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2013年6月17日月曜日

地球上のワトソン






地球上ワトソン










1


ワトソンが机の上のパソコンを見た。
「なんだって。廃刊になるだと」
ワトソンは小説家だ。短編小説雑誌の編集長が廃刊を予告してきた。

「なんだか、ひもじくなってきたぞ。このドストエフスキーの『カラマーゾフ』を読んでいるが、最近のオレはこんなかんじだ」

カーターがいなくなってからツキが落ちていた。
「チェッ、時空警察から研修で地球にだれか来ないか」
インターネットをザッピングしたが、99%は親父の自分に興味や知識のない、違う世界の出来事で、読んでも辞書を読むよりわからなかった。

「くそ、会ってくるか。でもな、あって腹の悪い思いをしてもな」
粗末なコートを手にして、外に出た。

「腹が減ってきた…」
知人や縁故など、会えばあったで、この「カラマーゾフの兄弟」みたいに角を突き合わす。苦労して折り合いをつけてナンボだった。

「アルフレットとクラークは楽しくしてるのだろうかな」
雪が降っていて、空がこの時間にしては暗い。
「マーケットでヌードルを買って帰るか。コインはこれだけ…」
誰かとぶつかった。
「ごめんなさい。土地がわからなくて」
「いや」
「僕はじ…ややジムといいます」
「ジム君か…」

いつのか、二人は時代遅れの食堂にいた。

「誠実な心がないと、何を行っても罰が当たるよ」
「うーん。アメリカ、ここではそう考えますか」

メニュー表にリストがほとんどない。
西部劇の喫茶店みたいに、ところどころ破れている。
樽が二つ店内のはじっこにおいてある。
テーブルはともかく、イスの足がぐらぐらいう。

「シナモンパンを食べるだろう?」ワトソンがいう。
「バターがとけたのがいいですけど」ジムがいう。

「君はどう思う?『カラマーゾフの兄弟』」
「あれは、学校の教科書に出てたけど…単行本で買ったことは」
「すぐ読んだ方がいい」



2


ワトソンはジムにいった。
「キルケーは太陽神ヘリオスの娘なんだ」
「……キルケー…!?」
ジムは目をぱちくりさせた。
ワトソンはシナモンパンをちぎってミルクに浸した。
「アポロンもギリシアでは太陽神みたいにいわれるだろ」
「まあ」
「月の女神セレネーの兄弟だ。ヘリオス神は」
「セレネー…」
「豚にする魔法は先祖から伝わってるんだと睨んでいるんだ」
「…!!行動がよくないですよ」
「ヘリオスのさらに父はテイターン(巨人)神だ。本来、人間として恥じる行動をとる人間を豚にする魔法だと思うんだ」
「罪人とか」
「人間でいると周囲に迷惑をかける人間だよ。僕もその人間の恥に手をだそうとしている」
「やめた方がいいですよ」
「僕は小説家だからわかる。現実そのまま神話にするとプライバシーにさわる。いろんな人物のエピソードを混ぜるんだ。モザイクさ。本人に断らないでネタにするのをぼくは控えている。ドキュメンタリーになっても面白くないんだ」
「ぼくとか、ほんのちょっとなら小説にのってみたいけど…やっぱり混ぜてわからなくしたほうがいいのかな」


ジムとわかれ、ワトソンは家に帰った。
「カラマーゾフの兄弟」を見て思った。
「書籍はまだ売りたくないぞー」
ジェットソードとチェーンソードをみた。
「あれを下取りに出すか…」
パンと水の生活が続きそうだった。
「しかも今月は寒冷ときている…」

外の太陽はまっすぐ見ても、目が痛くない暗い。あつい雲に隠れている。
「太陽の、あすこらへんかな。アルフレットがいる星は」

エジオンにはいったことがあったが、ワトソンは空を見上げてアルフレットの今の生活を想像した。

「違う星で、地上と全く違う生活か」
神さま、仏様、アルフレット様…
もう、違う惑星のそのまた向こうの星にいる友人にすがりたい気分だった。

ペンキとノコギリ、チェーンソー、ガソリンエンジン、オイルのならぶ専門店に機械剣を下取りに出した。

金にはなった。
かえり、空港の灯りがチカチカみえる。
「もう暗いや」
ワトソンは寒いのを我慢して息を弾ませた。



3

ワトソンはパンと水の食事のまえ、アルフレットに対してお祈りをした。
窓の外の星がキラとかがやいたきがした。

エカルテ

アルフレットがスクワットをしながらいった。
「クラーク君。裸の王様のきみといっしょにされたくない…」
「ホウ。この次のおまえの技が楽しみだな」
「そのとおりだ。獅子は自らを谷に突き落す。はてしない競争を昇り詰めないで、猛者は生まれない。勝者はきみたちとランク(格)が違うから登ろうと暑苦しい競争に耐えるのだ。平等主義など努力を否定するに等しい。たわごとなのだ」
アルフレットは指の骨をボキボキ鳴らした。
クラークがいった。
「でも、お客様は神様だからな」
「無論…」


