アランのトレーニングエスカレータ
1
メラネウスがアランにいった。
「しばらくぶりです、こんにちは。あなたの場合、自分より弱めの相手を複数相手にする方がパワーアップすると判断しました。私が。それで、そういう設定でトレーニングを開始します。まず私がテクニカル・ウェポンで見本を見せますので…」
エスカレータの乗口で説明する。
上りのエスカレーターに乗り、上のフロアにつく。
対して何もない空間だ。
ミイラ男が7、8体あらわれる。
メラネウスは右手にテクニカル・ウェポンをはめている。
肘まで武器の中にいれて、中のグリップを握る感じだ。
太くて厚いカッターとビームやマシンガンの銃がついていて、ソフトウェアを変えると攻撃が変わる。電子頭脳を搭載している。
さらに、中和バリア機能もあり、シールドのように頑丈で、接近戦にも使える。
メラネウスは無表情で右手を水平に持ち上げると、マシンガンを撃った。
パンパンパーン!!
「おおっ!」
ミイラの集団は銃弾で炸裂する。
なおもテクニカル・ウェポンを撃つ。
パァンパァン!
二体破壊されないで生き残ったミイラがおそってくる。
メラネウスは跳躍すると、カッターで頭から真っ二つにした。
ザシーィ
斜め前にいる最後の一体は、ビームを撃って迎撃した。
ジューゴゴゴゴゴゴオオオ
ボッ!
ミイラは火ダルマと化して崩れ落ちる。
「おおー、プロの仕事って感じだ」
アランは感心した。
「銃口のタイプを接続するとカスタマイズできるんですか」
「あとソフトウェアをアップして、いろんなタイプの銃になります。カッターも付け替え可能で、電磁剣も別売りに…。それでは、私は別の仕事がありますので、これで、何かあったら、私のモバイルフォンに電話してください」
そういって、メラネウスは下りのエスカレータを下りていった。
2
コインメタトリー―ゴールド・ウィンーサーベル・ブリング
「バイオソードの開発!?」
「バイオテクノロジーの技術を生かしたコンピュータとウェポンの開発プロジェクトが持ち上がった」
「志願してチームを組んでるのもいるが、気が向いたらレポートを社内プロジェクトボードにUPしてもいいらしい」
「貢献した研究員は表彰されるらしい」
「……」
コインメタトリー、エカルテ、コーヒーハウス
オーブリーが朝からコーヒーハウスに詰めかけている。
「コーヒーを飲む前に、新聞を広げて勉強としゃれこむぞ―」
何紙も新聞があるうち、好きなのを選んで、オーブリーはテーブルに広げた。
「なになに、ゴールド・ウィンでバイオソードの開発の計画…か、おもしろそうだ、まえのスマートコントロールアクスみたいに、展示会が開かれたら見に行くぞ~」
時空警察トレーニングエスカレータ
アランはさらに登りのエスカレータにのった。
「下りのエスカレータがない…」
さっきからそうだったが、さらに上に行くのしかない。
「とびおりるしかもどれない」
たぶん、最上階まで行かないと戻れない仕組みだった。
ミイラ男が4体現れる。
「よし、いくぞ」
ゴールドエクスカリバーをにぎる。
敵はうごきがのろい。
いつもならかわされるアランの剣が直撃する。
ドシ
ゴールドエクスカリバーの刃は意外と鈍い。頑丈にできているが、乾いた布の包帯に血のような体液が渇いてガサガサなミイラの体表に切れ味が悪かった。叩きつけているといった方がいい。アルフレットのようなオーラを剣に蓄積できる戦士や魔法剣をつかえる魔法騎士に有利で、アランのような腕力だけの戦士だと、棍棒のような武器になる。
敵は動きが遅いが、頑丈で一撃で死なない。
「見える。速い敵だと考える暇がないが、この角度だとどう剣が入るか、蹴りの位置がいいとか」
アランはミイラの腹に蹴りをぶち込んだ。
さらに、剣を右のミイラの頭部にぶち込む。
