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2013年8月19日月曜日

久しぶりのエジオン




















1


三人を乗せた船がエジオンに着陸しはじめた。

≪お客様におつたえいたします。あと1アウワーほどで惑星エジオンに着陸いたします。みなさま、長い間お疲れさまでした。ご準備をどうぞお急ぎのないよう…≫

「とうとうついたな」アルセウスがいう。
「ああ」

スピードが減速し始め、惑星エジオンがみえだす。
地球より小ぶりの。球体だ。

「見えてきたぞ」

着陸がうまく、火に包まれたりしない。
地球儀からだんだん雲の上の上空図になり、シティマップとだんだんなるさまは見物だった。

「いつの間にこんなに降りたんだ」カーターも何回見ても面白いと思った。

キヒヒュウウウウンン

もう地に着いていた。

ドアが開く。
アナウンスが延々と流れる。
お忘れ物だとか、お疲れさまでしたとか、エジオンの説明だとか…


忍耐していたものがさっぱり洗い流されたように、三人は宇宙船を降りた。
エジオンの空港が広がっている。

タクシーに割り勘でのり、パーカーの基地に向かう。

パーカーから電話がきた。
≪お疲れさん。アリスタンダーとレベルラハムと大変だったな≫
「カーター氏もいく」

なぜか、久し振りのエジオンの景色は砂っぽく乾燥してみえた。
「カラカラしている…そうみえるのか」アランがタクシーの窓から眺めていう。
車は走り出す。
「古いムードの写真みたいに見える」
アルセウスもいった。


2


「ようこそ、カーター氏」パーカーは握手した。
「お久しぶりです。パーカーさん」

客用の部屋を用意してもらった。

「ううむ、バルハルともコインか…クラークが王をやっていた土地は、エジオンのほうが地球と雰囲気が違う気がする。メカニカルシティという感じが」

無機質なような未来世界のような異質さがある。


コーヒールームに集まった。
「パーカーかわりあるか」
アルセウスがいった。
パーカーは葉巻に火をつけた。
「ふーっ、地球人のソルジャーを雇うことにした」
アランは無料自動販売機のほうに歩いていった。

「地球人か。わたしのほうが先輩だ」
「いや、おまえらより強い」

アランのパンチングマシンを殴る手がずれた。

「はっはっはっそれは頼もしいが…地球か…」
アルセウスは余裕を見せたが、内心焦った、だがそんなことをいっていたらアルフレットをはじめ上手がいくらでもいる。
ガゴ

デラックストマトがでてきた。
「トマトジュースかよ」

空気清浄機かわりの植物がパーカーの葉巻の煙をもくもく吸い取る。

「街はどうです」カーターがいった。
「コーヒーをだそう。2人分、私はいらない」
コーヒーメーカーロボが作動した。

「いまや、部品を自分たちで組み立てるのが流行っている。音楽プレーヤーはもちろん、電子剣や銃にCPUやスマート頭脳を組み込んで、自作マシンを興じている。だが、傑作がないから販売や輸出をしていない。パーツごとの部品を買い、組み込むんだ」

「なるほど」
水が水道から適量、注がれ、コポコポ沸騰しはじめる。

「どれ」
アルセウスが壁のスクリーンにカタログを映した。

ぐわああああ、と映る。

市販品で自由度は落ちるがはめ込むだけでパーツがカスタマイズして組み込める。
あとはソフトウェアの問題だった。
センサーと動力、モニター、スピーカー、電子ジャイロコンパス

「おまえらも、戦闘や訓練のない時組み立ててみろ。傑作ができたら他の星に輸出したりするぞ」

アルセウスは壁のスクリーンにいろいろ映した。
カーターもみていた。

「それと、面白いものを発見して観察している」
スクリーンが半分に割れ、アルセウスがみていた画面が縮小された。

「これは?」
「巨大望遠鏡で星を観察して見つけた。比較的近い」
「ほとんど緑だ。サバンナに樹木が点々と…何か飛んでいる」
カーターがいった。
アランがデラックストマトを飲みながらいった。
「生き物がいるが珍しくないな」
「そうでもない。やはり人工にしろ、生息惑星は限られている」
「そうか」
コーヒーが沸いて、カップに注がれ、配られた。

