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2013年12月3日火曜日

ドリトス戦

















1


エカルテ城

「ザールの動きはまだか…ふーっ」
クラークはザフラ(妻)に電話をかけ出した。
「ああ、ゴールド・ウィンかラグナクロク方面に隠れ家買おうかと思って」
エドアールとトムがみている。
「たまにそこに泊って街、見物して帰ってこような」
≪何日も空けると埃がたまるわよ。ホテルに泊まれば同じじゃない≫
「でも冷蔵庫のなか、腐るものじゃなきゃ置いておけるぞ。次来た時もそのままの部屋で自由に使えるし。何かと便利だぞ」


エドアールはトムにいった。
「何をしているんだクラーク王は…ドリトスで神経質になっているぞ。最終ターゲットの部下の一人にすぎんぞドリトスなど」
「そうだぜ」

「あーそろそろ始まるな」
トムがいった。
「長年鍛えた秘密兵器だぜ。あたためた詩の紙切れを買ってくれ」
クラークはいった。
500コインで買おうか…」
「うそだぜ。いやある。オレの分析した戦略だ。500コインうけとるぜ。通用する武器をすぐにはむりでもあたためろよ。ブロームインの軍はやられるぜ、おそらく。でもダメージはあたえられる。そのあと後続の金髪の大男がたぶんたおす。奴は相当だからな。意地でも倒すだろう」
「それで…?」
「魔獣はそのあと3匹はいるんだぜ!?もっとかも。最終ターゲットが控えているし。俺たちや金髪の大男は捨て駒になってもいいけど、クラーク王は最後の砦だといいたいんだ。それが売り物になる分析だぜ。ラストバトルにはラストクラークを温存しといてぶつけないと」
「…なるほど…オレはダイヤモンドの女王まで控えか…」
「そういうこと」




2



ザールの宇宙船は目的地に着いた。
魔法騎士の精鋭20名をつれてきた。
そのうちヒーリングに強いものを脱出のときのため10名船に残す。
万が一の時救助にきてもらうためだ。
残りの10名はザールと一緒に戦闘する。

シールドがいった。
「ここのゆがんだ大地は半分物質という感じだ」
半透明で反発する。
「磁石だ。磁力の反発など半端な物質なんだ。モノがあるとないの境界みたいな。引力は真空みたいに物質の欠如か負の物質かもな…」

大地は頼りないようなリニアモーターカーにように浮かんでいるようなだった。
足を運ぶ。
ザールが中を見渡していった。
「おお、ひろいぞ。だが天井の上にどうやっていくんだ」
「上のフロアに行く階段がありません」
精鋭の一人がいった。
「これだ、この床の模様」
シールドがいう。

アルフレットのときのように全員ドリトスのフロアに移動した。

巨大なタコ。
頭に不釣り合いなほど小さい王冠をのせている。

上から声が…
≪ためさせてもらうぞ、お前たちの力…ドリトスの餌食になるか!?≫


もってきた荷物を置いて剣をとる。



3


ザールの戦略だった。
「まず、魔法騎士の部隊が攻撃しろ!10名一度にかかれ!!」

魔法騎士の精鋭たちはライデンソードを握り、反対にゴルデンシールドを装備している。
ザール、シールド、ダガーは後ろで控えている。
ザールが叫ぶ!
「よし、作戦どうりだ!剣で攻撃して、その後下がって魔法を撃て」

