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2013年7月1日月曜日

坂道のお祭り


 時空小説連載一周年

※夏の小説祭り 


祭り



スジのない小説




1


電車に気軽に揺られて、ローカル線で旅歩き、とある町に降りる。
筆者の代理人の麦藁帽子をかぶったおじさんが。
無人駅に近い感じで、ひっそりとしている。

夏の日差しが傾いた時間ごろ。
日の差す明るいところと、影になりじめじめした駅のベンチが対立してみえる。
のんびりしていると、日が斜めからさしている。

優しい風が吹いて、ふわふわしている。
まだ、トンボではない季節でモンシロ蝶がひらひら泳いでいる。

駅から、お祭りの音の聞こえる方向に歩くと屋台の列が見えた。
坂道にやおら屋台が並ぶ。

古い一軒家が近所に並ぶ。
ご近所の人たちも、親せきも、遠くから来た人も、少し離れたとこからも
人が歩いている。

焼きそばの屋台のお兄さんが隣の屋台のおばはんに話しかけている。
「みて。やっぱり、坂だ。サラダ油が流れる、ホラ、ホラ」

坂道のりょうわきに並んで屋台がしめている。
ワタあめが一番端にある。
ふくろにマンガの絵がかいて、風船のように吊るされている。

「ここからが祭りの境界線だな。坂の一番しただ。石ころに目が行くのが祭りの端だ」
軽い坂道を登りながらみていく。

タコ焼きがガスコンロで焼いている。
ヨーヨーすくいを女の子がしている。水に浮かべたヨーヨーが涼しそうだ。

近所のひとたちは、いくら田舎とはいえ、祭りで見る顔は知らない人の顔だ。
知り合いに出くわすのはまれであった。

お面がうっている。
盆踊りの音楽が流れる。
すぐ止まった。
屋台の人が小型のラジカセでテープをながしていた。

お年寄りや、子供たち、おばはんが多い。
男性のサラリーマンはまだ参加していなさそうな時刻だ。

アスファルトの坂道はいつもと違うのだろう。
だんだん暗くなってくるが、やきとりのいぶす煙が色濃く見えてくる。
明るいと日の光に負けて目に見えにくい。
この時間帯からやけにおいしそうに、かっこよく見える。

真っ白い煙が水蒸気とともに香ばしいにおいを誘う。
豚串を買って喰う。
塩コショウが利いていて熱くてうまい。
串をゴミ入れに捨てて。
男の子がタコ焼きを買っている。
お母さんがお金を払っている。

金魚すくいは昼間キラキラ輝いているが、熱さで金魚が弱りそうに見える。
そのかわり、水を反射しながら泳いでいる赤いのや黒いのが涼しげに見える。

バランス(金属でできたモービルのような飾り)がくるくる回っている。
シーソーのようにカタコトいっている。
金属の彫刻模型を思い出させる。

浴衣を着た小学生たちが騒いでいる。

敵度な坂を漕いでいると、汗ばむ。
まだ気温は高い。

ラムネに赤いコーラのカン、サイダーの緑と隣の水ケースではビールが冷やしてある。
クーラーには氷みずが張られ、プリズムのようにコーラの赤やビールのギン色、黄色をにじませ、ゆらめかせている。
iPodの画面もプリズムみたいなせいで浮き出て見えるのだろうかと考えたりした。

ビールを一つ買う。
自分でクーラーの氷みずに手を入れて一本つかむ。
いくら夏でも冷たくて、素早い動きになる。
小カンを選んだが、ビールは慌てて飲もうとすると量がある。
急ぐ必要がないと気がつき、歩きだす。

トウモロコシ焼きをにおいだけいただく。
焼けて黒く焦げた様子がかえっておいしそうに見える。
網で焼いている。
坂をころがりそうにこんがりしている。
フランクフルトもとなりで焼けている。
ポテトの油が煮えていて、手際よく網で揚げている。

スマートボールのとなりにイスとテーブルがある。
座って飲みほし、カンを捨てる。

祭りのない時でもこの坂にはベンチがくくりつけてあって、子供が何人か集まるときがある。
だが、ほとんどの長い時間は人っ子一人歩かない。
そんなもんだ。
坂の道はひとがいないときは、まるで無人で昆虫か空の雲が無言で風に吹かれている。

花火セットが売られている。水鉄砲を買ってサービスで水をいれてもらった男の子が、わきの木に向かって発射している。
今度はもう一人が顔に向かって撃った。
「キャハキャハ」いいながら、はしゃいでTシャツがびしょ濡れになっていく。
おじさんは麦わら帽子をいじって、かけられないよう花火を買う。

厚紙のボードに古めかしい様な絵がかかれ、タテ細い花火がきれいに並んでいる。
線香花火、色がだんだん変わるもの、中国式の強いもの、ねずみ花火、先に色紙がついて、燃えやすくしてある。糸くずみたいに細いが、意外と火花がつよいもの、金紙、銀紙、カラフルな色に火薬がまかれている。

チャッカマンも手際よく売っている。

花火をやっている男の子と女の子の横で自分もやってみる。
木が生えて、うまくスペースができている。

水を入れたカンがいくつもある。
緑色の火飛沫が飛び出す。
木の棒の半分以上焼けて消える。
ジュッと水のカンにさしこむ。

色がかわって噴き出すのをつけると子供のこととおなじ、火薬の色が変化していく。
残りの花火を子供たちにあげて坂を降りる。