バルハルーハーランド

「殿下、これが望遠鏡というものですか。地球にも似たようなものがあったような気がする」
カーターは筒をのぞいた。
「カーター殿、なにがみえる」
「はて!?地球は確かあっちの方かな」

城のバルコニーから二人でのぞいている。

「!?男…と、小人だ」
「小人」

空から、赤男とクピドーが落ちてきた。
絡み合うように戦っている。

赤男(あかおとこ)はダイダラボッチとおなじ背たけだ。




4



ワトソンは「ジェイン・エア」を読んでいた。

―セント・ジョンは日々ますます―
神のもとに旅立つ日を楽しみにしている。
死を悲しむまじ。
人間的な心でジェインは悲しみを感じ―

「アルフレット、カーター、僕も飢え死にしたら、きみたちのもとにいくよ」



エカルテ

アルフレットがクラークにいった。
「クラーク君。ぼくは君の部下にはならない」
「ああ、そうだな。給料のこと考えていたけど、完全歩合(フルコミッション)でいいな」
「部下になると安心して働かなくなる。あくまで横並びの同盟者としてなら歓迎しよう」
「それなんだ。責任は智慧の母。責任が分散されて荷が軽くなると誰も知恵をひねらなくなるぞ。頭のいい奴が知恵がでるんじゃなくて、自分一人で解決しなきゃないほど頼るやつのいない責任者が智慧の賢人になるんだ。うそじゃないぞ。縦割り組織だと、甘えて上が決めることだ、となるけど。横並びの同盟国みたいなのけじめがあるんだな。デカポリスなんか10のエリアに区分けしている。さらに101でメガロポリス総裁がデカポリス全部とイーブンの権限を掌握しているんだ。完璧だな。どうもネットで調べたところ、10のエリアのトップは全部男だ。ところが男10人分の権力のメガロポリスは女性が総裁らしいぞ、なんとか女史とかいわれてな」
「ほう」



5


ザール王子はにゅるんと玉の中のスピリットをながめた。
「ハッハッハッ…魔法殿に通い得意でない呪文を研究した。霊玉(れいぎょく)におまえをとじこめたぞ。ガネーシャにも術をおそわってな。おかげで下げたくない頭を下げさせられたぞ」

ザールはうれしそうにながめる。
「さんざん悩まされたが逆に玉に封じ込められたわけだ」

体力回復の玉とおなじガラス玉に封じた。
ピンポン玉くらいの大きさだ。

「さて、アリスタンダーはいまどこにいる?教えてもらおうか…」
玉の中で女の幽霊のスピリットはゆらゆら揺らめく。



6

エカルテの総合病院

アランの退院は近かった。
アルセウスのほうが2日遅れの予定となっていた。

アランは昼過ぎ中庭に散歩にでた。
長椅子のあつまりにTVがついて、お昼の番組が健やかに流れている。
病身の身のせいか、同じTV番組がとげとげしくなく感じる。

さびれた感じのする、おしゃれと遠い観葉植物が半分枯れかかって並んでいた。

アランはゴールド・ウィンでの学生時代、「あいつなら、何発かなぐられてもしかたないな」というような知り合いがいた。
アランは反省していた。
反省の印に何かあったとき反対に我慢しようと考えていた。

病院の売店に小型の単行本「カラマーゾフの兄弟」が売られていた。
中庭に出ると、陽気は悪くない。からだをこわして、ポカポカする、ぬるけをかんじた。

誰もいない。ベンチにこしをおろし綿毛をながめる。
アリスタンダー打倒の旅に自分も参加しよう。そう考えていた。



7


地球―アメリカーオレゴン州

ワトソンがあてもなくとぼとぼ道を歩いていると、ジムがとおりかかった。
「やあ、こんにちは。ワトソンさん」
「ああ、きみか。どう?その後」
「ぼくは…イスカンダールが封じ込めた魔人の洞窟ってきいたことあります?」
「魔人の洞窟!?まゆつばな伝承が数あるからなぁ。まごびきになる、幾通りもの似通った別の話になるし。イワンの洞窟とかもそのひとつだ」

