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2013年2月27日水曜日

ザ・グレートシティのトレーニング




ザ・グレートティのトレーング



1


アランがモバイルの通知をみると、時空警察への申込はコンビニかネット、郵便所で申し込める、とある。フロントは混雑をおそれて申し込めない。

「なるほど、フロントで往生すると、客困るもんな」
アランはエレベータをおりて、コンビニで申し込んだ。
一番安い部屋を借りたが、手持ち資金が心配だった。
エジオンのアランアート会場の入場者数×10コインの収入が毎日エジオンからアランの口座に振り込まれる。だが、客が少ないと途絶える。パーカーがそうしてくれた。それとあと、軍人としての給料も毎月はいる。

店員にいわれた「3日か後の午後と訂正されました」
「ああ、わかりました…」
ついでにビールとつまみを買った。
(そういや、モバイルの通知には明日となってたな)
大組織のサガか、提出した書類が受理されたか、たらいまわしにされているか不安になる。おもわず、カフカの「城」をおもいだした。

部屋に戻り、缶ビールを開け、モバイルをみる。
「お、エジオンで快調に敵を粉砕か。心配いらなそうだ」
クラークのSNSをみてみるとアルフレットが修行にとある。
「オレと同じか…」



2

グレートシティの一角のホテル。
アランは夕食のため、自室をでた。
ホテル内のレストランで食事をしていると、隣のテーブルの40位の男性と20代後半くらいの女性の会話が聞こえた。

「ねえ、ロクノール。明日はグレートシティのどこにいくの?」
「グレートシティは広いからな。水族館がある。海を見たことがあるか」
「映画でしかないわ」
「グレートシティのエリアには海だけの小衛星がある。水族館でいろんな魚がみられるぞ」
「楽しみだわ」

アランはレストランの食事を食べながら考えた。
(ロクノール?か…)

自室に戻り、ネット閲覧ソフトを起動する。
窓ガラス全体がモニターになる。
普段はガラス窓にも、遮光カーテンにもなるが、ソフトウェアを起動すると全体がモニターになる仕組みだ。
「ロクノール…」
SNSにあった。
≪妻とグレートシティに旅行に行く予定です≫
「あ。少し前だ。今がそれか…」




3



アルフレットは強烈な冷風をかんじた。
「うう…、今までのブリザード系の攻撃と違って、極寒の寒さだ。ひもじいような、思考も停止する…」

バリアでガードしたが、凍りつくような威圧感にとらえられた。

蝮とムカデの姿の上に、半透明の幻影のように人型のバーラルレディが浮かび上がる。
≪さあ、わたしにとどめを刺しなさい。私が死ねばあなたは助かるんでしょう?≫
「な、なに?」
≪生きることは争い。犠牲になるものと、高ぶるもの≫
アルフレットの頭は二重に混乱した。
寒さと、…
(食物連鎖、動物は喰うものと喰われるもの。経済もゼロサムゲーム…限られたパイの奪い合い。正義は…盗賊と死刑どっちが悪い!?)

アルフレットの心にスキができた。
人形のバーラルレディの手にバーラルアクスが握られている。
「あっ!?」
と、思う間に、投げつけた斧が、アルフレットの腹に突き刺さる。
「ぐあっ!!油断した…」

アルフレットの腹から血が滴る。
いつの間にか辺りは一面の雪がおおっている。
「白雪姫みたいだな…」
真っ白い雪に自分の赤い血がしたたるのをみてアルフレットはいった。

「あははははは…あまちゃんの坊や!極寒の世界で生きることの厳しさを教えてあげるわ。ハハハハ」

「ああ¨。僕は警察だ。人民の生活を全力で保護する!」
バーラルレディはまるで蝮の胴体の上に女人の体がのり、ムカデの足が機械的に動いて這いまわるかに見える。
さらに、毒気をもうもうはきちらす。

アルフレットは蝮の口にアウトセーバーをつっこんだ。
まるで、シナの大道芸者がサーベルを飲み込む芸をみせるように。
「とどめだ。サツとしての任務を遂行する」
アルフレットは剣にオーラを流して、バーラルレディに流し込んだ。

バリバリバリバリ!