「何か飛んでいるぞ」
「ドラゴンフライだ。緑色のトカゲトンボ!!」
「そうだ。知能があるのかモンスターなのか」
「おもしろいつぶやきをする人を発見してこっそり観察しているみたいだ」
アルセウスがいう。
パーカーが葉巻をもくもくいわせた。
「建物がある。人口のだ。ドラゴンフライが作るのか…」

「塔があり、入口が見当たらない。上にカプセルの丸があり、なにかあるらしい」
ドラゴンフライがエアアタックを唱える。
ぶしゅううううう

風が舞いあがる。
「おおつ!?凶暴だぞ」アランがいった。
「行って調査か?」アルセウスがいった。
「戦いたいだけだろ。観察がまず先だ」



3


カーターは二泊ほど寄っていくといった。

その夜、パーカーはウィスキーの樽の苦みを味わいながら考えた。

映画…
いろんな見方があるし、あっていい。
音楽も小説も同じだが、
異世界につかの間浸れる。

みんなが見ている番組も連帯感とか共通意識見たいのがあっていい。
話題の作品とか。

マイナーなもの、自分と他わずかしか味わってないんだな、そう思わせる、三文映画。
みんな見ている楽しみと違い自分だけの密かな娯楽…

あるいは田舎の図書館でさえ置いてある世界文学。
面白おかしくはないが、どこか歴史に刻まれるなにかがある。
そんな作品を作ってみたい。

コンテンツがサイトに選び放題ある。
それもいい、が、傑作が並んだカビ臭い図書館の世界文学。
これもコンテンツだ。

ありがたがらない。猛烈には、だが、ときに用いると新奇な味がする音楽。

あの望遠鏡の奥の世界は今のパーカーにとって新規かつ独占的な世界だった。
映画に録画したら、そんな流行らない。
「そんな動かないじゃん」といわれそうだが、本当の世界をなめている気分だ。
ドラゴンフライ…

レコードが何枚もあって、好きな気分に浸れる…
映画がTVでも金を払ってもみられる…
仕事の後に、休みの日に、自由なときに
鑑賞できる。

アランたちから土産話を聞かせてもらえる…
あのドラゴンフライが建物を建築するはずがない…



4


エジオンでは宇宙ステーションを出店することになっていた。
「かりだされるのか」アルセウスがいった。
「当然だ。地球とも、コインとも反対の方角にステーションをのばしていく。
中継地点を川に浅瀬を造って、おくに行く要領でドラゴンフライの惑星に行く。時空警察のパトロール区域から外れるから、未開拓のフロンティア作業だ」
カーターもなっとくした。
「なるほど、いきなり遠くに行くとガスけつになる」

「アルフレットも呼んだ。彼は今向かっている。最初にステーションに置きたいのはインターネットに接続できる技術だ。これができると、かなりのことができる」

電波にしろ、点々と中継点を置けば、つながる。
大規模サーバーをステーションに置いて、10のデジタル信号をモールス信号のようにいい電波でやりとりする。
電子書籍、音楽が無尽蔵に引っ越ししたのと同じことが可能になる。
「Zライトをチカチカやるだけで原理的にはデータを送受信できる」
「他に方法はないのか」

Podに大量に更新データを積んで運搬するやり方もある。
Podは無人にして毎時間ごとにお互い運送しあう。
無人だと人件費が安くなり数を多く出せるが、管理者やカスタマーが必要だという。



5


アリスタンダーと死闘を繰り広げた洞窟から、スネークナイトとマジカルサタンの生き残りが、逃げだした。
苦労の果て、大気のない宇宙空間をおよいで、月のような無人の惑星にかくれた。
ほらあなに隠れ、凍える風に火を起こして温まりながらじっと様子を見ていた。

月や火星はまっ平らに見える。無人とはいえ、地球は山も谷もあり、でこぼこしている。植物があるせいだけでなく、星の内部が熱をもって蠢いているからだろうか。
すると火星や月は内部が冷えている?
大気がないため、川の石が滑らかに研磨されるのとおなじで平らになる?
水の蒸発と川の流れ、海がないため削られたりしない?
砂漠のようになめらかなのは水がないせいか?