「…」
ジムは雪道で遠くを見上げた。
「ぼくはギスギスしているけど、なんとか暮らしているよ…。いいときもあるのだから、貧しくてももうしばらく我慢してみようと思っている。暴挙に出たりしないでさ」
「いごこちがわるそうですけど」
「ハハハ…そのとおりさ。きみは幸せそうだ。コニャックは飲まないほうがいいよ」
「飲みたいんですか?」
ジムはマーケットにはいった。
回転ドアの中規模の広さで一階建てのよくある、チェーンストアだ。

「なんかアメリカが息苦しくないかい」
「音楽をダウンロードしても、楽しくないですか」
「ああ、やつれているときは何をしても楽しくないさ。気分のいい時は、その辺歩いてるだけでいいもんだ」
ジムはコニャックを買って、レジで支払った。
「はい、飲んで暴れないでくださいよ」
「…ありがとう。どういっていいか」

ワトソンはその夜、コニャックとパンで夕飯を過ごした。
腹にしみたが、ひさしぶりに、喉から潤いが戻ってきた。



8


空から降ってきた赤男をみてカーターが退治するとハーランド城主、クロニカル殿下に申し出た。

「うむ、そなたのタオがみられるな」
殿下はカーターにウィンドウブレーカーのような、消防士のスーツのようなものを渡した。
「これは!?」
「アルミニウムスーツじゃ。耐火製で光撃、電磁波など遮断する」


二人は城の外に出た。

落ちてきた二人は地面で受け身をとるようにたおれた。
ドシンと振動した。

「いてて、バビロンから落っこちてここは…」クピドーはこしをさすっておきた。

カーターが二本の剣を帯刀してあらわれた。
「みたところ天使のかたわれのようですが」
「ああ、ぼくはクピドー。天使というかキューピッドだよ、やつは赤男(あかおとこ)ぼくたちの国を襲ってきた」
「みただけでモンスターの気配がある。わたしの剣で叩き斬ってもかまわなそうだ」
「たのむよ」

「うがああ」
赤い顔、巨大な体、カーターが小人にみえる。口には鋭い牙、海やけした、ちりじりの頭髪。ダイダラボッチと互角の体格だ。

「してこいつの正体は?」カーターが剣を向ける。
「そんな話聞いてないぞ、バビロンをなぜ襲うのかも」
クロニカル殿下がみていった。
「ギズモンド帝国の人体研究で作る巨人に似てる」
「ムッ!」

赤男は片目をつむり、人差し指をつきつけ、上背をかがめて睨みつけてきた。
「むしり喰ってやる」

「しゃべったぞ」殿下がいった。

赤男はダイダラボッチと違いしゃべる。
ギズモンドから北に向かった空港のゾンビ工場でバイオテクノロジーで誕生した人工生命体だ。

「ギズモンド帝国の野望は打ち砕きましょう。あとでゾンビ工場は焼きはらう」カーターはおちついていた。
「わしもそうしたいが、ギズモンドの兵は強いぞ」
「アロン様も警戒していたよ」

カーターは素早い動きで剣を与えた。
キン

ステンレスソード 124

「この、すばしこい」
赤男は両手を構えて追いかけてくる。

「ム!」

右ストレート!!

カーターの人体の体格に巨人の拳が食い込む。
「おぶ!」

アルミニウムスーツを着用していても大ダメージだ。

「がっ!油断した」
カーターは口から血を流している。

二撃目!
巨人のジャブ
ドンドン



9



カーターは器用に体をひねりかわす。
「ハッ」

隙をついてライオンソードのショットを送る。
240

「そんな、もんか、たいしたことないぞ」
赤男には対してきいていない。
体をパンパンとはらっている。

「なるほど、いままでの巨人とはわけがちがうというのか」カーターは無表情で落ち着いている。

「これを使って!」エクセレントソード(アロンの剣)をクピドーは渡した。「ぼくには重くて扱いにくい」
カーターはライオンソードをしまい、キャッチした。

「これは…わたしにも半分重いな。半分使えて半分装備できない」
赤男がのっしのっしとおそってくる。

「…」
カーターは赤男をみやり、無言で立っている。エクセレントソードを抜き、左手で先の峯をいじっている。

「うがあああ」

右ストレート
「ハッ」
ジャンプしかわした。さらにねじって赤男の肩にエクセレントソードをシュートする!!

ガッ 1542

「おおお、カーター殿」殿下がさけぶ。

「重いが強い。大した破壊力だ!」
「さらに、もう一太刀!」
ガィン! 1478!!!

