稀代の傑作パンドーラ
1
ジュールがいう。
「じゃ、頼んだよ。グレートシティの空港に今日の深夜つく。グラウディウス帝国からのお客さんだ」
「オス、わかりました」
イプセンがそういって敬礼した。
時空警察領ではモデルは違法とされている。
すべての女性は専業主婦をいずれ余儀なくされる仕組みだ。
「男もほとんど警察だよ…」
グラウディウス帝国ではモデルは合法となっており…スーパーモデルより上のウルトラモデルという人たちまでいる。
だが、帝国でも女スパイは非合法となっており、グレートシティでも同様だった。
ただ、逮捕されるということはありえない。
サンダナとイプセンがボディガードとして補佐するという。
グレートシティは永遠の少年のような人たちが住む世界なのだ。
2
帝国からの宇宙船からの昇降口。
降りてきた、女性の名はトータリィ・ケイト。
帝国のウルトラモデルだ。
「オス…いやはじめまして。これからグレートシティを案内するイプセンです」
「ボディガードです」サンダナがそういった。
「手錠は嫌よ」
「…電子手錠というのがありますが、もちろんかけたりしません」イプセンがそういった。
「ボディガードといって…拳銃を向けられている気分だけど。どこに案内されるのかしら?」
「オス…グレートシティの一流ホテル。なんていったっけ」
サンダナがいった。
「…ええ、ああ、タナトスだ。タナトスパレスホテルです。ご案内します」
(うお、俺たちよりでけぇ)
3
「ミ…ミドルルーム?」イプセンがフロントとうけあっている。
「上が決めたんだからそのままでいいんだよ」サンダナがそういう。
「私はミドルルームでいいわよ」
タナトスパレスホテルのそのフロアはメロンの皮のようなでこぼこした壁だった。
「うおお、マスクメロンって感じかよ、おい」イプセンはそういった。
エレベータの出口のわきに真っ白で四角い台にのったメロンの彫刻がある。
高い所から落下してグチャっとつぶれている。
「このアートは…?」
ケイトがいう。
「メロンの飾り…」サンダナも少し首をかしげた。
これは自殺防止用の飾りだった。飛び降り自殺などするまえにみると気分が悪くなりこのホテルで自害したりしない。
イプセンとサンダナは迷路にはいった気分になった。
メロンの皮のような壁がつづく。
なんとなくプリンスメロンのような香りも漂って酔いそうになる。
踊り場のような部分が複雑だが、部屋が並んでいる廊下は単純だった。
ただ、ドアが規則正しく並んでいる。
3
朝になってサンダナとイプセンがタナトスパレスホテルに向かうとケイトはいなかった。
「部屋までいってみるか」
「いやまずい。電話だ」
酒を飲みすぎたわけでもないのに具合が悪くておきあがれないという。
結局正午近い時間まで待たされた。
それから車でホテル近くのパンドーラが展示されている宝石会場まで移動した。
彼女は神経質で手が小刻みに震えている。
ケイトは電子手帳をのぞきこんでいる。
時々何かメモしている。
イプセンはケイトに話しかけて見た。
「朝食は何を食べましたか?」
「カツ丼よ」
「カツ丼!?朝から」
「嘘よ…クロワッサンにカフェオレ、それとメロン…」
彼女には経営者に似ているが違う能力があり、オーラ戦士と違う輝きがあった。
靴屋の引力に匹敵する引力で宝石会場を喧伝する。
ジュールから電話がサンダナにはいってきた。
「ハイ、ええ。会場に到着します」
≪うん、それで君の感覚でいうと何かあるかい≫
「…オス、なんというか、この間の…エスフラーデス号が原因不明の機類の故障を起こしたときと似ている雰囲気があります」
≪…OK、了解…≫
「このパンドーラっていうブレスレットを身につければいいのね」
「あっ、まってください。防弾ガラスのケースのなかには高圧電流がしかけられています」
サンダナとイプセンはひそひそ相談していた。
「おい、本当にこの人がいるだけで、そんなに人に注目されるのか」
「なんらかのオーラみたいなのを注入するんだろう」イプセンが答えた。
ジュールを通して、会場と別の施設にあるスイッチでケースのバリアと高圧電流がオフにされた。
「待って、私の力を注ぎこむから」
ケイトは【人間で一番の美貌を持つ女性のために】とつくられたブレスレット、パンドーラをみにつけた。
「オーラと違うオーラだ」イプセンは驚いた。
4
パンドーラはグレートシティで話題が高騰した。
若者はともかく、億万長者などの間でうわさになり、オークションにかかったとしたらものすごい価格につり上がるだろう。
タナトスパレスホテルにケイトを送り届ける。