生命がいたるところに繁殖している地球と基本無人・無生物の星は違って見える。
人工の星といっていいような、まっ平らなフロアがつづく。
コンピュータゲームのような同じ景色が続く世界だ。



6


ファジオという地球人のオリンピック選手はもうすぐエジオンに来るという。

「先輩づらをしたりしない、わたしは」アルセウスは力んでいた。

カーターはもう少し、エジオンの宇宙ステーション計画を見ていくといって滞在した。
「たぶん私とすれ違いになりそうな気がする」

「ジャイロを回転させGを人工的に産む。ジャイロダインだ」
※ジャイロ(ギリシア語で輪)ダイン(N:ニュートンと違う力の単位。本来のジャイロダインは飛行機の動力に関する)

パーカーは葉巻をふきだしながらいった。「ジャイロダインときくとスーっとする。作りかけのプラモデルは気が重くなるが過去に完成したブツは感傷的な思い出だ」

ジャイロだとステーション全体が直進加速しても、方向を曲げても、内部の重力は常に一定を保てる。まさにジャイロダインだった。

スペースコロニーと宇宙ステーションの中間のようなものだった。


「宇宙ステーション、ジャイロダインだ」

そこはウルフというエジオン人が長官を務めるという。

パーカーの基地にきた。

「うちあげたらプログラムが自動で工事を始める無人の子機の集団を発射します。やつらはこっちで組んだプログラムに従いジャイロダインを組み立てる。電池が切れるころには完成してますよ」

アランがいった。
「俺たちはあっちじゃ地位が低いのか!?」
「なんでもやらないと地位が高くならない。あるエジオンの医者がジャイロで開業するといっている。ビジネスを展開しないと金がどんどんなくなる。常に大金をかけて運転しているんだから、成果を見せてくれと煽るとエジオンから独立するといいだす」
パーカーは笑った。

レイチェルモンドもプロジェクトに参加している。
「オフィスが宇宙にもてます。事業展開がスペース規模だ」

ウルフがいった。
「ステーションのコントロール室でモニターとにらめっこですよ。地上(エジオン)とのやりとり、内部の物資の管理、発着陸の統計と情報、それとメンバーの低気圧も気にしないとないですよ」
「それはな。少ない人数で空気が悪くなると最悪だ」
「最悪エジオンに帰国するという選択肢もありますけどね、険悪な空気が一番まずい。最初から300名が向こうに移り住む予定です」
300名か、エジオンも人口が多いな」カーターがいった。

コンクリ型のマンションが型の住宅がはいる。
品物をエジオンから取り寄せ、販売する。
だまっていると誰も来ないので広告をだして旅行宇宙船や運搬船を誘導する。

「にぎわいが足りないと死滅しますよ」ウルフは出店したい人に寛容なスタイルでいくという。
詳しい人によると、交通に便利か、特徴ある差別化でないと、どこでもある星になるので人が来ないという。
だから、締め切った内部の独立した環境で組み立てた文化が必要である。
輸入したデジタル、デザイン、建築、文化、ルールだと宇宙世界どこでもいっしょで意味がなくなる。

厳密にシュミレートしたプログラムで工事をはじめる子機が発射されるのはもう2日後だった。

パーカーがいった。
「場所がまず悪い。大勢が交通する道でないからな。流れを変えるか、あっちの方向に誰かいるか」
アランがいった。
「悪ものかもしれないぞ」
「それもある。防衛の兵士や衛兵が欲しいな」