タコの触手が何本も走ってくる。
魔法騎士のライデンソードがきらめく。

ザシ 234 ゴフ 451 ガガン 105 ザッ 317

「いいぞ…」
ザールは興奮して熱で汗をかいた。

何人か触手におそわれたが、楯で防いだ。

間合いが悪くなると下がって魔法を連発した。
「フレイムボム!!」
「エアアタックー!」
「ライトニングカッター」

ドリトスが火に包まれる。
図体がでかいので体の下半分が煙に包まれる。

「いいぞ」
シールドがいった。
「楯と剣のせいで…手を突きださず口だけで魔法を唱えているため、力がいま一つ」
「なに!?」


爆撃が止むと剣を鳴らしておどりかかる。
だが次はそういかなかった。

触手で胴体を巻きつかれるもの、剣をはじき落とされるもの、ゴルデンシールドで守ってもはるか後ろまで吹っ飛ばされたりした。
「うおお」
「ぬんん」
「うぐぐ」

体をタコの腕で縛られ魔法を唱えた。
「ライトニングカッター」

そのとき翡翠の王冠がひかった。
ピカ
ザワワワワ

無数の輝く銀の野球ボールくらいの玉がちらばる。
ライトニングカッターがあたるとキラと反射して本人に帰ってくる。
「魔法反射だ」

剣で銀の玉を割ったものがいた。
ぎ「ぎゃああ」
電撃が伝わる。
玉は消えた。
「これじゃ地雷だ」
10名の魔法騎士たちはぼろぼろにされた。

「もういい、さがれ!下がって休め」

ザール、シールド、ダガーが前に出る。
魔法騎士たちは後ろに下がり、霊玉で回復したり、水薬を飲んだりした。




4


ザールは距離を置いて神剣をふるった。
剣は当たらないがサンダーバードの落雷がおちる。

バシィィィン!ズドドドゴゴゴロ

1587

シールドがスマートコントロールアクスをふるい、触手を切り刻む。
フリーハンド 1678

ダガーはスリープダガーをかまえ拳法の姿勢で様子をうかがう。

強力な触手が鞭をしならせるようにダガーを襲った。
あまりの勢いにダガーはもろに喰らった。
ドリトスは魔獣の知性で戦っているようだが相手の人数が少ないと足を動かしやすいらしかった。

「うぶ!_・?」

みぞおちに喰らい反対の壁に吹っ飛ぶ。
どしゃ、
地面に崩れ落ちる。
立てない…
足がガクガクいう。

薬草を取り出し口に入れて噛む。


シールドはフレイムボムを唱えた。
銀の玉にあたり跳ね返る。
サイコシールドをさっと掲げる。
にゅおん!!?
楯が魔力を吸い込む。楯のバッテリーがチャージされた。

「…」

ザールは神剣を地面に突き立て、逆さに統一している。
複数の触手がザールをめがけておどりかかる。
ズドーン、ズン、ボオオン

「ハッ」
ザールは跳躍し中空を舞い、剣をドリトスの頭部に振り落とす。
「一撃剣」

ドハッ 4871



5


さらに火球がふりそそぐ。
ぼっぼっぼおっ

ダガーが立ち上がり触手の太い部分にしがみつきスリープダガーをつきさした。
しびれ薬がたっぷりぬってある。
毒がまわるよう深く差してえぐった。

マヒしたのか、少し足の力が鈍い。
だが、その足周辺でドリトスの体全部には回らない様子だった。

ザールは背中に強撃をうけて地面に叩きつけられた。
「うぉう!?」

シールドもやられた。
銀の玉をサイコシールドでうけると、エラーがでたように楯がうなる。
「型の合わないソフトウェアやファイルをいれようとしたみたいだ」
ドン
不意をつかれふっとばされる。

ドリトスの傷からあぶくがぶくぶく噴き出して、傷が治癒してゆく。
「くそっ、回復されるとまずい」

魔法騎士たちと交代した。
ザールたちは霊玉を割って回復する。

魔法騎士は銀の玉をさけながらライデンソードをふる。
ぶおーん
強力な触手がジャストミートした。
「ごふうう?!!」
壁に激突し、首の骨が完全に折れた。
「キげ」く

ザールはしゃがみながら見ていた。
「やられた…完全に死んだ」
手を合わせた。

誰か一人はタコの腕につかまれ口のキバで噛み砕かれ喰われた。
「おわーあああ」

「く…喰われた」

10名の魔法騎士たちは3名が死亡し、4名が重傷で倒れた、3名が奮闘している。
ドリトスの顔色が変わった。

「ハイグレードなタコが…」
さらに模様がチェンジする。
刺激的なデザインでありながら落ち着いている。
「さ…最強のクラーケンという感じだ」

翡翠の冠が光る。
銀の玉がつぎつぎふきだされる。

「ぬ、おおお一か八か最後のあがきだ」

大帝斬 5462
ドシ! 弓矢 234
「おおっ、逃げるぞ!退却!!」


6

ザールたちは隙間から一階まで飛びおりた。
死んでいる者の死骸は諦めた。

下はトランポリンのような弾力で何ともない。
さらにヒーリングの魔法騎士10名が駆け付けてくれた。
ドリトスはおってこない。
そのまま船でブロームインのエアポートまで引き上げた。


エカルテ城


クラークは王座で文庫本を読むともなしにめくっていた。
エドアールとトムはスフィンクスでネットやTVから情報をさぐっている。
ときどき自分のスマートフォンをとりだして何か確認していた。
クラークが本を横のテーブルに置いていった。
「このへんに彫刻でもドカッと置くか…」
「彫刻ですか」
「ヘイ、そりゃいいぜ」
「コーヒーをもってこさせる」
クラークは呼び鈴のひもを引いた。

