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2013年9月13日金曜日

二人の証人




二人の証人













1


パーカーが基地の自室の司令室で仕事をしていると、クラークからメールがきた。
オーブリー・ウォーターなる人物をジャイロダインの見学と観光に派遣したとある。

「オーブリー・ウォーター?」
彼はエジオンは初飛来だ。

そのあとまた通知がきた。
地球のカーターからで音声の手紙だった。声からすると傷ついている。
「こっちはSOSというより応援要請か。よし!わかった」

クラークに電話して、オーブリーなる人物を地球に派遣してもらうことにした。
さらにカーター氏とやりとりすると、「オーブリー…彼か。助かる。だが今の私のダメージを考えると、もう少し戦力が欲しいところだ。ロシア兵の話だと時空警察からも誰か来るというからな、すまない」

パーカーはファジオに連絡を取った。
彼の経験に役立つ。「地球人だしな…」そのかわりアランをジャイロダインに派遣した。

エルダは志願してファジオがもどるまでエジオンで暮らすことにしてもらった。
「…、地球の戦闘からもどっても、当面ファジオはエジオン勤務にする」
きっぱりいう。
ウルフはあせった。
「彼が抜けた穴はいたいな~」



オーブリーはエジオンのエアポートでクラークからの電話を受けて知った。
パーカーと面識がないため、そのまま乗り継いで地球・ロシア北部に飛んだ。

「地球か。第一の故郷。そしてロ・シ・ア?なんだ、アリスタンダーのときのどうくつのあるシティじゃないか…あそこか。パズズ?出張先が変更だ」

クラークからの電話だと、「またぎきだけど、カーターが重傷らしいぞ」といっていた。

「カーター氏が…。ついこの前だ。ぼくらがアリスタンダーバトルを繰り広げたのは…あれから幾月もたっていない」




2


宇宙ステーション・ジャイロダイン


アルフレットはアルセウスと荷物の配達に燃えていた。
「ああ、相変わらず汗だくだ」
「まったくだ。アランがこっちに来るという話だ」
「アラン…やつか」
「そのかわりファジオが帰った」
「なに…!?そんな話が」

アルフレットの携帯電話が鳴った。
「誰だ?時空警察?」

ジュールからだった。

≪…強敵だよ。たぶん地球のTokiyoで感じた気配かもしれないよ≫
「!?おどすな」
≪気をつけた方がいい。敵は見えない攻撃を仕掛けてくる…≫
「時間を止める…とかか?」

≪たぶんそれをこえているよ。気がつかれない。いつ攻撃したのか。時間を止めるだけならできないはずだ。致命傷を痕跡を残さずターゲットに気がつかれず殺している…さらに厳重警固で完全なるバリアを素通りできる可能性。ちょっとふつうじゃできない≫
アルフレットはジュールの声に気圧された。
あのジュールが本気で警戒しているのがわかる。
ゴクっとつばを飲み込んだ。

≪緊急レベル最大規模の事態かもしれない。警戒しといたほうが無難だ≫

(俺でも危ない…!?)

≪僕らの調べじゃ、メリーサなんてバーラルレディの新米というようなニュアンスがある。バーラルレディはなぜかレベルラハムに頭が上がらない様子だ
今度の敵はレベルラハムでも首を垂れる相手なんじゃないかって…≫

「なに…!?」アルフレットは段々声が出なくなってきた。恐怖で緊張しているのがわかる。
≪昔の食玩の発想から思いついた解釈だけど≫
そうジュールはいっていた。



3


その後、ファジオとオーブリーは別々にロシアに到着していた。

ファジオはさんざんさがしまくったあげく、ロシア兵に案内されてカーターとワトソンのキャンプにたどりついた。

「カーターさん…?探しましたよ」
「あなたは…」
「ファジオです。パーカーさんに遣わされました」

ワトソンがいった。
「助かるよ。恩に着る。これで戦力が増えて楽になる」
ワトソンは心からホッとしていた。

「それでパズズとかいう…」
「みえない。隠れて暴れていないんだ」
「…」




4



アルフレットとアルセウスはまたラーメン屋でラーメンを喰っていた。
「まったく、あいつら(後続者)オレたちが働きすぎるから、自分たちはお客さんだと思うんだ」
「ふん。整えられているからな。自分たちはパラダイスで遊ぶだけだ」アルセウスがこしょうをかけながらいった。