ドガーン!
バーラルレディはくずれだした。
まるで線香の燃え尽きた部分が灰になって崩れるかのように…

あたりは元のジュラ紀の地球の大地だった。



4



「バトルハウスに行きたいが金が惜しい。それにあのテクニカルウェポンが欲しいし…」
アランはグレートシティの石作りの歩道をあるいてホテルに戻ろうとした。
川が流れて、橋が入り組んでいる。
見るとガラの悪い男が突っ立っている。
(ちっ…ガラの悪い…サツの街で。女づれでなくてよかった…)
通り過ぎようとすると、話しかけてきた。

「まちな、アンちゃん。大方、トレーニングエスカレータ―志望にみえるが…オレもそうだ。お互い順番待ちの身。ここは金をかけずにファイトしないか?」
本場のストリートファイターといった感じがする。
「…確かにな…悪くない。勝負してみるか…腕試しの前菜(オードブル)だ」
「そうこなくちゃな。アンちゃん。銃剣はなしだぜ」
そういってニャと笑う顔は悪辣だった。

相手はおおぶりで拳を振るってくる。
「!おっと!」
上半身をのけぞらせてアランはかわす。
反撃を…と考えるがスキがない。反対にもう二三発撃ってくる。
ボン、ボン
よけるのが苦しい。腕でガードして痛めた。
今度こそ!と思うが、器用に蹴りが首の位置に来ている。
(クッ!?たんなるチンピラのストリートファイターでこんなに強いのかよ!)
「ぐげあ?!」
ノドにけりが突き刺さりそうになる。が、当たるくらいにはよけられた。
そのあとのスキ。

ドーン!

アランのパンチは相手の胸をつらぬく。
(おし…
アランは油断した。
「はああ!」
相手は頭突きをアランに喰わせ!乱打を放り込んでくる。
(クソ…オレと同じガタイにほんのり脂肪がトッピングした体格なのに)
アランは苦しくなってくる。
鼻が熱い。
みると鼻血がダラダラたれてる…手のひらで抑えているが、生暖かい。
相手は疲れたのか立ったまま休んでる。

相手の男は考えていた。(まだやる気かよ…)
アランは突進した。
アランは感覚でアッパーをうった。
「同じストリートファイター上がりの戦士だ」
「がは!!
見事命中した。
「アンちゃん。通行人が通報したりしたら、お互いエスカレータ―は御しゃかだ!ここらで勝負を決めようぜ」
相手は渾身のストレートだ!
「おおお、くたばれ!!ゴールド・ウィンのストリートファイターをなめるな」


―頭がガンガンする。
互いの拳はクロスして入っていた。

TVカメラがガクガク揺れるように視界が揺れる。
痛くなくなってきたが、グワングワン世界が揺れる…

気がつくと相手の男はいなくなっていた。
「くそ…路上に捨てていきやがった」
アランはホテルに向かってトボトボ歩いた。よれよれだった。




5


アルフレットは地面に生えているアロエをもいで傷口に塗った。
「あーいてて、しばらく休めば傷はふさがる」

ふと、ピラミットをみた。
「お宝でもあるのかな…」

エジプトのピラミットなどにくらべ、小さい。
入口は狭く、やっとくぐった。
中は狭いかまくらのようだった。
「なにもないか…」
少しがっかりして、外に出る。
呼び出してないのにソードがニゥーンと現れた。
アウトセーバーではなかった。
アクアネスソードが光っている。
「ははあ、ピラミットか…充電されてる。魔法の力が蓄積されて再生してる」
だが、自分が扱える剣でないと戦士の直感がいっている。
「クラークもだ、奴も違うな」
ふと、カーターを思い出した。
ライオンソードは彼にゆずった。
「そうだ、カーターだ!やつがつかえそうだ」



6


カーター、アルセウス、ワトソンの三名であらかたの巨人を倒した。
アルセウスがいった。
「ワトソンさん。文民にみえましたが、できますな」
「私は若いようで、中年です。この歳になるといろんな得意技をもっている。あなたは、お若いがこれからです」

