二度目の惑星バルハル
1
「おりるぞ、アルフレットとゆかいな仲間たち」
今までと違い、殺伐とした空港だった。
「バルハルか二度目だな。オレたちは」
「ぼくもだ。あのときは大神の力で飛来した」
機械的な建築物だった。はなやかなグレートシティやゴールド・ウィンからすると白銀のなにかの工場のようだった。
パイプやなんかがむき出しにあちこち走る。
カラフルなどでなく、サビた赤茶色まで隅っこでは見つかる。
「田舎というより…殺伐としているな」オーブリーがいう。
「軍事工場って感じだ」エドアールもいった。
人の顔もどこかくらい。
窓の外は農村あるいは天然にしては平地めいているが、むき出しの草地だらけだ。
寒散としているというより広い。
所せましと建物が並んでいるのがさっきの土地だが、みわたすかぎりなにもない。
「山もないという感じがするぜ」
商業施設はあるにはあるが、遠慮したくなるような雰囲気だ。
「!」
アルフレットが気がついた。
大勢の人が流れに沿って歩いている。
「なんの行列だ?」
なんだか生気がない。
建物は広い。だだっ広いが飾り気がない。
業務用冷蔵庫のようなどでかい扉がある。
デパートの荷物を受け入れる倉庫の裏口のような。
そっとついてみるといつの間にか人は消えている。
(不気味な…)
2
三人の直感がいっていた。
のたのたとどまっていたら、閉じ込められる。
「ゾンビ工場」
そう心の中で想像した。
「まさか、生きた人間をゾンビにしたりしないよな」
「…」
「あいつらのゾンビ兵、どこから死体をもってくるんだ!?」エドアールが不安そうにいった。
アルミニウム製をおもわせる階段をおりると、金属の重さではなく、空洞の軽さに足がひびいた。
外に出ると雨雲が広がり暗くなってきた。
「グレートシティにシーズンチケットがあったぜ。ひとつのアーティストの新曲を一年ダウンロードし放題だ」エドアールがいった。
「そのアーティストがあまり曲を出さなかったら?」オーブリーがいう。
「赤字さ」
アルフレットは思案していたが、こういった。「指令室だ。今、オレたちは徒歩で活動しているが、指令室にいると思え。次の行動を思慮深く計画して動くんだ」
「なんだ!?軍事マニアか」エドアールが余裕をふかしていった。
「タッ!まじめにやれ、半分敵陣にいるんだぞ」
「ああ、普通のシティ(街)じゃないな。雰囲気で分かる」
ポケットをまさぐり煙草をくわえだした。
それぞれ荷物でいっぱいだ。
3
「この道をたどるとバルハル帝国だ」アルフレットが壁の地図をみていった。
「いや、ギズモンド帝国だ」エドアールがくわえ煙草でいう。
「…」
時空警察
マンデンブルー大佐の司令室にメラネウス、ジュールが入室した。
「はいります」
後ろを向いて立っている。
向きなおり話しだした。
「特防隊のことだが…」
「ああ、僕はレンジャーでトレーニングを積んだけど…特防隊には不採用だって」
「わたしも…今のところ移動はないと」
「そうだ。が、女性の隊員がいるといないとの違いの分析結果が出た」
「へえ、大佐どんな結果なんですか。僕は軍事活動の時は嫌だな。基本的に」
「そうか。ジュール君…まず男性でチームを固めると破壊力はある。が、長続きしない。ノウハウが蓄積するがいわばクッションがないチームになる」
「体を壊すとかですか?」メラネウスがいった。
「それもある。エスカレートしすぎる。女性が隊にいたほうが任務の遂行に手間取る。なのに…」
「柔軟さか…長持ちすると」
「だが、女性隊員は母親ではない。職務に保母をさせるのは規律に反する」
「うーん。チームの奥さんじゃないんだよ」
「怪我や放射線で子を産めない体になるとか」メラネウスがいった。
「それもある。子を安全に出産するという条件と生まないという条件で安全のランクが劇的に変わる」
「事務の女の子を雇うんじゃないもん」
「戦闘が任務だからな」
「戦争に参加するなら出産にリスクがあるのを覚悟しろというのも…」
「そうだ。本末転倒だ。今のところメンバーはこれしか決定していない」
ランクA【フェリークス】 隊長:ステファノ
ランクB【…】 隊長:ゼイン
ランクC【…】 隊長:ジム
4
長い廊下をふたりがあるいてもどる。
「ジュール…今何してる?また店長か」
「表計算ソフトさ。ソフトを操縦して帳簿をつけている」
「なんでまた」
「コーヒータイムがあるからいいけど、いそがしいよ」
「いろいろな仕事が来るなお前も」
「データの収集や確認、整理は機械じゃできないんだよ。人間が目でチェックしないと。こんど表計算ソフトの検定受けさせられる」
「ふーん」
エカルテ城
クラークがザールのSNSをみていた。
「ふーん。スピリット(女の幽霊)に悩まされているか。エカルテのカタコンベ(地下墓地)にも女幽霊いるけどな…」
惑星バルハルのエアポート周辺
みるとアリスタンダー四天王のガドプレバスがライオンナイトと戦闘している。
さらに空から首の長い竜がはばたいている。
「空港にありがちな光景だぜ」エドアールがオーバーランスをとった。
「メタリカルステーションにドラゴンは似合う」オーブリーがいった。
「オーバーランスの破壊力を試したかったところだ!」
5
メラネウスがジュールにいった。
「飯でも付き合わんか。昼何喰う?」
「サイコロ飯」ジュールが答えた。
「サイコロ!?」
「半か丁か」
「ちゃー、ハン?」
「そう、チャーハン…」
首の長い竜は地面に着地した。
フワ…
エドアールはオーバーランスをかまえ、突進した。
「ハッ!」
ダッシュ・ランスアタック!!
