マハリタの宇宙ステーションコスモプラン
1
少し前
キングレオビル30F。ステファノがそろそろ退社しようかと、自分の部屋でぐずぐず仕度をはじめたころ、デスクの上の電話が鳴った。
所長からで、所長の部屋に向かった。
ヤマダも来ていた。
「ヘイ!この企画だが」そういってプリントアウトした何枚かの厚さの書類をみせた。「読んでみてくれ」
ステファノとヤマダは拾い読みした。
「なるほど、コスモのショッピングモールのプランだ。ビーチカラオケ、展望台ゴルフ」
ビーチカラオケとはカラオケボックスのソフアの下の床に深い砂がしきつめられ、ライトが夏の照り返しのように常夏である。
ビーチサンダルや折り畳み式のデッキチェアなどを備える。
忙しくて海やアウトドアができないひとに仮想的に海辺のアウトドアが楽しめる。
展望台ゴルフはビルなどの屋上のような高いところで打ちっぱなしのゴルフをする。
もちろんガラス張りで落ちたりしないが、ものすごく高いところで打ちっぱなしをするので怖い。
「なるほどAプランだ」
「いけてる。コスモって高さあるんですか」
「…コスモはすべてが室内というコンセプトだ。だが、重力発生装置があるので高さはあるな」所長がそういった。
「…」
「この企画をだしたマハリタっていう女の子をチームに入れたいが…」
「企画の公募からでてきたんだ」ヤマダがいった。
「そうだ。キングレオビルで働いてもらうのはいかつい気がするが」
「イエス。思いっきり働かされているという気分になるでしょう」
「じゃが、そうするとどこか違うオフィスで働いてもらうか、それとも在宅勤務?」
「在宅だと、電話とかネットとかまどろこしいところがあるからなあ」
「なら、こうしよう。32Fのフロアの一部を地上げしてもらって買い上げる。そこに公募企画の参加者を集めよう」
「半分お客様、半分従業員みたいなワークスペースにして楽しんで参加してもらうようにしましょうか。本来の従業員じゃないもんな」
「嫌がられますね。強引に働かせると。賃金を払っても」
「かたくるしくない感じでいいな。フリーな相談役みたいにして知恵だけ借りよう」
2
キングレオビル
宇宙ステーションコスモプラン推進チーム
ヤマダが自分の部屋に行こうとオフィスを横切っていたとき、喫茶コーナーのほうにステファノがいるのに気がついた。
「あれー」
一杯のコーヒーをまえにイスにおとなしくこしかけ、両手を膝に乗せて沈黙している。
「…………」
「あれー、どうしたの、ステファノさん」
「ハハッ、実はしばらくこのオフィスを留守にすることになりました」
「ええーっ」
「若い戦士たちを指導する任務が降りてきましたので…」
「そうかあ、元の戦闘業務にもどるんだ」
3
アルフレットはアルフレットリガーとアルフレットジュースを研究開発し、製品にした。
そしてコンビニや各スーパーに卸売した。
申込書をパソコンで書きあげ、ネットや封筒で提出した。
保険所からも許可をとったりした。
人を雇う余裕はなかった。
はやく翡翠の王冠を抵当からださないとない。
段ボールに詰められたジュースや酒を車に積んで運んだ。
ライトアリスタンダーのときも参加しなかった。
「…いい、オレがいなくても倒せる相手だ…」
仕事が戦闘より優先事項になっていっていた。
マハリクが夜にこういった。
「今、有名になっているエスフラーデス号のひととか、会おうと思えば会えるんでしょ。いいじゃない」
アルフレットは人差し指で鼻の下をこすりながら考えた。
「…あまりそういいたくない。嘘ついて儲けている気分になる。都合のいい時に会えるというものでもない」
「そうなんだ」
フィラデルフィアのTVやマスコミではライトアリスタンダー討伐の戦士のことでもちきりだった。
4
キングレオビル
ヤマダがうなっていた。
「ステファノさあん。今いないからな。帰ってきてほしいな」
一般からの企画の応募の処理を任されて、ヤマダはにつまっていた。
マハリタは母である、創造主、マハーラタの指令により、宇宙ステーションコスモに潜伏する計画だった。
もう一人の姉妹、マハリクはマハーラタの命令を無視してアルフレットとくっついている。
実はかなりのちのあらすじを述べると、ステファノはグレートシティから半分独立したコスモの初代統治者のような存在となる。
グレートシティの方でもあらゆる政治的局面からステファノの支配に賛同してまかせきる。
独裁者や皇帝のようでもあるが、完全に宙にはういていない。
それがのちのステファノの仕事であった。
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