「がう!?この?」
赤男は怒りだした。

「なんだ、そんなものかい」クピドーは太陽の矢をつがえた。
援護弓 4120

「ぬおおお、体に…ぐむっむむむ」
赤男の脇腹に矢がささってぬこうともがく。

「よし、わたしも」クロニカル殿下がスポーツナイフをぬいた。
ガッ 784
競技用と戦闘の中間のような武器だった。

赤男はまず殿下を狙ってパンチを出した。
「危ない!」

「…」カーターは猛速でダッシュし、剣を赤男の腕に叩きつけた。

腕落とし 2314
「がっ、このおおおお!?」
腕はちぎれなかったが血液が溢れる。

カーターはアッパーを喰らっていた。
「!!!!???!」
10mはふっとばされた。
「まずい」
クロニカル殿下はスキをついてスポーツナイフできる。




10


ワトソンが石油ストーブの着火ランプに点火しようともぞもぞしていると、黒電話のベルが鳴った。

ワトソンに雑誌の編集長から依頼が来た。
会ってみると、ガランとした殺風景な室内に机が一台ある。
パソコンと黒電話一台。
イスにすわってふんぞりかえっている。
「ああ、ワトソン悪かったな、こないだは」
「あい変わらずこ汚いルームだなぁ、ため息が出るよ、たばこ一本くれよ」
「ホラ」

ジッポで火をつける。
カシュン!
「ありがと、汚くて汚しても気にならないのが取り柄だな」
「ハッハッハッ、お互い様だ。アメリカンフットボールの試合はどうだい?」
ワトソンは灰皿を確保しながら答えた。
「ああ、フットボールを見るのはやめたんだ」
「ふーん」
「それより今は海洋生物学さ」
「そりゃ御熱心で。それより長編かいてみないか。原稿料は安いが」
「ほんとかい」
「ああ、単行本の企画もある。それと…原稿書けるやつ紹介してくれないか。ああ、書けばいいもんじゃない。専門知識がいる。それに票を確実に取れる腕だ」
「そんな都合よくいくかよ。厄介な依頼だな」
ワトソンは煙草の灰をケチくさく落とした。
「少しはめんどうなくらいでないと、うまい話なんかトンとこないぜ」 
「……それもだな。いえてる」

「今日の仕事はこれだけじゃない。早く返事をくれよ」そういって、くわえ煙草で古い型のブラウン管のコンピュータに顔を集中した。

「やってみるよ」
ワトソンがドアをあけてでていこうとしたとき、編集長はこういった。
「締め切りは守れよ」





11


カーターは何とか立てたが、足が震える。
ガクガク…

「ぼくが」
太陽の弓矢 4100

「があ」

ストレート 1200
「ぶお」
クピドーもふっとんだ。

クロニカル殿下がいった。「敵もそうスタミナがないはずだ。みなしっかり」
スポーツナイフをかまえ敵の攻撃を迂闊に喰らわない態勢をとる。

「精神弓」
クピドーは心に念じると蜃気楼の矢をつがえた。
「これは精神に直接刺さる。痛いよ」

ドス!

「うがあああ」
赤男の心にささった。
「俺はお前らと違って、ゾンビ工場で生まれたんだぞう」
片足で踏ん張り、人差し指で睨みつける。
もうれつに酒乱のように暴れ出した。

三人はガタガタ震えそうになった。


カーターはタオをつかった。
「道術は陰陽の極意」
一時的であれ体のダメージが回復した。

「いくぞ、赤男。すこやかに眠ってくれ」
クピドーもいった。「ぼくも、死角弓で援護する。赤男には気の毒だけど、安楽にやすんでほしい」
クロニカル殿下もいった。「わしも、国王としてギズモンド帝国の研究を糾弾してみよう」


アロンの剣 2004
死角弓  1006
スポーツナイフ 887

「があ」
赤男は倒れた。
あたりの大地が揺れた。

「さらば、せめてこの酒を飲んで冥途に行け」
カーターはウィスキーを赤男の死体にトポントポンかけた。
「その酒は…ワイルドターキー…」殿下も弔った。

カーターはビンが空になるとせんをした。
「ええ、ダメなんですよ。バイオの力で人間を製造しては」
クピドーもいった。
「イエス様でさえ、聖母(マリア)の胎から出て生まれてきた。30過ぎのオヤジの姿で飛来してもよさそうなものなのに」

「…」クロニカル殿下は口が重そうに話しだした。「実は、あのゾンビ工場では犬の死体や猫の死体、人間の死体まで大鍋に入れてグツグツ煮ているという話だ、さらにそれを原料にバイオテクノロジーで生物を創造しているという」
クピドーがいった。「ぼくも天界に戻るけど、その剣の修行をアロン様にお願いするかい?」


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