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2014年7月24日木曜日

アルバリシアの私慕(しぼ)





アルバリシアの慕(し








1


その出来事は二日くらい前から予兆があった。
どんよりとした雲がせわしない気分を落ち着かせ、浮かれた気分を厳粛で冷静にしていた。
あと少しで体調を崩しそうになる、天が崩れて雷と雨がふりそうな気配が続いていた。

本を読んでいたが、なんとなく今の気分に似ている雰囲気の話だと思って読んでいた。
母親の呼ぶ声が、真剣なのでとうとう来たかと覚悟を決めたのを後で思い出した。

エドアールが入院して意識不明だという。
初めての婚約者の看護というのかお見舞い。
なんだが、現実に感じられず、大層落ち着いているが自分は薄情な女なのかと冷静に観察して思考している自分がいる、エドアールが気の毒な気がした。

車に母親とのり、病院に向かう。
エカルテまで直行。
オートコントロールカーなので運転手はいないが、まずラグナクロクとエカルテの国境を目指した。エカルテで大怪我をして、エカルテの大病院にいるという。



2



少し前…

エドアールとロビンがエカルテのコーヒーハウスにはいっていた。
「なあ…ラグナクロク軍に転入しないか?」エドアールはロビンを勧誘していた。
「ハイカラなものが次々出てくるな。森にひっこんでいた方が身のためだったかもしれないずら。そっちの軍にはいれって?そんないっぺんに理解できないから今のままでいい。むこう数十年なれきらないぞオレ」
「…」

その帰り道…

レベルラハムの新たな部下

【ズィーザー】【グィンザー】
一見すると天使のような、角の生えた妖精のような姿。
レベルラハムにとっての天使だといえるだろうか!?

「チッ…オーブリーもいない」
ロビンと二対ニだ。

「美の小箱はどこだ!?」
「美の小箱!?知らんな…」エドアールがそういうと、ロビンがこういった。
「少しだけ知ってるけどな」
「なんだと!?」向こうは興味を持ってきた。
ロビンは狩人の弓をかまえながらいった。「ちょっと遠い所にあったけど、もう誰かが使っちまったかな」

宙に羽ばたいているズィーザーに矢がとんでいく。



3


「エアーアタック」
ごうとつむじ風がおこり、ロビンの矢がふきとばされる。

ロビンは顔色が変わった。「なんだあ~森にいる魔物とは全然違うぞー」
エドアールはゆっくりとドラゴンソードを抜いた。
スラシァアア、キラ!

ドン!
跳躍し、斬りかかる。

ズィーザーは杖を持っている。グィンザーは槍をもっている。
だが…

レベルを上げたエドアールの猛攻でさえ、エアーアタックにはじきかえされた。
「ぐおおう?」
ジャンプしたエドアールに拭きつける風はものすごい圧力だ。
蒸気機関の噴射をもろにうけたようにふきとばされ、着地が必死だった。
「なんだと!?この魔力」
「な、半端じゃないぞ」ロビンももう一本の矢をつがえた。

ズィーザーが杖をふりまわしながらいう。
「われわれはレベルラハム様のしもべ!おまえらへなちょこどもとは違うのだ」
「そうか…やけに強敵だと思ったら、主はあいつか…」
エドアールはドラゴンソードを鞘にしまうと、もう一本の剣、炎の剣を抜き放った。

「そっちが魔力なら…こっちは仮想魔法だ!」
ドンドン!

ふりまわした炎の剣からファイアーボールが炸裂する。

ズィーザーはかろやかに空中を滑りよけたが、グィンザーは火の塊を受けて焼けた。
「ぐあっ、熱ちい!」

さらにロビンの矢がグィンザーをかすめた。
「わっ!?」
たまりかねた、グィンザーは低空飛行のように地面にちかづき、槍でロビンを攻撃した。
「わっ!?」
ロビンは腕から血を流す。
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エドアールは助走をつけて跳ねた。
【レフトハングオン】