カーターが巨人の死体を軍靴で蹴りながらいった。
「パーカーさん…巨人の死体をどうしますか」

ワトソンが最後の一体にジェットソードのエンジンをふかして、殴りつけた。
ガン

カーターの通信機器にパーカーの声が流れる。
「協力ありがとう。宇宙空間に捨てる。食肉バクテリアをたらふく体内に流し込んで」

そのとき、空が暗くなった。
ヒューン、ドン


巨大なガイロスに似た肉体のタコの様なのが現れた。
カーターはいった。
「なんだ?誰かわかるか。なんだ」
ワトソンがいった。
「クトゥルフ…そんなかんじがする」
パーカーが司令室でいった。
「仮想キングダゴンだ!あれに似てる。そうかクトゥルフか」
「…」

カーターが叫んだ。
「恐ろしい力を感じるぞ。ワトソン!クトゥルフとはなんだ」
ワトソンが汗をかきながら眼鏡をなおした。
「ラグクラフトの創作なのか、伝承がイスラエルあたりの民族かカナン地方にのこってるのかわからない。この漫画小説の作者はラグクラフトに頭が上がらない。パクっているからだ。(第一話参照)ダゴンとクトゥルフの関係もラグクラフトにきかないと…私はそこまで全集に精通していない…」

パーカーは隣の席に座っているレイチェルモンドにきいた。
「レイチェルモンド!どうなんだ?」
「わたしにも…ダゴンは神ですが…クトゥルフは我々のエリアから遠い異世界の主だと」
パーカーは軍事用のサイトにアクセスした。
≪ガー;アカウント名エジオンの統率者:パーカー氏;時空警察総合軍事コンピュータ;リトルにアクセスします≫
ATMのアナウンスのような、ゆっくりした女性の合成音がしゃべる。

CIAのホームページかアメリカペンタゴンのホームページにアクセスするかのようだった。


≪詳細情報不明;キングダゴンの亜種?アンシャルとキシャル以外の異世界、45次元の世界。空間次元だけが極度に多い世界の神でありロード;クトゥルフの可能性≫

紙テープに印刷されてでてきた。

「空間次元が多いと?」
「百科事典で見ると…モナド(基礎単子)がふれあわなくなると。つまり、スカラーだと幅がないから量はふれあっている」
「…」
「二次元だと、無限に長い直線は並行でない限り必ず交わる」
「!三次元だと」
「XYZの座標があるため、並行でない二つの直線が交わらない」
「とすると?」
「衝突がない、見えない触れ合わない、化学反応など冷え切っている」

ワトソンが補足した。
「つまり、我々の次元と生命現象が全く違うということさ。広いが狭い世界。かさばっているのに触れない45次元空間だ。ダイヤモンドの粒が複雑にきらめくように、すぐそこにいるのに触れない。一階は広いフロアだけど、二階はエスカレーターで直線距離が短い世界だ」

カーターが宙返りライオンソードをふる。
ザク!ザグ!

「…」
ワトソンが深刻な顔をして、カーターをみまもる。
「円谷のメトロン星人に似てるよ…異次元の神様は」



7


メラネウスに会う日が来た。
午後になり、モバイルに送られてきたマップは、このホテルと建物がつながって、そのまま時空警察の所に入れるが、建物内部のマップは複雑すぎて、まようだろう。
「いったん一階の正面玄関から外に出て歩いていったほうが確実だ」

巨大な建築物はまるで迷路のようでアランは煙にまかれた気分だ。
「大組織にのみこまれるきぶんだ」

エスカレーターで一階のロビーにでて、さらに玄関を出る。
外といっても、建物が入り組み、大迷路だ。

マップを頼りに時空警察の建物の入口の一つを見つけた。
「わかりにくいくらい小さい入口だな」
中に入ると、郵便所がよこについてる。
小階段を上ると喫茶店があるらしい。看板がある。
エレベーターで指定の階に上がる。

廊下が狭く圧迫感があるが、人がほとんどいなくて、長い廊下がある。
いろんなドアがあり、それぞれ仕事やなにか、してるらしかった。

無機質だが、清潔な感じのフロアがあり、受付がいる。
アランがたずねると、横の端末をしめした。
そして、いそいそと、カウンターからでてどこかへいってしまった。
静かな空気が流れている。病院の待合室よりまだ、姿勢がよくなる。空気が無軌道な動きを静止している。
(こんなところで無茶はできん…)
モバイルのコードをバーコードで入力すると、≪入出番号457
の番号が与えられた。
アランが自分の番が来て入ると、広い室内にメラネウスがたっている。