「今までオラヶ池(意味不明)が広かったから気がつかなかったが、外部から換気扇やらバッテリーやらで仕事をくわえないと自分たちだけだと生態系が煮詰まるんだ。タクシードライバーやらされてさらに金むしられている気分だ」
「まったくだ。働かされてるこっちが金を取られている」
「だからだ、人間だれもつながろうとしない。自分一人で自給したほうが安全だ」
ラーメン屋の店長が「へい、らっしゃい!」といった。

アランがガラと戸をあけて入ってきた。
「やあ、ここにいるときいたから」

「なんだアランか…君が来ても何の解決にもならんな」アルフレットはラーメンを食べ終わってイスの背もたれによしかかった。

「そういうなって」



5


ウルフのところに三人で行くと、ウルフはイスにすわって目薬をさしていた。
「ああ、視神経が凝るって人まとめて神経疲労みたいでさまになるでしょ」ウルフはそういって濡れた目で瞬きをした。

「なに浸ってやがる」アルフレットはそういった。
「いやね、『私みんな大好き』みたいな少女漫画やると逃げていくんですよ。上がそれをやると」
「…あたりまえだろ」
「あれって、みんなを好きなんじゃなくて、みんなが自分に対して作業してくれるから好きなんですよ。それじゃだめだなって。自分がまず動いて手本でしょ」
アルセウスがいった。
「それもいいが、現実と根気よく戦うことだ。エジオンからアランが来た。すぐ弱音を吐くことになるだろうが、戦力にはなる」

青いスポーツタオルで顔をごしごしこする。
「それですよ、現実と日々闘うから力がつくんですよ」ウルフがいった。
アルセウスはつっ立ったままいう。
「反則にいそしむと、反則がくせになるうえ、退場が近付く」
「オラが池なんてそう簡単じゃないですよ」


アランはアルフレットたちとわかれ、診療所にはいった。
ジャイロダインは狭い。すぐ近くにある。

アリスタンダーのときの複雑骨折した腕がまだ痛い。

「ふーむ、電気かけますか」
電極を付けて、電流を流しマッサージする。

それから医師は無言でアランの腕を触って触診した。
もみもみアランの関節をいじっている。
「うーん、神経がしびれますか?」
「複雑骨折のあと水薬を飲んで癒したんで…まがって骨がくっついたんじゃないかと」
「こんどきたときレントゲン映してみましょう」

霧吹きで特別に調合した薬水をアランの関節に吹きかける。
シュシュ!




6


地球・ロシア北部・カーターのキャンプ

カーターは“巨人殺し”による火傷をおおうため、顔から体まで布で覆っていた。アラブ人というか仮面をかぶるようにくるまっている。

「ライオンソードをレーダーモードにして追跡してみる」

ソードを真上に向け、電波を飛ばす。

フォンフォンフォンと丸い電磁気の輪が広がり、煙のように散る
「気が衝突するか…」

反応した。
「いる…抵抗がある。電波の発生の段階から揺れが違う」
向かう波が反発する波、引き返す波とブツがある方角には方位磁石が反応するように電波の波の波形が異質になる。

「いくか…」

ワトソン、ファジオ、カーターは動いた。



7


三人が針葉樹林の森の中を進むと、スカルオーガも気がついた。

「ぐるあああ」
カーターがいった。「やはりな腕は再生していない」
ワトソンが汗を流しながらいった。「いや、幸運にといったほうがいいぞ」

「オレが」ファジオがむかった。

ファイティングカッターを抜き闘気を噴出した。

ブオオオー

カーターはライオンソードをスタンバイし、遠当てで援護する気だ。
「気をつけたまえー」ワトソンは心配そうにいった。

パワーストリング・イン

ガス

スカルオーガの胴を切りつける。
バッと血液が噴射する。

ファジオは一瞬返り血を警戒してスキができた。

ぐおおおっ

スカルオーガの大木のような一本の腕からメガトンパンチが飛ぶ。

ファジオは左手をかかげ、闘気をぶつけて勢いを殺そうとした。

ごあああっ!!