「どの角度がどういうタイミングか覚えられる!!」
3
エジオンーパーカーの基地
パーカーが新しいコンピュータをつくるといいだした。
「何をつくるんだパーカー。私は兵士だ。ビジネスマンのまねはできない」
アルセウスがいった。
「エジオンの民間企業に委託する」
昔のコンピュータはLSDライトが点滅するだけの表示機能だった。
モニターがない。今では画面が当たり前だが。
「観葉植物の様なインテリアをつくる」
クリスマスツリーのようなイルミネーションライトが点滅するコンピュータで、音楽をならせる。
「ありきたりだ。ステレオのツリーなだけだ」
アルセウスがいった。
「うーん。高性能合戦じゃなく斬新だが、荒削りでなんのやくにたつのかわからないような、新奇なものをつくる」
「元祖を開発か」
「エジオンは意外と苦手だ」
まず、つくりたいものの基礎イメージの基準を決めた。
1.表示能力に画面をつかわない。
2.新規である。
3.頭脳のコンピュータはハイテクでいい。
4.観葉植物のような、ペットのような。
「学習能力を電子頭脳で設定したい。頭脳ある植物機械のような」
「気を利かせる木だ」
パーカーが煙草に火をつけていった。
「たとえば、このコーヒールームに置いておくんだ。本物の植物の間に」
「で?」
「わたしたちのしゃべる言語を学習してリターンを返す」
「なるほど、勝手に音楽をかけたり」
「空気清浄機能もつける。そのほうが植物らしい」
「でも、パーカー、勝手に気を利かせる以上、時と場合によってはいらないお世話もするぞ」
「そのほうがいい、インテリアだ。快不快のイメージをもたせる」
1.
クリスマスツリーのライトの様なのが点滅で意思表示。
2.
空気清浄機能。
3.
音楽再生。気を利かせてストップ、リクエスト、オーダー。
4.
言語をあいまいながら理解するシステム。それをディスク、あるいはメモリに蓄積。
5.
植物なので会話はしない。
4
コインメタトリー、エカルテ、コーヒーハウス
オーブリーは暖炉の上のコーヒーポットからカップに注いで席に着いた。
コーヒーハウスでは、たばこの煙が目立つ。女性客はあまり入らなくなってきた。もっと綺麗な施設が増えた。
「イギリスにいたときと、だいぶ雰囲気が違ってきたな。王政復古か…」
ぼんやり、昔を思い出していると、壁の張り紙をはりかえてる人がいる。
仕事でインフォメーションや広告のチラシを張り替える仕事の人だ。
「どれどれ」
オーブリーは暇つぶしに新しいインフォをみた。
≪ラグナクロクで新型武器の開発展示会。テレポートソード≫
「テレポートソードか」
「いってみるの?」
声が聞こえた気がして、オーブリーは振り向いた。
だが、誰もいなかった。
時空警察トレーニングエスカレータ
アランはかなり体力を消耗したが、ミイラを4体倒した。
「殴られたのは二発だ」
上のエスカレーターに乗る。
「たばこ一本吸いてぇ…」
アランは20歳になってない。惑星によって喫煙の有効年齢が違う。
次のフロアでは獣人があらわれた。
かつて、パーカー、アルフレット、クラークが、エドガーとエカルテで戦闘した、あの凶暴な獣人間だった。
ただし、一匹だけだ。
バイオミノタウロス
調子にのったアランはくわえたばこで挑んだ。
手に斧を握っていないが、力が強そうだ。
「ぐるるるるる…」
アランは目見当で、エクスカリバーをふるった。
敵は腕でガードしたが、ダメージがあるはずだ。
5
地球―アメリカーオレゴン州
カーターとワトソンは演習問題をつくってみた。
問1.
残っている情報が、三角形、面積が60の図形を復元せよ。
「うーん。いろんな三角形ができるよ」
「パソコンでシュミレートすると、だいたい同じサイズのいろんな三角形に動いてるよ」
「不確定な情報があるからだ。復元定数Cみたいな」
問2.