「エリア管理官のメラネウスです。アランさん…トレーニングエスカレータの申込ですが…ほう。ゴールドエクスカリバーを装備しておられる」

アランは答えた。
「はい、あのエジオンのパーカー氏の推薦で」
「うむ」
メラネウスはチラと机の書類をめくって見た。

「あいにくですが、順番を待っている方が大勢います。今の予定だと一か月順番を待たないと…」
「一か月…それだと滞在費が不安ですが」
「ふむ。お仕事は」
「エジオンのソルジャーとあと、我流のアートを」
「そういえば、画展をひらく画商のかたがいますが、とりあってみてみたらどうでしょう」
そういって、リモコンをいじると、窓のモニターに画面がでた。
「詳しくはホテルにもどってネットで検索してみてください。画商のボラールさんというようです。ここの近所です」
印刷したウエブの1ページをわたされた。
「はあ、ありがとうございます」
「申込みはこちらでしておきます。連絡はモバイルのアドレスに」
そういって、メラネウスはなにかボタンをおしているようすだった。
「…」
「それじゃ、そういうことで」
「はい」

アランは帰り、(大組織という感じだ。エジオンでは統率者のパーカーがすぐそこにいるから、世界が狭く感じた。ここは無限の広さに感じる)

自分には無縁のような、よくわからないショップがならんだ建物を横切り、エスカレーターにのる。

アランは喫茶店にはいってみた。
「後一か月か…」

少し離れたカウンターにジュールがカプチーノを飲んでいた。
アランはジュールを知らない。

ジュールは誰かと話している。
「ぼくはアンシャルとキシャルは海幸彦と山幸彦の話が絡んでいると思っているんだ。似た話がアラビアンナイトの金剛王子にある。なんと遠くの異国にシーンとマシーンという国が出てくるんだ。何となく似てる。ゴロとか。アンシャルとキシャルの対策任務にあてられて古文書をひっくり返しているのさ」

アランは何を言ってるのかわからなかったがジュールを見て、自分もカプチーノを注文した。そしてもらってきた、ウエブの印刷物をみた。




8


カーターのうった刃はいくつかすどうりした。
さらに、一部が反射するようにか、カーターに跳ね返ってくる。
「ぐ」

ワトソンがいう。
「カーター大丈夫か?やつは簡単じゃないよ」
「大丈夫だ。動脈は切れてない」

アルセウスがいった。
「どうする。ライト正宗で楯つける相手でないのがわかる」

クトゥルフは鈍く光る、エナジーボールをばらまくかのようにうってきた。

「しまった。電磁剣で受けるとショートする。耐熱剣のアランがいない」
アルセウスがよけながらいう。
ワトソンもいった。
「機械剣もおなじだよ」
カーターがエナジーボールをくらった。
「があっ!できるだけかわせ!一発で致命的だ」



9



アランはホテル内のレストランにいった。
一人なのに四人掛けのテーブルを使うと悪いので、テラス席にすわった。
窓際にカウンターが楕円になったような感じだ。

アランはパーカーたちにあうまえ、学校を卒業したばかりだった。当然両親と暮らしていた。それくらい若い。
違うマンガでいう、高校生バトラーみたいな、不良マンガの主人公みたいなキャラだったが、プロのソルジャーや軍隊、モンスターの中に入るとまるで通用しない。

エジオンでもコインでも、働いてからまた、学校に入りなおす人が多くいる。
専門的な能力があると、稼ぎが違ってくる。
なかには生涯学生で終わる人もいる。
ソフトウェアなどの作品をつくり稼いだが、また医学を目指す人もいる。
稼げるくらい技能を会得するため学校に通う人もいる。
地球だと小中高大とか、ドイツだとギムナジウムだとか、学歴に目安があるが、ここらの星ではない。(大学そのものはコインにある)いろんな駅を渡り歩いて、最終駅(最終学歴)を自分で決める感じだ。習い事をプロになるまで通い続ける感覚だ。
細かい学校がいくつもあるので、特定の技能が学べる。
コインの大学はプラトンとかアリストテレスの大学みたいな雰囲気である。
アカデミアという面持ちだ。

