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2013年2月28日木曜日

ワンダフル・サリー



 

1


アメリカの億万長者の屋敷。
ハイスクールの女学生、サリーが長い廊下をあるいて階段を降りようとしたとき、牧師で慈善事業で孤児院を営んでいるおじ様にあった。牧師学校で講義もしている。
「ハイ、おじ様。わたし大学にいけるの?あたまいいからシカゴ大学とかいけるんだけど!?」
「サリー。ポケットから手を出しなさい~。それからガムを噛むのもやめて~。アメリカの大学はハイスクールと違って教科書が分厚い。今まで遊んでいた連中も大学からは本気を出す~。サリ~、頭がいいからといって君もうかうかしていると大学で日の目を見ない~」
「ん、気をつける。大学からはわたし一人暮らしさせてもらえるの?州から奨学金とれないだろうし、成績よくても。財産あるでしょ?うち」
「サリ~!?君は何のためにうちに来た~?そんな態度だと内申書にもキズがつく~ハーバードはお流れ~」
「別に、まずいことしてないし。それにシカゴ大学なんだけど、ハーバードのほうがいいの?」
「よく話を聞いていなかった~、すまない~。日曜日には教会にいきなさい~」
「わかれる友をば悲しむまじき、でしょ。ヨブ記とかイザヤ記とか?聖書なら暗記してるし」
「はて~?そんなの聖書にあっただろうか~」
「私以外にも家族が何人もいるんだから別にさびしくないでしょ。日曜にも教会に行くし」
「うぬぼれるなサリ~。心配しているのは何をしでかすか、わからないから~」


2


トイレの前でマリーとマイクが立ち話をしていた。
「あー、サリーはシカゴ大学をうけるらしい。俺たちは再来年だ。大学生になったら俺たちは寮に入ろう」
「いやよ。大学寮なんてバッチイわよ、屋敷の方が快適だし、家具も高級」
「あー、いや、マリー、ここにいると神父様もうるさいし、寮だと自由がある…」
サボテンの植木鉢をもったジムが二人に近付きいった。
「あー、マイク。そこをどいてくれないか?男子トイレにサボテンの鉢を飾りたいんだ」
マイクが男子トイレのドアを開けてなかに入れとマイクを促した。
「あー、ジム。それならここに置けよ。ここが一番そのサボテンが似合う」
「ああ、わかったよ、マイク。マリーはもういいのかい?」
「自動販売機置き場でコーラを飲みながら話すよ。じゃあなジム」
ふたりは話しながらドアを開けて去っていった。
サリーが階段をおりてきた。
「なあ、サリー。マイクが親切なのはわかる。だけどなんであんなに仕切りたがるんだ?」ジムがサリーに訊ねた。
「あんたのおつむがすっとろいからよ。そんなんで社会に出てから暮らしていけんの?」
「僕がひとよりワンテンポ遅いのは知っている。だけど好きでそうしているわけじゃない。日曜日に教会で説教を聴くことは欠かしたことがない。神父のおじ様もそのことは認めてくれている。宿題はよく忘れるけど…」
サリーは興味がなさそうにいった。
「マイクとケンカになっても止めないよ。わたし…、自分で責任をとりなよ。そのうちマリーに課題をやらされるようになるんじゃない?」
「ゴホッ!ゴホッ!なんだって!?サリー!君まで僕をゴホッ!」
「そのコーラも煙草もふかしてないのにせき込む癖が悪いんだよ。ぜんそくでもなしさ。あー、スプライトが飲みたくなった…」
「自動販売機置き場に新型の、ゴホッ!ゴホッ!スプライトがはいってた。サリーが好きそうなジュースだ。ゴホッ!相談に乗ってくれたお礼だ」