二辺の内積が60、面積120の三角形を復元せよ。
「どうやって解く?ワトソン」
「…うーん。内積がマイナスでない時点で一つの角度が90°以下だよ。直角なら内積が0になる」
「うん、そうだ」
「なんなら、sinθの値かcosθの値と面積から復元できるか」
なぞがなぞをよぶ。
6
地球―オレゴン州―警察署
アルフレットが警察の売店で紙コップ入りのコーヒーを買っている。
「ああ、ひさしぶりだ、アメリカのコーヒー」
「イギリスにでも行ってたのかい!?アルフレット!こぼすんじゃないよ」
「ああ、わかってるよ。生活力あるよ、おばちゃん!」
「あさって、あんたの孫にいじめられたよ」
「まだ独身だよ」
アルフレットは自分の席に着いた
「ちょっと、アルフレット、無断欠勤!?それともまた研修?」
「ああ、国民の生活を全力で保護するための研修さ」
「そう、さぼらないで、仕事がたまってるから」
「おっと、カーターだ、彼に会いに来たんだった」
勤務後―アメリカンレストラン
ワトソンとカーターの三人であったが、二人とも何か考え込んでいる。
「ああ、アルフレット。色が黒くなったな」
「ほんとだ、警官というより、アマゾン上陸作戦に出てくる軍人だよ」
「そのくらい鍛えたさ」
「そうか…」
アメリカン料理とワトソンはトマトジュース、カーターはカリフォルニアワイン、アルフレットはオレンジジュースを頼んだ。
ワトソンがいった。
「アルフレット…お子様ランチみたいに、喰いながらオレンジジュースはやめろよ」
カーターは黙って考え込んでいる。
「なにいってやがる。氷が解けたとき薄まったオレンジがオレンジ公ウィリアムでもよろこぶぞ」
「数学はできるかい?」
「数学?算数の間違いだろ、理科の宿題なら解いたさ」
「…」
「…」
「そうだ、カーターに土産がある」
そういって、「アクアネスソード」と小声でつぶやくと、光って剣が出てきた。
シュシュルルルルパッ
「なんだその剣は」カーターは驚いて見てる。
「電池が切れたら、弱まるから気をつけろ。これは大神の世界じゃないと充電できないと思う。あるいは魔法が使えるやつか」
アルフレットはふとアウトソルジャーを思い出した。
「これは、いい。こしらえが高級そうだ」
ワトソンがストローをくわえながらいった。
「僕には土産がないのかよ」
「ないさ。アロエの切りはしでも持ってくるかい?」
7
地球―アメリカーオレゴン州―警察
ジリリリリリン
アルフレットのはす向かいの席の婦人警官が受け取る。
☎「ハイ、こちらオレゴン州立警察」
「モンスターの襲撃です」
「軍の管轄か警察の管轄か検討してから、対応します。協力ありがとうございます」
アルフレットが叫んだ。
「なにいってるんだ、国民の生活を…」
「警察の武器できかないモンスターは軍が管理するのよ」
アルフレットは飛び出した。
「カーター、来たか!」
「アルフレットは手をだすな!アクアネスソードの切れ味をためす!」
パワーモスラ 1体
カーターがライオンソードではなく、アクアネスソードをふる。
「巨大な蛾の怪獣か!直接切りつけるのはしばらくぶりだ」
ガリョ 1027
アルフレットは腰に手を当ててみている。
「ふーん。そんなもんだったか」
パワーモスラは口からビームをはいた。
ガー 98
「くっ、ライオンソードとちがって、接近しすぎた」
「喰らうなよカーター…」
ガリ 987
「電池が弱いのかな。一体にそんな剣か」
「いや、すごいぞアルフレット!ライオンソードの4倍以上の破壊力だ」
「使いすぎると電池が減るよ」
あとはライオンソードでパワーモスラをしとめた。
ライオンソードはソーラー電池やコンセントから充電できる。
「パワーで平和を守ったぞ」
8
アルフレットはオレゴン州のアパートで考えた。
「カーターのあのとき。たしかにアクアネスソードには光撃に対する防御能があるとみた…」
惑星イカルス 上空
アウトソルジャーが探索している。