それでもパンチは勢いを弱めたがファジオに衝突した。

「まずいぞ、彼は鎧なしだ」顔を布をかぶって隠れたカーターはいった。

ファジオは口から血を流した。

「このくらいのダメージですんでラッキーだった」
スカルオーガは体重を乗せてメガトンパンチを二発連射してきた。
「はっ」

ファジオはすばやくかわす、二撃目もかわした。
だが、(反撃のチャンスがない、これが彼の限界か!)ワトソンはノドがカラカラになりそうだった。

「ム!?」
スカルオーガの手に大木を引き抜いたものが握られている。

ごう
投げつけてきた。

カーターがライオンショットを撃った。

ボガン!
ショットと衝突して破裂する!!!
ファジオはおちついて、ファイティングカッターではらう。

ファジオはアクセルをふかし、ぐおおおんと闘気を高める。

「おおお、スペシャルファイト!」
ものすごい勢いで回転し目がそれに追いつかない。
ワトソンとカーターは目をこすっていた。

みるとスカルオーガの腕がもう一本失われている。

「ガッ!グルウウウウ」

右の上の腕と左の下の腕が切れてなくなった。

ファジオは着地に失敗し、木と木の間でたおれていた。

「ファジオ!」
立ち上がるが、かなり息切れをしている。
「ハァハァやったか」


8


ステファノ、レイヤーが地球に向かう船の船内。

レイヤーはバルハルのある土地で生まれた。
彼女の両親は、父は若い時旅をしていたが、苦労して手に入れた金で惑星バルハルのどこかに農場を買いこみ、農夫をして死ぬまで畑の手入れをして暮らした。

結婚して農場を営み農夫を雇い入れ、作物を収穫すると冬が来る。
そんな人生で結婚後の人生を締めくくった。
レイヤーの兄が生まれ、妹としてレイヤーが生まれ、二人を育てる。

兄は青年になると、はじめは半分両親の仕事の手伝いをしていたが、両親が自分に任せるようになると、自分で農場経営をしているのと同じだということに気がつき、雇っていた農夫に畑を売り渡した。

父母はそのころには年を取って、田舎町の住みやすい土地に移住した。
蓄えた金はまんざらでもなくあったので暮らしには困らないだろうと思われた。
だが、レイヤーが成人するころに、はたと亡くなった。二人とも同じくらいの時期に亡くなった。

兄はでかい金が入るなら、大変な仕事でも引き受けると、うたい文句にして旅を始めた。
傭兵の仕事など、支払われる額は少ないが雇われたりもした。
財産家のボディーガードからドラゴン退治、さらに船に乗って宇宙を航海したりした。

そのころはレイヤーは女学生で学校に通っていた。
兄は体中に刀傷をこしらえて帰ってきた。
野蛮な冒険と戦争のような仕事で稼いで体が農夫の頃より大きくなっていた。

時空警察に入隊したいという願望も一時期あったが、バルハルは帝国ギズモンドとハーランドのにらみ合いで正常に緊張が一定に走るようになる。

自分が客で買い物をすると、道を踏みならしたように手慣れた企業でもトップや経営陣の中に入るとゴタゴタと人間臭い問題を抱えている。
自営業の農場経営をやっていたときと違わない問題まである。

雇った農夫どうしの小競り合いから、いさかい。
給料とはたらきのいざこざ。
レイヤーの兄は金を払って客としてのるときには、当たり前のことが当たり前に運ばれ、何の問題もないように紳士的に見える運搬船業が、自分が船長として船を転がすと、会社側も、船の中も客には見えないゴタゴタをかみ殺して、逐一運営されているのを知った。

普通の社員はリスクを負ってまで、交渉困難で難攻不落な問題を処理して高いポストを得たがらない。
あたりまえかもしれない。

高い金をもらえるなら引き受ける。
レイヤーの兄は船長として雇わられたりした。
「船長なんて、ただ操縦しておくりとどけるだけ」だろうか?