今度はズィーザーを切り且つ焼いた。
1546

だが、着地して振り向いたエドアールに魔法を仕掛けてきた。
「くそう、強いな。ならば…覚えたてのこの技で」

口を開いて炎の魔法がきらめいた。

【ウィンダムファイア】
マグネシウムが燃えるようなきらめいた炎!
エドアールは鎧を着ていない。ドラゴンシールドもなかった。
「ぐわっ!?」

直撃!上半身の服は黒焦げて体も火傷した。
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「この魔法の威力!?そうとうな魔力のようだな」
「エドアールの兄ちゃん!生きてるか」

両サイドとも、思わぬ強敵で興奮していた。
「…」
「……」




4



エカルテの病院についた。
やっと胸が高鳴って胸騒ぎがしてきた。
母親は「現実的なことで気働きがきくのは女のほうよ。しっかりしてちょうだい」

病室につくとエドアールは包帯でミイラのようになっていた。
医師によると退院まで一週間ほどだという。
病院にはそういう設備がないので、エカルテのホテルに投宿することになった。

エドアールの両親もやってきた。
エドアールは意識が戻らないけど、看病した。

その日、エドアールの両親がエビがどうのといっていた。
コインメタトリーに海はない。
そのため海産物は高価で冷凍で輸入されて運ばれてくる。

木造の洋館で冷たいコンソメとエビのサシミを食べた。
風通しのよい、質素な広い洋館。
刺身…サシミ…さしみ…醤油…しょうゆ…ショウユ…わさび
どんな調味料かと思って食べて見たが、生のエビをソースに浸して食べる。
とても新鮮でおいしかった。
食べているという生き生きとした感覚。
エドアールの両親、エルモント家の人たちともお話した。
おばさまもエドアールは心配ないようだと話していた。
「この冷たいコンソメ…塩味がきいておいしいわね。汗をかいたわ…」
そういって扇であおいでいた。

ハォゼンツィズ家は家だ。
アルバリシア・ハォゼンツィズが私の本名だ。
ラグナクロク国王の娘カテリーナ・ラグナクロクも親戚で御三家をなしている。
といってもコインメタトリーの中でも、その四分の一、ラグナクロクでの世界での狭い話だけれど…

カテリーナから電話がかかってきた。
彼女とはしばらく話していなかった。
疎遠であるといっていい。
エドアールも幼少時以外は顔をあわせなくなっていた。




5


この小説。時空小説は読みやすい小説を意識して書いているつもりだ。
書店で買ってきた小説などの何割かは読んでも読めない。
何を書いているのか、筋もはっきりしなかったりする。
それが嫌なのではっきりとわかりやすい小説を書いてみようという動機が確かにあった。
しかし、その結果、欠点はわかりやすいかもしれないが、一度読んだらもう読む気がしなくなる。風景描写が難しく、専門的な匂いが立ち込める小説は食いにくい。だが、噛むほど味が出るというのか、再び手を取っても減っていない。というより、通読したくらいでは頭に残らず、再読、三読としないとかみ砕いて頭にはいらないのかもしれない。
時空小説は一過性に読みやすいが、もう一度読む気がしない小説なのかもしれない。

それともうひとつ、あたらしい小説のスタイルを発明できるのなら発明したいという意欲。
文字が書き並んだだけの小説は、きれいな映画や動くし、コントロールできるゲーム、絵のあるマンガにくらべて、省エネという感じがないわけでもないと思う。
まあ、その分を文の内容に力を注げばいいことでもあるが…
そこで、読みあきた、既存の小説のスタイルから、型破りな独自のスタイルを演じてみようという試みがある。
まるで、あらすじみたいな骨格と一部のシーンを徹底的に克明に書いたり、詩のようになにがおこっているのか具体性がなく、ある意味、読者の想像におまかせする。
つじつまとか、あまりに意識しないとストーリーが壊れるが、あまりそれを意識するとつまらない読み物になることもあるわけで。
時空小説の大前提は見えるわけのないものをはっきり書いてしまうだったが…新しい試みだ。




6



普段は私はコーヒーを飲まないが、その日は病院の喫茶室でコーヒーを飲んだ。
エドアールの回復とともに日光も強く、元気がよい。
エドアールはいっていた。「軍隊はヒーローをやりながらだと戦いにくいときがある。ダーティであるのがプロなのかもしれない」と。
だから、軍隊をあまり英雄扱いするのは考えものだという意見だった…