3


自動販売機置き場ではマイクとマリーが立ち話をしていた。
マイクはサリーにきがつくといった。
「あー、サリー。シカゴ行きは順調かい?」
「新型のスプライトってどれ?」
「そんなのなかったわよ」
マリーがいった。
「ジムがいってたんだけど…」
サリーがいうとマイクが答えた。
「あー、そりゃ、ジムに担がれたんだ。アハハハハ…傑作だ!サリーがあのジムにハハハ!」
「みぞおちに蹴りいれられたい!?マイク?」
「ハハハ…やめてくれ、再来年は俺たちもここを出て大学生だ、ハハ…」
「いい。ただのスプライトにする。どいて」


4


「サリ~、君はハイスクールを卒業したら大学に行かないでここ(孤児院)を手伝いなさい」
(はあ~!?)
「ん、いい。アーミー(アメリカ軍)に入る」
「まちなさあい~サリー、大学はマリファナから、かつあげ、放火、ガン事件なんでも危険がいっぱい。ここの方が安全さわやかー」

サリーが自動販売機置き場でジュースを飲んでいるとマイクが通りかかった。
「ハイ!サリー、シカゴでは仕送りは$いくらくらいになりそうだ。何しろうちの親父は億万長者だ。あまりけち臭いことを言うと株価が下がりかねない」
「卒業したら孤児院を手伝えって。マックでポテトを一生あげてるのが嫌だから必死に勉強したんだけどなー」
「正気かサリー!?何を飲んでいる?ラガナだ!カフェインがカフェの倍入っているぞ!茶に浮かされている!ここは日本じゃないアメリカだ!学歴社会だぞ!?一流大学に入れるのに?あえて高卒?日本見たいに実力があれば生きていける社会じゃないんだ」
「あんた。軍にはいれば」
「軍!?徴兵制度がないのがアメリカ社会の優れているところだ!」


5


日曜日、食堂での昼食の後、神父様はみんなにいった。
「サリーももうすぐハイスクールを卒業だ。そこで私から君たちにプレゼントがある。新約聖書マタイ伝大活字版~」
マイクがいった。
「いや、おじ様。聖書なら何冊も持っている…」
「グーテンベルグ版のほうがよろしいか~?」
「いや、そうじゃなく、新型炭酸飲料のメーカーを起業したいんだ。ベンチャーキャピタルみたいに金を出してくれ!」
ジムがいった。
「高校に通いながら炭酸飲料のメーカーをやります。サリーとマリーも。サリーがハイスクールを卒業したらスタートする予定です」
現役アメリカン億万長者にして現在は神父のおじ様はいった。
「よろしい。資金を提供しよう。その代り毎週日曜日には教会に説教を聴きに来なさい。君たちがいなくなったら、新しくここに子供たちがくるだろう。アーメン」

6


「ライト兄弟にちなんでジュースのネーミングはライトフライャーにしよう」ジムがいった。
「没!」サリーがいった。「ワンダフル・サリーにするの」
「なんなんだこの契約書は!?資金は潤沢だ。しかし、インターネットを事業に一切使わないこと?なんのために!?今の時代、ネットで販促も禁止らしい」
マイクが怒鳴った。
「ただの嫌がらせよ。何考えてるのかわからない親父だもの」サリーがいった。
「起業しないで資金だけで生活したほうがよくなくない?それだけで一生、金持ちの生活よ?」
「まず、3流の飲料メーカーを買収だ!それだけの資金がある」マイクがいった。
「それも禁止事項にふくまれているよ」ジムがいった。
「もういい、日本かフランスに四人でタカトビしょう」マイクがいった。





7


「もうあきらめた~?君たちにはこの家が一番にあっている~」
(チッ!クソ親父)
ハイスクールを卒業したサリーは屋敷で適当に家事を手伝ったり、シスター見習いをさせられたりしていた。

