マッハールの旅
1
マッハールは馬を駆って自分の部落から離れて旅をしていた。
「聖人殺し」の部落をさけて、海岸沿いの道を走り、さらにドラゴン多発地帯にまでたどりついていた。
弓矢で鳥を仕留めて焼いて食ったり、川の水を水筒にくんだりして旅を続けていた。
だが、
【首の長い竜】
「でたな、物語に出てくる凶暴な竜!」
マッハールはサンダーシャワーを唱えた。
678…
ブレスを喰らい、死にかける。
「おおっ、伝説通り火を吐くのか」
スチルソード
547…
マッハールはやられた。
気をうしなった。
…
本来ならそこでマッハールは死んでいた。
今のマッハールでは勝てないモンスターだらけの土地だった。
ドラゴンガールが助け、救ってくれた。
「どうしましょう。この異国の風貌の男の人」
処置に困った少女は、ドラゴンにのせてアルクレオンまで運び宿にあずけて去った。
ううっ…
気がつくとマッハールはアルクレオンの宿屋で寝ていた。
玉ねぎのスープとパンで滋養をつけて回復していった。
「さて、どうする」
砂金で宿代は払えた。
2
アルクレオンの町並みは静かで、それでいて埃っぽい雰囲気もないわけでなかった。
街娘が市場で買い物している。
マッハールは動けるようになり、街を見て回った。
生涯初めての自分たちとよその土地。
砂糖漬けのトマトを買って食べたりした。
アルクレオンの城では王子に言わせると、「お姉さんはこの土地に悪の魔術師も、ドラゴンも襲ってこないからおかしくなるのだ」という。
禍が来ないから、そのかわり姉上の頭がへんてこになるというのだった。
たしかにドラゴン多発地帯の竜どもは、旅人は襲うがこの街までやってくることはない。経験的に知られていた。
街の外れの小屋に変な看板がかかっている。
マッハールは入ってみた。
年寄りの賢者らしき人物が座りこんでいる。
「よくきたな。若いの…最近は冒険者も誰も来ないので困窮していた」
「ご老人は何を…」
彼はヴェナスクという、いろいろなことを研究し、若い英雄に知恵と力を授けるのが仕事だという。
「ためしに魔法をひとつ教えようか」
「そんな簡単に会得できるのか」
「今は何か魔法を使えるのかね」
「天の鳥よりサンダーシャワーの術を得た。それにタオを少し」
「それなら、話は早い」
ポイズンフェアリーの魔法をヴェナスクはマッハールに教えた。
毒を持った妖精が敵をしびれされる。
その毒で息の根をとめたり、神経をマヒさせたり、窒息させたりするという。
「なんだかアサシンの術のようだな」
それから老人は街で売っている【死霊の弓矢】を買えという。
「そしてまたこい…相談に乗ろう」
マッハールは湿地帯のドラゴンのことを話した。
ヴェナスクはこういった。「それは…!てっきり貿易船に乗ってボルネオから来たと思っていた。あそこの竜どもは腹を空かせている。居眠りしていても手ごわい。避けて通ることだ。帰りはボルネオに船で渡り変える方が賢明じゃ。魔王と渡り合う英雄でも互角の強敵地だからな」
「そうか、どうりで…」
マッハールは武器売りやを探して入ると確かに「死霊の弓矢」が売っていた。
店のオヤジによると、矢じりに金属の毒性があり、矢が折れない限り何度でも毒弓としてつかえるという。
「まちがっても射るとき、自分の指を怪我しないようにな。毒がまわるからな」
【狩人の弓矢】は食用の獣を得るときのために使うことにした。
「さて…」
湿地帯を渡って帰ると死ぬ。この新い武器くらいで生きて渡れない。ボルネオの船に乗るか。
3
マッハールが乗った船は帆に風を受け走っていた。
航海は順調だった。
ボルネオに到着するまで3日かかるという。
「風がいいからちゃあんとつくだよ」
ある夜、雲の気配があやしかった。
マッハールは夜に起きて看板に立っていた。
船酔いはしなかった。
タオの呼吸に頼ったが。
「…」
一人の自分より上背のある男が立っている。
深刻な顔をして顔色が悪い。
「なんだ、あんた。大丈夫か」マッハールはそういって避けようとした。
「我が父のために共に戦わぬか」
「なに」
マッハールはとても今の自分が勝てる相手ではないと悟った。
狂気の目の色をしているが、同時にしっかりもしている。
ニター
笑みが気持ち悪かった。
うれしそうに見るところを見ると自分を部下として扱いたいらしい。
「おまえは?」
「バーラルデビル」
マッハールはスチルソードで看板にくくりつけられているボートの綱をきると、大力をだして、ボートをもちあげ、海に放り投げた。
ボートはうまく海に浮いた。
綱を器用につかって、ボートにわたると船から離れた。
船で戦っては船が沈没しかねない。
自分がいなくなれば奴も船を沈めたりはしないだろうと踏んだ。
「残念だったな。また会おう。魔族の若武者よ」
ボートは数時間で転覆した。
気がついたマッハールは草原に近い砂浜で倒れていた。
買い物した死霊の弓矢はもっていた。
大きい部落からきた、見覚えのある何人かが集まっており、マッハールを介抱してくれていた。
マッハールは生きて元の部落に帰ることができた。
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