしむ音なのか、聴覚が鋭敏になるのは、自覚してなくとも緊張を多少しているせいだろう。
地下倉庫につくと、じゃがいもがはいった、ずた袋、調味料のビン、木箱、金づちややすり、ロープなどもおいてあった。小麦粉の紙袋。あ、あったワインのビン。
好きなのをとって来いと命じられたため選ぶのに考えた。といっても子供のマチルダはジュースにほんの少し混ぜて飲むだけだった。同じ年の男の子はコップ一杯飲む子もたくさんいるだろう。マチルダはビンを抱えてはしった。

それが、幼いころのマチルダの記憶だった。


(首都か、アリアネロンより、ある意味立派に整ってやがるぜ。どういうことだ、きいて地獄、見て天国?)
確かに商業施設など、むしろ首都より栄えてないか?

アレクセイは一通りたたずんだ。
ハーモット伯爵に頼まれた買い物は済んだ。
【エキサイトマグナム】
【マジックキャノン】

いいものを買い物したという気分に少しなった。
重たいのでよほど輸送してもらおうかと思った。
(まあ、ほとんどバスの中だしな。でも荷物が意外と苦になる…)

遠いところまで遠征してきて、なんとなく体力が尽きたらと思うと足がすくむ。
空は赤黒く染まっている。
退廃的なのと以外と安心できる高級商業施設。

アレクセイは居酒屋にはいった。




14 トランプゲーム、マクベス


居酒屋ではポークチョップを頼んだ。
かじりつく。何本も食って味付けがうまいと思った。
パンは明日の朝でいい…
そのかわり、酒。
レモネード風のワインを洒落たグラスで飲んだ。

そろそろ腹が膨れるころ、ゲノスが隣の席に座ってきた。
「合い席、いいかい」
「お、おまえは。食うか?」
ポークチョップを差し出すとゲノスはかじりついた。
そしてビールを注文した。
「それにしても…食料難じゃないのかよ、ここは?」
アレクセイは質問した。
「ん、それはな…」
ゲノスとはここで二回目に会うが、言いよどむのは珍しいように感じられた。

「マクベス?」
「トランプさ、やってみるかい」
「ポークチョップのソースが手についている。洗ってくる」
「おしぼりでふきなよ」
トランプのゲームに興じた。

小銭のコインをやりとりしようとしたら、ゲーム用のプラスチックのコインを出してきた。
カラフルだ。
「おもちゃかよ」
「最後に清算するんだ」
おもしろかった。チップを支払うのに有り金をはたきかねない。
酒も体格の分量をオーバーしそうで怖かった。
あの相撲取りのような男もいつの間にか入ってきた。
彼はスロウという(佐藤と相撲と太郎を合わせた名前だ)
武器は棍といいたいが、そんな時代ではない。
西部劇風にガンが横行している。

「マクベス!」
ババ(魔女)がJ(マクベス)をそそのかす!
「チェックメイト」
同じ(スペード)のキングが殺害されて消える。
「おもしろいな」
アレクセイはそういった。
「だけど、基本運だよりのゲームだ。腕はないのかよ」
「将棋指しの血が騒ぐかい、あるにはあるが」

バビロンの井戸というゲームに変わった。
「こんなのに、腕なんてあるのかよ」
「できたばかりのゲームだからな。定石を研究しなよ。指しものと運ゲームの中間か…?」



次の日の朝、ゲノスはいった。
「あんた、プログラムはできるのかい」
「いや、おれはプログラムはできねー。ソースコードかいてみたいけどな」
「なんかそんな感じだ。やらない方がいいのかもな」
そんな不思議なことを言ってゲノスとスロウとわかれた。




15  複数の男に睨まれた殺気



複数の物騒な男に睨まれている。
ゲノスかスロウがいたら、「おい、気づいているか」と意見を聞くところだ。
バスの停留所で棒きれでなぐられた。
いつかのように逃げないでゾロゾロいられると、怖くてやりかえせなくなる。
「痛ってぇ」
5人の男が集まってきて囲まれた。
「なんだ、てめえ」
「おっ、逆らう気か、つれてこい」


そこの建物は新築に近かった。
「ここでまっていろ」
「?」

向こうは自分を置いてゾロゾロ上がっていく。
しばらく待っていたが来ないので、自分から上がっていくことにした。
マチルダ、ホビン、ハーモット伯爵、スピカ。
インパクトのある人物に会うとき必ずこんなストレートな爆撃のあとのような、破裂した空気を感じた。
だけど、形が物騒だ。
長い付き合いかもしれないが暴走族のような。
暴走族のアートのような感じだ。
「マチルダとかスピカとかいたら余計怖いぜ。こんなときゲノスって野郎いないのかよ」

ゴムパッキンの匂いというのか、と総の空気の薄まったにおいが鼻をかすめる。
新築の無機質な匂いが、生まれたばかりの赤ん坊のような気分にさせた。
これから、バスで長距離の道を通ってアリアネロンにかえらなければない。
そんなわたり船のときに、危険に巻き込まれて臆病になった。
呼吸が荒くなり、胸元を開く。
「ふぃぅー」

ゲノスは、今何をしている。直感で何となくわかる。へらへら浮かれている。浮かれトンボめ。
スロウはどっしりすわって将棋でも構えていそうだ。だけど、よくわからない。

「おう、待たせるのかよ」

ドアを開けて入る。
「なんだてめえ、勝手に…」
「まて」
冷たいような落ち着いた声はアーベルという男だった。
アレクセイは一瞬にして理解した。
首都と違うベザスの発展と安定それに治安の悪さはこいつだ。
アレクセイはわざと部下のほうにきいた。
「こいつが、ベザスを牛耳っているのか」
「そのとおりだ」
「御名答」

(もしかするとスロウって野郎やゲノスもこいつの一味かもしれねえ)
「フン、首都でいろいろ計画をやらされているんだってね」
悪党と一理あるやつの入り混じった奴の雰囲気がみてとれる。

そして、べらべらと話しかけて来る。
「それにしてもきゃしゃな体格だな。よく逃げないで上がってこれたもんだ」
「なんだとてめえ。てめえだってそんな違わないだろ」
「フン、おい、セバスチャン」

血液が氷結されたかのように心臓からスパイダー状にアイスが走った。
「俺の執事だ」

チョッキを着たプロレスラーのようなガタイの男。
まるでアレクセイからすれば赤鬼のようだ。
片手でおさえつけられて、うごけなくなる。
「く…くそ、暴力かよ」
「俺の執事相手にどうすることもできないくらいで…」
「チ…」

血が凍るのがそう簡単にストップしない。
「アーベル様。こいつをどうします?適当に痛めつけて…」
「くそ、脅されねえとダメなのか、てめえ」
アレクセイは心臓がドライアイスで止められたかと思うまま、こしもとの銃に手を伸ばした。
「おっと、銃を抜く気か」
アーベルはそういうと、はなせと命じた。










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