それに…
昨日くらいからある、この小箱。
一体何なのだろう?
開けてみようかしらとも思うけれども…



7


エドアールがちょうど目を覚ました。
「ハッ!?ア…アルバリシア?…ここは病院…か」
「目が覚めた?エドアール…アルコールはまだ駄目よ」
「アルコール?酒か、いや…酒は。たばこもいい」
「一本くらいなら吸っていいってお医者様がいっていたわよ」
「そうか…体は無事のようだ。その箱…」
「なにかしらね、この小箱」
折り紙で作った小物がいつのまにかそこにあるようにそこにあった…


あとは数日寝ていれば退院だった。


夜、ホテルの窓から外を見ていると、何かが点滅している。
信号のようだと感じた。
そのうち私は催眠術にかかったように、ホテルを抜け出し外に出ようとした。
そのとき、頭に声が聴こえて来た。

《エドアールの剣を二本とも持っていきなさい》

剣は重かった。
半分夢の中にいるような、操られているような。

暗闇に誰か立っている。
ふたり…
みると、眠っているエドアールと魔女のような女だった。

水中での音の聞こえ方は違う。空気での音の伝わり方は子供のころからなれてあたりまえになってしまっているけど、水のなかのボコボコいうような、声や音がかすれるような、そんな奇妙な感覚で剣を二本抱えながら立っていた。

「娘よ…美の小箱をこっちにおよこし。この男の命と引き換えにな…」
「エドアール!」
声は水中を通しているように水面に消えていった。

「美の小箱って!?これのこと…」

そのときエドアールが意識を回復させた。
「ハッ!貴様、レベルラハム!くそっ剣があれば」
エドアールは私に気がついた。
「アルバリ…剣をもっているのか!?わたせ」

二本の剣を受け取ると雷神のように魔女からはなれ、距離をとった。

「ズィーザー!グィンザー!」
レベルラハムがそう怒鳴った。
闇夜から、二対の鬼天使が空に浮かんでいる。


エドアールがドラゴンソードをぬくと、おどりかかった。
「必殺!ドラゴンショット!!!」

ブオン

【ドラゴンショット】
8974

ズィーザーとグィンザーはふたりで協力して防御した。

【スペードガード】
トランプのが何枚も羽ばたいてあらわれ、ぐるぐるズィーザーとグィンザーのまわりをガードする。

ドガガガガガ

エドアールのドラゴンショットは抑えられ、軽いダメージに終わった。
「ふう、でも強烈な一撃だった」
ズィーザーがそういった。




8


【疾風迅雷】

ズィーザーとグィンザーが魔力を蓄積する。
「疾風迅雷!これをまともに食らえば終わりだ、おまえは…」
「ヒッヒッヒッ!」


「ぐうっ、」
エドアールの足元はふらついている。

「やめて!わたしからうばえばいいじゃない、この小箱」

レベルラハムは腕で鬼天使二匹を静止させると、おちついてこういった。
「それは…そうもいかぬ。契約なのだ。はっきりお前がゆずりわたすといわねば意味がない」

グィンザーがいった。
「ヒッヒッ、そうだ、強奪しても中身は空の箱だ」

「…」
私は声が止まった。

「……さあ、どうする。この男の命は今回は見逃す…」
「…それも契約ってわけね…」

じりじりと、乾いてまんじりともしない時間が流れた。
エドアールは呼吸を整え、次のアクションに出ようとしている気配がみえた。
ズィーザーが疾風迅雷の魔力を調節して備えた。

「…わかったわ、この小箱をあなたにわたすから…」

エドアールはなんとも意思表示しなかった。

「よかろう…」
「…」
「……」
レベルラハムとアルバリシアはお互い腹の内を探るように目を見ていた、ゆっくりとアルバリシアが小箱を差し出す。
魔女のとがった爪でレベルラハムは小箱を静かに…しかし、しっかりとつかんだ。

「確かに受け取った…」
レベルラハムは急に動きが早くなった。
「では、約束通りこの男は助ける…さらばだ…」
そういって鬼天使に眼で合図すると、さっと消えた。

エドアールはその帰りこういった。
「残念だったな。美の小箱か…」
「さあ、どうだかね」
私はこういった。

夜の空気は湿度と熱気が感じられた…














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