結局パーカーの星でソルジャーとして働くことになって、上出来であった。

鍋が出てきた。一人分用の土鍋で、ふたを開けるとぐらぐら沸騰している。
アランはおいしく食べた。

夜になると、窓から都市世界の夜景が見える。
ビルの頂上から、灯台のような、明かりが点滅している。



10



アルフレットはジォヴェの世界を歩き続けた。
「とりあえず、レベル200くらいめざすかな」

地平線が見える、単純な世界だ。
樹木しか目にはいらない。

「さっきのダブルボディは均等に肉体を分けたが、こんどは剣(アウトセーバー)とオーラに役割分担させて見よう」

ふと、見あげるほどの巨人がいるのに気がついた。
山に向かって歩いても近くならない感じだ。
矛盾しているが、巨人の足元に自分がいた。
「はっ!?」

アトラスバイキング

「…」

あまりの巨大さだった。今までの巨人とは大きさが違う。
雲にまで顔が突っ込んでいる。
口元がケチくさそうにへの字にまがっている。
真っ白いひげを蓄えている。
目元は雲に隠れて見えない。

アルフレットはいった。
「お手あげだ。勝てるわけない。その巨大さじゃ」
「…」

半分蜃気楼のように見える。
無言でアトラスバイキングは歩いていった。

「やれやれ、レベル500くらいにならなきゃ、大神の世界で通用しないぞ」



11


アランは考えた。
エジオンでは中核にいるパーカーがすぐそばにいるため、世界が狭く感じた。ここ、時空警察のグレートシティではキツネにつままれたように広大に感じる。巨大組織のはじっこ。複雑に入り組んだ広大な都市世界。

スマホやパソコンもそうだ。
ノイマン型コンピュータである以上、ソフトウェアとデータが広大さのすべてだ。
初めて使うコンピュータを起動して、画面の中の広がる世界を感じる。
だがあれは、すべてソフトウェアだ。
だが、広く感じる。
コンピュータゲームも容量だけではないが、バイトがでかいほど広いだろう。
全部ソフトを買わないと広がらないコンピュータは金にかんして省エネかもしれないが、迷路のような広さを感じない。
買って、おののくのはソフトウェアの広さも一部の要素だ。

ネット、インターネットは、広いようで煮詰まる。
巨大なクモの巣なのに。
普段、見ているサイトとつながる周囲しか行き来しにくいからだ。
遠いページ群を見つけるのに、苦労する。
船にのらないと外国に行けないみたいに、いつもの土地をみることになる。

鏡の中の世界が広大に感じる。
だが、中身が入っていないパソコンは奥行きが狭く感じる。
買うと金がかかるが、初めてモバイルを手にした感動は奥行きの広さだった。

地球のアップルのiPod等々など、画面の奥行きの広さをインターネットのiTunesストアに求めてるのかもしれない。
あそこを探索すると広がるよと…

DOSの世界のように、原初から組み立てるのが好きなコンピュータファンもいる。初期のコンピュータマニアたちのような。

カオスの世界が出発点のような。

クトゥルフとかそのDOSの世界の住人のような感じなのかもしれない。



昔々 日本

安芸之介は正月に冬桜の木の下、ムシロをひろげて、酒を飲んでいた。
女が足をくずしてすわっている。
重箱のおかずをたべ、白酒をおちょこで飲んでいた。
ややしばらくして、眠くなった…
女はおしゃべりして笑っている。
空は冬の青さだ。
気が遠くなるような。
「眠くなったから少し寝る…」
そういって、腕枕でムシロの上でいびきをかいた。


カニかタコかイカのような妖怪がみえる。
クトゥルフだった。

万華鏡をのぞいたように、異次元が見える。
安芸之介は夢を見てると感ずる。

西洋の武者のような若者が剣をもって斬り合っている。

カーターがいった。
「このぐらいで、取り乱すほどやわじゃない。面白い勝負になってきた」

ワトソンが苦い顔をしていった。
「酒でも飲んだか?カーター。ライオンソードがいうことをきかない相手だぞ」
あいてのエナジーボールを後ろにかわして、しゃがみ込む。
ズドン!