「宇宙ステーションでも知恵はしぼれますけれどね」
エジオン本国からの指令がないと、ジャイロダイン内の情報量が摩耗する。



7



一か月で完成するという。
パーカーでさえ驚いた。
「ずいぶん早いな」
「基礎をつくってあとから補う部分はゆっくり広げていきます」ウルフが答える。

パーカーの基地は宇宙ステーション作業のため混乱していた。
「もう、確認すること、新しいことがいっぱいで頭が働きませんよ」


ドシュウ、シュウ、シュンと工事用の子機が発射される。
「はじめはエジオンの重力が届かない距離の近くに造ります。物資の運搬と人員の移動が軽く済みます。そのあとジャイロダインを地図上でもう少し離れたところまで移動させる予定です」
「そうだな」

「カセットを変えると変わる本体(コンピュータ)をもっていきますので取り換えるカセットが豊富にないと人間、これだけの人数だともて余すかもしれません」
「エジオンからメモリーチップでデータをもっていくな!」パーカーは冗談で怒った。「うそだ、そっちでも力が余ったら開発しろ」


「電波でインターネットを通信すると傍受されるかもしれません。無人のpodを地上(エジオン)から随時やりとりして通信しますか?」
「それは検討してみよう。セキュリティの暗号は」
「それですね」


8


ファジオとその彼女が地球からの連絡船に乗ってエジオンに向かっていた。
「ねえ、エジオンってまだなの」
サングラスをいじりながら答える。
「この船だと、3日の航海だとあるな。パーカーさんもあまり連絡してこなくなった」
「私たち、ちゃんと住むとろこあるの?」
「それはな…向こうで用意するだろ、ああ、お前のこと伝えてないけどな。年棒がいいから自分で選んでもいいだろうし」

座席に座りながら雑誌を読んでいるファジオは時計を見た。
(時空警察はもっと遠くなのか…マップとか見るとな。エジオンのソルジャーか…)


クラークは王座でアルフレットがいないのに気がついた。
「あれ!?いないな。そういえば。医務室で寝てるのか」
ネコがいった。
「アルフレットさんならエジオンに行くと宇宙船でいきましたよ」
「なに!?エジオンか…」




9


ファジオがエジオンの基地についた。

「なに!?家族を連れてきたのか。奥さん、いや彼女か」パーカーはふたりずれのファジオをみていった。
「よろしくお願いします」
「いや、住宅はあるが」
「エルダのことは心配ありません。迷惑はかけない」ファジオはそういった。

パーカーは考えていたがいった。
「一か月エジオンに住居を用意する。そのままそこは残していいから、建造中の宇宙ステーション、ジャイロダインにむかってもらう」
「ここじゃなく、新型のステーション?」
「そうだ…」


レイチェルモンドが司令室のスクリーンに映った。
「どうした」
≪モンスターです、ここからみると地球の方角、2000kmの距離の位置にあらわれました。標的はレーダーの画像からするとガドプレバス≫
「なに!?」

アルセウスがおちついていった。
「ちょうどいい、パーカー腕試しだ」
「そうだな、全員で迎撃する。地球から持ってきた武器は何だ!?まさかステンレスソードとはいわないだろう?」

ファジオはつつみを開いた。バイオリンのケースのようなものに入っている。

「スポーツナイフ…。本格的な武器はそっちで用意してくれると思っていたから」
「スポーツナイフか。よし、これももっていけ」

パーカーはファイティングカッターをわたした。
エジオンは貨幣がない。
住民であると品物を無料で買える。
だが、旅行者や輸出用に販売を始めた。

「かつては宿屋も無料でよその惑星の人を留めていた。広告費替わりだった」

知名度が下がると、輸出しようとしても、宇宙ステーションを建造しても誰も訪問してこなくなる。
さらにエジオンの惑星の住人になりたい人も減り人口が減る。


「クラークがきたら見せるつもりだった」
ボーンランス…クラークが開発した、短い槍。これも販売していた。大量生産して。これもパーカーはファジオにわたした。

「槍か…地球で少しやっていたな」

「ではいくぞ!」



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