「ここには、お宝がないのか…」
ケンとユキがレジスタンスのホームで寝ている。
「城か…」
そのとき、アルバートがやってきた。
「やあ」
「なんだ貴様…ウィークボゾン!」
アルバートは手のひらで受け止め消火した。
「やめよう。君に教えたいことがある」
「…なんだと!?」
アルバートは地球のカーターのアクアネスソードのことを教えた。
「君のそのウィークボゾンなら充電できると思う」
「アクアネスソードか…」
9
トレーニングエスカレーター
アランはバイオミノタウロスを見て考えた。
「敵度に知能があるな」
力いっぱい敵の耳元にゴールドエクスカリバーをたたきつけた。
ガオ
「ハイ、ありがとうございました!」
挑発しつつ距離を取る。
バイオミノタウロスは痛みと屈辱で怒りに燃え、エンジンがだんだんふかすように、血液が燃える。
「ウガアゥー!!!」
凶暴性をむきだしにし、前かがみに襲いかかる。
反対に落ち着いたアランは顔面に両手持ちで剣を落とす。
「ハッ!」
ドガガ
カウンターでもろに直撃し、バイオミノタウロスは手で顔をおさえている。
怒りで青ざめている。
「ガルルルルルウ」
口からよだれをダラダラたらし、獣の静まり返り方だ。
両手の爪をむき出してきりかかる。
「ガア」
アランは剣を投げつけた。
「ガ?」
ミノタウロスの口に剣が刺さる。
さらに、アランは蹴りを腹に入れ、剣をキャチし、敵をすり抜け、背後から頭に思いっきり叩き込んだ。
Б§☆★κ%!…
クラークたちでさえ、手を焼いた獣王が目を回して倒れている。
「野生のサルと違って、やわか…」
アランは心臓に剣を突き刺した。
目玉焼きの黄身にフォークをつきさしたみたいに粘液質の血液があふれだす。
アランはくわえた吸殻を死骸にのせて、次に向かった。
もはやバイオミノタウロスの死骸は肉か何かわからない残骸となりはてていた。
10
アウトソルジャーは建物のとんがりの屋根の上に片足でケンケンをして立っている。
フワ
カーターも目をつぶり、屋根に水平に構えている。
…シーン
「それが、アクアネスソードか。二挺しこんでるな」
「こっちはライオンソードだ」
「オレの剣は満月という刀だ。いくぞ」
「何が目的だ。盗賊から始まる国王か」
「その辺の野盗といっしょにするなよ」
アウトソルジャーは満月を抜刀し、横に構える。
「トウ」
ジャンプしきりかかる。
カーターは、動かず迎え撃つ。アクアネスソードをたてに構え、満月をはじこうとしている。
フワアア
ゆっくりとんでるかのように舞う。
だが、剣先は鋭く速い。
ギャラ κ
キン Λ
カーターは腕力で負けても、剣の速さでは負けなかった。
アウトソルジャーは違う屋根のとんがりに乗っかりふりむく。
「クッ、技量は互角か」
(次だ。力まかせで来る…)
一瞬陰にみえたが、今もう目の前にいる。
殺人狂剣 ズドドドド
カーターは跳躍して1m上空を舞っている。
(馬鹿力がアルフレットなみだ…もろに喰らったらもっていかれる)
カーターはわずかに傷を負っていた。
(クソ、ジンジンする。鎖カタビラでなんとか…)
スキができた、アウトソルジャーにアクアネスソードが斬り込む。
ブワワアーザシュ!!!χν
「一本取られたか、…威力は?」
742
「…」
満月の輝き
剣のひらめきが、まぶしいかのようにひらめく。
「スピード勝負か…動きをとらえるのが不可能な速さ。なら」
カーターは真正面から受け取った。
ずしい
止めたが、押されて、屋根から落ちた。
アウトソルジャーはすかさず、アクアネスソードをはじいて、カーターからもぎとると、壁に足をかけてジャンプし、とんがりに乗っかった。
「とったぞ、アクアネスソード」
カーターもライオンソードをぬくと、窓のさんを足下にジャンプし、打つ。
「ウィークボゾン」
5000
「な?光撃!!」
カーターは焼き焦げて、地面に落下した。
「ふん、悪い。じやあな」
アウトソルジャーは逃げた。