カーターがいった。
「異次元の神をいけどる」



12


アランは申し込んだアートギャラリーをおとずれる。
予定は午後三時からだが、正午前にホテルを出てしまった。
ふところがさみしいと、落ち着かないので、思わず飛び出てしまった。

アートギャラリーがテナントで入っている多目的ホールは、意外と近かった。
「なんだここか」

中にはいらず、昼食をどこにするか考えた。
グレートシティをぶらぶらしてみる。
天気がよく、鳥の鳴き声が心地よい。

この大都市にしては、古臭いデパート様の建物がある。
アランは思わず入って見た。
ファミレスがある。
「ゴールド・ウィンやエジオンにない…いたんだ建物だ」

ファミレスの入口にメニューのロウでできた見本が並んでる。

女性の目線など、このロウ模型に似ている。
食べることはできないが、本物よりおいしそうにできている。
興味のない分野の本やNHK番組、ウェブページ、専門書など、殺伐とした感じがする。本物、事実をあつかっているからか…。
興味のない人が見るとさみしくなる。
博物館でも、自分のテリトリーから、あまり外れた展示物は退屈に感じることがある。

女性は入ってくる情報を、都合よく取捨選択しているらしい。
太陽光の都合の良い波長だけふるいにかけているみたいに、音声の波形をいらない部分をカットしているように。
デフォルメした、本物より、りりしい偽物、子供用の図鑑のような、初心者にありがたい目線というのか。
ただし、専門家が使うには間違いが入っているかもしれない。
だけど、素人でも楽しめる世界観。

アランは中にはいったが、昼間前で混雑の手前ころだった。

窓に面して長い直線距離をずーっとカウンターのようにつながったテーブルとイスをならべた、つくりに席に通され座る。
家族ずれは大人数用のテーブルとソファ?にかける。

サイコロステーキを注文した。
きがつくと、ウェイトレスが近くを出入りしている。
なるほど、厨房があっちの、はじに腰かけていた。
声が聞こえる。
楽しそうに話している。
(ああ…つい最近まで学生だったけど、こういう職場も悪くないのかな…エジオンのソルジャーもいいけどな)
アランはそう思った。

サイコロステーキが届いた。
コーヒーは食後に指定していた。

(こういうの焼いている職人ってどういう人なんだろうな)
ひと席離れた隣に、子供の女の子とお母さんらしき二人連れがいる。

(パフェだ…。食べてる。サイコロステーキ焼いてる職人が手づからパフェもこしらえているのか…)

こっそり右端を除くと、隙間から少し厨房が見える。
(おお)

コーヒーが届いて、ステーキの皿が下げられた。

みるとコックさんの格好をした、自分と同年代の男性がこっちを見ている。
驚いている顔のように見える。目が丸いせいか。白い帽子をかぶっている。
(おお、あの人が職人か…)

アランはコーヒーを飲みほして、レジで支払いデパートをでた。




13


ほかにぶらつくところも見当たらないので、多目的ホールにまっすぐ足が向かう。
まだ正午くらいだ。

ホールに入り、デザインがユニークなクッションのイスにこしかけ、指定の時間を待つ。
(え?三時だから、あと約三時間?ここでずっと待つのかよ)

はじのほうで華を生けている中年女性の集団がいる。
着物を着て、お華教室の生徒なのか。
(なんか楽しそうだけどな。こういうところの飾り付け、ああいう人たちがやるのか)

事務用テーブルに業者が弁当を並べ出した。
アランはあるいて物色してみた。
(そぼろ?これだけ?)
卵のいったようなのが白米にかかっている。ポリエステンの透明パックにはいっている。
(御飯だけでおかずは一切並べないのか…?)