自分が客の側だとそう見えるが、接客など不愛想で苦手なレイヤーの兄も知らん顔をできないわ、操縦も半端な見習いのはずが指導までする羽目になり、会社側からとも交渉し、荷物を貿易のために積み下ろし、得意の戦闘もいろんな星でおこなってきた。

未到達の航海を軌道に乗せる仕事を成功させ、ひとやま当て、船を引退。
自分の船を買って、自分で航海をはじめる。
両親は亡くなり、残った肉親のレイヤーとふたり旅をし、モンスターと戦い、賞金を稼いだりした。



9


ステファノは考える。

絶対的な無敵など、どこか嘘だ。
そこまで上段者なら、自然周りの気流の流れでハンデがついたり、いる場所が違っていたりする。
土俵が違ったり、たとえばプロとアマはリングか違ってくる。
あるいは上からまとめる立場の人がいたとしても、部下という寸法からなら話しかけることができる。
まともにぶつかったなら跳ね返される相手でも…

そう社会は成り立っている。


レイヤーとステファナを乗せた船はロケットが噴射し、地球への道を加速させていた。



10


「腕は斬り落とした…だが、」カーターはじっと様子を見守る。

ファジオはボーンランスを取り端した。
ガシャ!

左に握ると右にカッターをかまえ、スカルオーガをうかがう。

ワトソンはチェンソードを密かにかまえた。

ファジオの汗がひいたら不利だ。
熱が鎮火しかかっている今のうちが最後のチャンスだ。

GO!

ボーンランスはオーガの顔をかすった。
雄たけびをあげてファジオは両手に持ち直し、ファイティングカッターをきめようとする!

ガッ
かすった!
オーガの爪もファジオの左手を切り裂いていた。

ズギャアア

「グッ!しまった」
片手がしびれてだらんと垂れる。

「もう左手は使えない!」

スカルオーガが牙を見せてニヤと笑う。

メガトンパンチ

闘気でまもった。が、体が割れるかというような波動を受けた。
「ごあああっ!?」

右手でカッターをもち、斬りかかる。
向こうの爪がのびる。

ガッ!

またしても相打ち!

お互い血風が舞い上がる。

「まずい、ぼくがうごくよ」ワトソンが汗を流しながら、いった。
「まて、私が…」カーターはライオンソードをにぎった。もうエクセレントソードは重くてふるえない。


そのとき、オーブリーが突風のようにつっこんできた。

スヌーカー!!
「がおう?!?」

「まにあった…カーターさんこいつが…」
よくみるとカーターか見分けがつかないが雰囲気と声がそうだった。
「オーブリー君…。そいつはスカルオーガ。たぶんパズズの仲間か子分だ」

「世界に数種類いるという、ゴクとマゴクの一種か…」

スカルオーガは歩が悪いとみたのか姿を消していた。


11


四人はキャンプで休んだ。

オーブリーは元気だが、ファジオの左手と体にかなりのダメージをおっていた。
「ホラ、買ってきた水薬だ」
カンテラに火を入れ、テントのパイプにかけて周囲を明るくする。
虫が明かりの周囲にまう。

骨太なデザインのロゴがはいった固形燃料に火をつけ、コンロセットの土台をおき、鍋をかける。
ミネラルウォーターを注いで、スープをつくった。

ファジオは腕と体の怪我に薬をかけた。
カーターも顔の覆いをはずした。
火傷がエドアールとオーブリーのときよりひどい。
水薬を頭からざぶとかけた。

ワトソンがスープをかき混ぜる。
「パンと塩辛いスープを飲んで元気をつけろよ」
「いただきます」

カーターはテントの中に四つん這いで入っていった。
なかでごそごそ、リュックの荷物の中から何か出している。
「年代物のワインだ。特別にこれを抜こう」

ガラスのグラスはない。
アルミのサバイバル用品にワインをドボドボあけた。
「パンにワインの味はしみる…」オーブリーはパンをかじりワインを飲んだ。

ファジオも血がとまったのを見て一口飲んだ。
「だいじょうぶだ、そのくらいで止血に害はない」オーブリーはわらってファジオの手にさわった。


ワトソンは高級そうなワインのビンと似合わないアルミカップをみていたが、草わらとワインは大自然のコラボをおこすなと無言で見ていた。