自動販売機置き場にジムがとおりかかった。
「よう!サリー、学校に行かなくて楽でいいな。うらやましいよ」
「ケンカ売ってんの?サル!」
「シスターの修行は?」
「尼僧院ものの映画でもみておくんだった…。ねぇ?ジュースってどうやって開発すると思う?スィーツを作るみたいにいかないの?コーラとかスポーツドリンクとか?」
「いい質問だ、サリー。僕の学校のサークルに文化研究会がある。そこでこんな話があった。大昔、飢饉の時、なぜ人は海へいかなかったのか?アメリカは人工国家だ。しかし、イギリスとか、島国なら餓えたら海へ行けばまずくても喰いもんが、魚やら貝やら海藻やらカニやらいる。それに海水をそのまま鍋で沸かすとおいしいスープのはずだ。ミネラル塩分が完璧だ。それなのにゲルマン人の大移動は歴史にのってるが、飢饉のとき海への大移動がなぜなかったのか…」
「話が長いー…スプライトよりおいしい“ワンダフル・サリー”はどうやって作るの?」
「そこまでは僕にもわからないー。宿題があるんだそれじゃあ」
「ちょっと!ここの自販機に私のジュースがはいってたら買う?」
「あー、飲みたい時もあるのかもー」




8


夜の7時半。屋敷の廊下をあるいていたマイクを手招く影が見えた。みるとサリーが自動販売機置き場から手招いている。マイクはビビりながら、自販機置き場のベンチに腰かけた
サリーはコインを自動販売機置にいれボタンを選びながらいった。
「コーラ?スプライト?ガスなしのコーヒーがいい?」サリーがいった。
「おごってくれるなんて珍しいじゃないかサリー。ハハ…ロトくじで当選した厄おとしとかかい?とりあえずガス抜きのスポーツドリンク。ハハ…夜だし、カフェインはまずい、遅刻すると単位を落とす…」
「あんた学校やめない?」
「ハハ…親父は男は大学にやるっていうんだ。よしてくれ、また、ジュースを開発するとか言い出すんだろ。あーそれからマリーも大学に行く許可がでた。サリーは素行が悪いからシスターにするとかいってたな。ハハ…」
「ふーん。ホイ、スポーツドリンク。冷たいよ」
「ハハ…ああ、サンキュー…――ベリーマッチ!!」
「それじゃ、大学で食品化学とか加工学とか勉強してきて」
「いあや、理工学でもバイオテクノロジーを専攻したいんだ。ハハ…」
「ハイスクールを卒業前に全身骨折して入院生活とかどう?」
「ハハ…いやハハハ…これでも丈夫なんだ、中国拳法とか習ってたサリーでも…」


9


「フットボールの試合をTVで見ながらオレンジジュースを飲むか…」
ジムが自動販売機置き場に行くと、サリーが中身の入った紙コップを渡していった。
「ホイ。毎度、開発コード:ワンダフルA。おいしいよ」
「いや、サリー、アメフトだ。男にとってアメフトの試合がどんなに大切か、君も知っておいた方がいい…」
「特別サービス。感想を述べると初回無料!」
「なあ、サリー、君はせっかく美人なんだから武力で脅すのは控えた方がいい」
「いいから飲む」
「ガホァツ!!サリー!栄養ドリンクは砂糖でひたすら味をごまかすんだ。ストローがなきゃ飲めない、カフェインがモロだ!もういいだろ、オレンジジュースを買わせてくれ」
「ふーん。オレンジか…すなおにフルーツから攻めるか…」


10


「開発コードワンダフルBC」サリーはいった。「Bはオレンジジュースにカフェィンと炭酸を加えたもの。Cはレモンがベース…二人とも飲んでみて」
マイクがいった。
「サリー、カフェインは州によっちゃ劇薬指定のはずだ。この州ではどうだったのか…よく買えたな、粉末のカフェインなんて薬局で買ってきたのか?」
ジムがいった。
「カクテルみたいだ。この間よりはうまそうな匂いー。うん、炭酸オレンジって感じだ。カフェインの苦みはマイルドだね」
マイクがいった。
「だけど、ありきたりだ。飲める代わりに特別じゃない」
「そう、そんな感じ」ジムがいった。
「ワンダフルじゃないわけ?」
「まあ、そう」
「ふーん。それじゃミルクセーキを作ってみる」