トイレに行ったふりで時間をつぶそうとするが、三時まで程遠い。
自動販売機コーナーで缶ジュースをかってくる。

腹が膨れた。
旅に出てからやめていた煙草をひとケース買って、喫煙室に行く。
そんな感じでくたびれたが、時間が来た。

アートギャラリーにいってみると、絵を飾ったりして忙しそうだ。
ボラールさんらしき人が、気づいて、「ああ、アランさん?」と尋ねる。
「はい」

立ったまま話したが、「絵を二三枚展示して、売れたら金額の60%を払うよ」
アランは了承したが、「あの、俺の絵で腹が膨れる人がいるんでしょうか」
「腹が膨れる絵か…」ボラールさんは煙草に火をつけた。「わたしでも、わからんよ。ためしにその路線で描いてみたら?」

アランはその後ホテルで絵をかき、アートギャラリーに運んだ。
三枚の絵が額に入れられ、展示されたが、一枚も絵は売れなかった。

アランは頭を抱えて悩んだ。




14

ワトソンが叫ぶ。
「カーター策はあるのか!?」

カーターはエナジーボールをかわし続けながら考える。
「…波動関数を二乗すると、存在する確率がわかる」
「それで?」
「二乗とは面積を求めることでもある。積分すること、次元を落として、動いているものを静止マップで確認すること…」
「それから!?」
「…」


パーカーが時空警察のジュールに電話した。
「だめだ。ジュールに確認したほうが早い」
電話にジュールがでた。

≪エジオンのパーカー氏。ジュールです。さっそくだけど…ヒルベルト空間ヒルベルト David Hilbert 18621943 世界の数学の進歩を指導したドイツの数学者。1892年ケーニヒスベルク大学特命教授。業績は数学のひろい分野にわたり、整数論、変分法、積分方程式論で大きな成果をあげた。著書「幾何学の基礎」だ。ベクトルの内積って、大雑把に面積だ。積分で次元を落とした世界に近似すること。内積を微分して次元を1ランク上げたのが内積空間、ヒルベルト空間だと思う。≫
「建物のボイラー室とか機械室で歯車やベルトコンベアが回転してる感じか」

≪そうかも。無限次元のヒルベルト空間とは本物の設計図とか見取り図みたいなものがある倉庫だ。ただし、時間次元がないから動き回ってないだろう≫

「それで?」

≪メビウスの帯だ。アウグスト・メビウス ドイツの数学者が考案した。あれは

三次元空間上に二次元平面をエミュレートしてできた空間だ。普通の二次元空間は裏がない。ビットマップイメージには映像の裏の情報がない。作ればあるさ。まっ黒とか違う絵があるとか、設定すればある。だけど情報がないなら何もない。それとおなじで二次元空間は表面がすべてだ。裏という概念がない。三次元空間上に二次元空間を再現してはじめて、現れるのが裏だ。≫

「とすると、その平面世界の住人は?」
≪通常の平面人と違って、裏にも世界がある。それが多次元の一つの形だと…≫
「なるほど立体以上の四次元立体とか、どう見えるのかというと」
≪空間上に浮かんだ空間だ。メビウスソードを送るから、あとは任せたよ。Have a nice day メビウスソード貸与≫

空間がピンクにゆがみ、剣が一振りうかんで落ちてきた。

カーターがジャンプしてキャッチする。
「パーカーさん、だいたい聞こえた。あとはこのメビウスソードで!」
ワトソンがいった。
「そうか!メビウスの帯の中央をハサミで切ると!」

そのときクトゥルフがテレパシーで話しかけてきた。
水中でしゃべっているような、くぐもった音声だ。
≪どうぞ、遠慮なく。わたしも戦いたいんで。あと、また要があるときお邪魔します≫

アルセウスはおとなしく、しゃがんだ体制で見ていた。
(クッ…不気味な…)



15


カーターはメビウスソードの電源をオンにした。
ポー

軽いノイズがして、剣の周りにエネルギーが満ちた。

紙で帯をつくり、ねじって、ノリでくっつける。その帯の中央をハサミで切ってみると、面白い輪ができる。さらにその輪をもういちど中央にハサミを入れると!


クトゥルフがテレパシーでいう。
≪お見事!では、またお会いしましょう≫

そういうと鏡が割れるように消えた。
さらに、割れ目から鉄サビか血かわからない赤いものが垂れた。

カーターがいった。
「最後まで不気味を装って帰っていった」
ワトソンが押さえた。
「いやいや、事なかれで良しだよ」