ロビーはキビキビした雰囲気で厳しさと優雅さが調和している。
ケイトは携帯電話で会話している。
「ええ、ええ、私に仲間外れにされてるって、ええ、そっちこそこっちを仲間外れにしているんじゃないの。知らないわよ。引力?あなたにも別の惑星間引力があるんじゃなくて…!」
イプセンとサンダナは交代でロビーで警備することになった。
その夜…
深夜のロビーでサンダナは缶コーヒーを買おうと自動販売機コーナーにいった。
奥の方に執拗に自動販売機がたくさん並んだ奥行きのあるが迷路のように狭い場所があった。メインと違うエレベーターも何口もある。
「ああ、眠いな」
フロントの男の人はなにやらやっている。
フロントからでてきてロビーのほうに歩いてきた。
夜中の2時だ。
いきなり携帯電話が鳴った。
「うおっ、」
なんとパンドーラが盗まれたという。
≪ケイトの安否を確認したらそのまま警備をしてくれ。泥棒はこっちで対応する≫
「オ、オス」
謎に警備の厳しく、防弾ガラスや高圧電流のしかけのあるパンドーラが盗み出された。
ケイトは「大変みたいだけど…知らないわよ」と首を振った。
その賊、怪盗の名は『エキサイトトラッカー』
エキサイトトラッカー(ジャポネロ)はテーンとジャンプして足を開いた。
彼は盗みを働いたため、人類のためにライトアリスタンダーと闘わなくてはならない。
この漫画小説の作者にかわって、無償で原稿の続きを書かなくてはいけないのだ。
盗んだ分働かされる。
だが、彼は今異様に興楊している。
エキサイトしているのだ。
「エキサイトトラッカー!!」
テーン!!
5
トータリィ・ケイトはグレートシティのホテル、タナトスパレスホテルでTVを観ている。
小さい時から文房具を買ってもらった少年が、授業を受けている。
消しゴムを買ってもらえず、つばをつけて消している生徒をみてバッチィと思う。
ある日、教師にノートの間違いを直せと言われる。
だが、消しゴムを忘れてきていた。
「…消せません…」
教師に怒られた!
「消せませんじゃなくて、つばをつけて消すとか、斜線を引いて訂正しなさい!」
トータリィ・ケイトはテレビを見ながら思った。
「ふーん、これがグレートシティのテレビ?」
6
グレートシティでは女性の未就労にかなり甘い。許されているといっていい。
ジュールはブレスレット、パンドーラをまんまとぬすみだした、エキサイトトラッカー(ジャポネロ)を指名手配した。
「この時空警察のおひざもと、泥棒がぬすみをはたらくなんて重大だよ」
エキサイトトラッカーはその罪から今度はヒーローの卵へと転化していく。
泥棒が盗みを働くのは労働か罪か。
ああ無情…
7
サンダナとイプセンがケイトの泊っている階に上がってきた。
エレベーターの中で会話している。
「エスフラーデス号のとき、筏で滑空したけど怖くなかった。でも、オレは死んでもバンジージャンプなんて無理だとおもう。恐ろしくてできない」サンダナがそういった。
「…」
「筏は素人でも何となく自分で操縦が可能なんだよな。バンジージャンプとかされるがままだろ。操縦しできないのが怖いんだと思うな。一生できないと思う」
「訓練だろ」
二人はエレベーターから出た。
「この壁だぜ。メロンの皮みたいな。こんなのに走って衝突したり、顔こすりつけられたりしたらたまらないぜ」イプセンがいった。
どうみても大根おろしのような凹凸のある壁に痛いだろう。
「体育館じゃないんだ。こんなところで暴れるやついないだろ」
ケイトがでてきて二人にいった。
「このインフォメーションにある、スペアリブのあるレストランか骨付きカルビありの焼き肉専門店で食べたいんだけど」
「ええ、スペアリブって骨ばっかで喰うとこないんじゃ」
8
ケイトは聖人が身につけていたような、煮しまったサングラスをかけた。
腕にみたことのあるブレスレットをはめた男が歩いている。
「あっ」イプセンが声を上げた。
「あ、あれ、そうじゃないの?」ケイトもグラスをはずした。
「まて、泥棒は貴様だな」サンダナも走って追いかけた。
一瞬男は振りかえったが、ダッシュで走りだした。
イプセンはビームサーベルをぬいた。
シュオン
スイッチを押してビームの刀身を出す。
「待ちやがれ!テクニカルシュート!!」
ビームサーベルを持った片手を地面すれすれまで斜めの姿勢になり、剣を手裏剣のように投げ飛ばした。
くるくるブーメランのようにビームサーベルが飛んでいく。
「まて、イプセン、こんな高い室内で暴れるな!」
チュオン!
間一髪逃げられた。
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