エドガーがさきにきた。
「どうですかな」
「なにもないな。連絡待ちだ。待ちぼうけ」

コーヒーをもってきた給仕は部屋の入口の方にあるテーブルに置いた。
カップ三つにばななの切れた皿がある。

クラークは飲んでいいと、無言で首を動かした。
エドガーがコーヒーを口にした。
クラークはモーニングスターをギターみたいにいじくっている。

エドアールは長椅子にすわりコーヒーをすすった。

スフィンクスがチリカラ動いている。
思考しているのか機械音がかすかに聞こえ、くるくる考えている。
≪重要と思われるニュース発見≫
「よし、それだ」
ザールのことがブロームインの記事になっている。
簡単な報告書だ。

「修行を習得したザールでもダメだった」
エドアールとトムは生真面目な顔をした。
「どうするかな」クラークはため息をついた。



7



「このタブレット端末が主流の時代に印刷したページとはな」
クラーク、エドアール、トムがよむ。
「まあまあ、なんでもタブレットだと秘書の仕事がなくなりますよ」
猫がみんなにくばった。
「ドリトスの調査書か…実際ザール王子がみてきたんだ」トムがいう。

「テュポン?このドリトスってギリシア神話のテュポンっていう奴じゃないか」
クラークがそういった。
トムがスフィンクスでテュポンを調べた。
「…天に届くほどの巨人で肩にドラゴンが何匹も生えてるって、かいてあるぜ」
「違うか…」
エドアールがさらにページを閲覧していていった。
「ガイア…」
クラークがいった。
「ガイアか、大地の神。なんとなく男性的に感じるけど女神なんだな」
「カオスをのぞいて第一の存在だぜ。あやしいぜ」
「最初からいるのがカオス(混沌)かそこからガイアが生まれた…」


そのときオーブリーが自宅の用事を終えて城に逗留しにきた。
「お疲れさまです、クラーク王。エドアールも」
「ああ」
エドアールはやけに無口だった。
「おう、オーブリー、心強いぞ」クラークが声をかける。

その日オーブリーも交えて分析と会議をしたが…

夜 600
ホワイトがカンタッキーのフライドチキン・バスケットを買ってきた。
「買ってきましたよー」
「おお、チキンだぜ」トムが喰いつく。「こしょうがきいていてうまいぜ」
「どれどれ」オーブリーもバスケットにいっぱいつまったチキンをとりだす。
「バーガーはないのかよ」クラークがいった。

みんなで食べつくして骨だけになったころ、エドガーがはいってきた。
「…そろそろ帰宅しますじゃ」
「ああ、お疲れさん。オレもひきあげるか…もう7時か。待っていても何もないかもな」
「非常時に非常識だぜ」トムがいう。
「あ」オーブリーがスフィンクスをみていていった。

エジオンの声明だ。
【アルフレットとファジオの二名でいく。残りは温存する作戦でいく】
この短い声明文だけだった。

だが、ネットの通信を通して世界に広まった。

ザール王子は「バカげている。戦闘のフロアは広い!わたしは13名で闘った。2強という作戦にいかほどの意味があるのか。温存なるほど。四天獣とかのようにドリトスクラスの強敵がまだ控えている。なるほど、だが…」とネットに書き込んだ。


次の日。
クラークが朝、来るともうエドアールとエドガーがきていた。
「はやいな」
「ええ」

クラークは席について、しばらく考え事をしていた。
本当は体が重かった。
柔軟体操代わりに背もたれにもたれていた。

秘書猫、ついでオーブリーが入ってきた。
「さて、今日もやるか…」
「でやす。」

オーブリーがいった。
「アルフレットの予測と…議題は、」
エドガーが補った。
「勝敗の予測と、次の魔獣の対策…あとは」

「そんなくらいでいい」
オーブリーが水をさした。
「そだな」

「アルフレットなら倒すな」オーブリーがやや無責任にいった。
エドアールとトムは長椅子に腰かけている。
エドガーとオーブリーは立っている。
猫は王間をいったんでていった。

エドアールが沈黙していたが発言した。
「エカルテとしての声明文…」
「…ああ、それな。アルフレットに助けになるようにも考えて」
「コンピュータはまかせろよ」トムが力んだ。

朝一にほうじ茶が運ばれてきた。
エドガーは飲み干すと出ていった。
エドアールも「オレも…ちょっと煙草を吸ってきます」とでていった。

王間をでると緊迫した空気のスパークから解放された。
しばらくのあいだ、ひなたぼっこのような無責任な自由な空気がすえた。
城の一部にある喫煙所で煙草をふかした。

「ふう、疲れたな。戦いとは違う疲労だ…」