11


ジム、マリー、マイクの三人がロビーのソファに腰掛けながら話していた。
マリーがいった。「ミハエルが家に遊びにこない!?」
ジムがいった。「彼はぼくらのハイスクールのヒーローだぞ、バスケじゃ州大会までいきそうな勢いだ。彼が来てくれないなんて…」
マイクが怒鳴った。「サリーだ!彼女がいるから来たくないそうだ!前に家にきたとき、サリーは庭のコートで、彼と勝負した!ミハエルに勝ちやがったんだ、バスケで!フリースローだから波が出る、1on1なら負けてなかったが彼の捨て台詞だ。年上とはいえ女にバスケで負けたのが相当悔しいらしい」
「サリーはいつもやりすぎなんだ!バスケのエースに勝な!うちで」ジムがいった。
1on1の勝負を持ちかけたら!?エースなんだし?」マリーがいった。
「バカをいうな!サリーだぞ!?ホントにまぐれ勝ちでもしたらおしまいだ。手加減を知らないんだあいつは」マイクがいった。
「ミハエルは勝って当たり前で、何の得もないし、負けたら大恥だってこと」ジムがいった。
「素人相手の勝負なんて乗ってこないってこと…」マリーがいった。
「サリーもな。そう簡単には…」

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自動販売機置き場でスプライトを飲んでいるサリーにマリーがいった。
「サリー、シスターの修行は…」
「それ以上言ったら殺すよ…」
「あー、ご機嫌いかが…」
「良くも悪くも…あんたこそどうなのさ」
「幸せかしらね」
「自分で今が幸せだと思えば幸せだし、なっとくいかなきゃ不幸だと感じる。納得したもん勝ちだね。だるけりゃ、刺激がいる。うまくいっているものを壊すのは無価値だし、一番いいのが努力することだ。努力しているのに自分がタルイなんて、行動が足りない証拠だよ。ホントに努力していりゃ充実感がある」
「シスターの修行ってそんなに…」
「ダ――――ッ!!、それをいわない!」
「でも、スプライトひと缶でそんなに幸せなんてうらやましいわね、サリー」
「ブッ!誰もそんなこといっちゃいないよ。わたしもあんたと、どっこいだよ。みりゃわかるだろ!?」
「まーそうだけど」(苦渋に満ちてるのかと思ってたけど?)


13


マイク達のハイスクール。彼ら3人は2年生だ。
「やあ、ミハエル…話があるんだ……」マイクは話しかけた。
「マイクか、屋敷に遊びに来いっていうんだろ。うらやましいよ、億万長者だ、君たちのお父さんは。なにしろ庭にバスケのコートだ。それにあのサニーっていう女の子、あれは君のお父さんの愛人だろ!?流石に金持ちの愛人だけあって美人だ。フリースローは事故だ。確率の問題なんだ、気にしていないさ」
「いやあの、サリーは親父の愛人じゃない。俺達の姉貴だ。俺たちは孤児なんだ。アーノルド坊やみたいなものなんだ。つまり養子だ」
「嘘をつかなくてもいいよ。ただ、あのサリーにはまるとメキシコ湾に沈むことになる…それだけは怖い」
「いや、親父はマフィアじゃない…それにサリーはシスターの見習いでミハエルが来る日は家にいないよ」
「月から土曜までシスターの見習いかい?」
「いや、日曜日のミサの時間帯だけだ。あとは自宅学習で聖書を暗記することになっているらしい。それに家には最新のモバイルがある」
「アメリカの映画じゃなぜか誰もモバイルを使わない…農場経営とかが主流だ」
「文学小説のうけうりだからさ」
OK日曜日だな」



(2011.1.23.  未完)