オーブリーはボンバーアーマーを装着している。
「よし」
ガチャ、ガシ!
ライオンナイトがガドプレバスに斬りつけながらいった。
「ぬおおお、貴様らに助太刀にきたが」
「サンキュー!!」
アルフレットはダブルボディで体を二つに分けた。
正義の剣を横一文字に構え、両手を広げて突き出す。
「ダブルボディ!!アルフとレッド」
ブモオオオオオオンン!!
二人のアルフレット、アルフとレッドが分身して現れた。
アルフはライオンナイトとガドプレバスにむかった。正義の剣をもって。
レッドはエドアールの加勢にはいった。ステンレスソードをもって。
オーブリーもアーマーを装着するとガドプレバスにむかっていった。
ダッシュ・ランスアタック!! 1451
「初心者にしてはなかなか…」自分でそういった。
竜は口から炎と稲妻のまじった火炎をはきだしてきた。
「ぐおおお?」エドアールは顔を腕でおおった。
レッドが跳躍する。
エドアール 451D
レッド 310D
竜の真上までジャンプし、レッドボールを地に向かって放った。
「ハーッ!!」
ドゴン、ボアン!!
1540・1874…
さらにステンレスソードにオーラをまとわせて、落下と同時に突き刺した。
「ギュルルルウロオオオオ!!」
首の長い竜は叫び声をあげる。
3457!
6
ライオンナイトのゴールドエクスカリバーがオーラで光る!!
ブオオオン 3457
オーブリーのスカラムーシュ 3451
アルフは疾風の下段をかまえた。
片手で正義の剣をかまえ、ガドプレバスに突き出す。
剣先がやや下がり気味だった。
体は半分身を開いている。
グン!
バネのように剣を持ち上げた。
その反動を兼ねて、自身の体も持ち上げ跳ね跳んだ!
疾風・跳ね!
「グオオオン?」
ガドプレバスのドラゴンの体は紫黒い。首をもちあげてジャンプしたアルフを見上げている。
「ハッ!」
剣に体重を乗せて斬りつけた。
ザン! 4571!
「ギャアオオオオン」
ガドプレバスはマグマの噴き出す高熱の溶岩を噴出した。
ぶおおおおお!
「がっ!」
2471
「アルフ!」
生コンクリートで固められたかのように落ちてきた。
7
「だいじょうぶか」ライオンナイトが助けた。
「なんとか」アルフは脱出し、薬草を口にした。
「両方の竜ごと斬ってくれる」
そういうと緑色のオーラを蓄積した。
金剣一周消波斬!! 4510
「やった両方とも大ダメージだ!!」
オーブリーはイーグルフルーレをわきに投げた。
ドガ!
つきささって立っている。
「はああ、初めての魔法」
エアーアタック 451
つむじ風がガドプレバスをおそう。
さらに、剣を抜きとって、体の肉が引き締まるドラゴンに向かう。
「はああああ」
脳天直撃 4512!
ガドプレバスの額にイーグルフルーレの直撃がさくれつ!!
「いいぞ、オーブリー」アルフが応援する。
エドアールは首の長い竜と巻きつきあうかのようにオーバーランスで戦っていた。
「おおおおお」
レッドが攻撃のチャンスをうかがう。もはや素手だが、オーラ担当に分身している。アルフは正義の剣専門に剣撃に巧みだ。
「竜槍!ドラゴンと闘ったヤリだ!」
スキをみてエドアールはショルダーからさやをさげているグッド・ソードを片手に抜くと、竜のはらに突き立てた。
ズギ!
「ぐおおおおん」
「さらに、おおおっ!!」
オーバーランスを両手に構え、まとわる竜の首につきあげるように跳ねた。
ズギュー
体表を切り裂く!
竜の体躯にのっかり、スコップを土砂につきさすようにランスを逆さにぶち込む。
敵は炎をはけない。
自分の体を焼きそうだ。
だが、爪がおそう。
オーバーランスでふせごうとしたが、なれない槍でかわしきれなかった。
地面に墜落し、きがつくと懐をえぐられていた。
「ぐっ!なまあたたかい…油断したか。きもちわるいな、痛みがないぞ」
血がたらふくドクドクながれてくる。
レッドがいった。
「気を付けたまえ」そういって霊玉(れいぎょく)をわたした。
パリンとわると霊気につつまれ、エドアールは体が軽くなった。
「しばらくじっとして休んでいろ!」
「レッドボール」
987!
ドカン!
8
レッドは両手のてのひらでボールをつまむようにオーラボールをつかんだ。
さらに足を適度に前後に開き、滑走するように地面を滑った。
シャアアア
タン!
エドアールが叫ぶ。「おおお、人間なら不自然な動きだ!!」
跳躍し、首の長い竜の顔面にオーラボールを押しつける。
「グアアン!」
ボム!
さらに左!
ボオ!
1974!
宙返りをして舞っているレッドに竜は稲妻と火焔をはきつけた。
「ガアアア」
レッドはよけきれない!直撃を浴びる。
1978!
「クッ」
留めにオーラをこめたエルボ―をたたきつける!
2004…
ぐ!ぐおおおおお
首の長い竜はダウンした。
具合の悪い獣のように沈み込む。
エドアールがおきあがり、すかさずグッド・ソードで首をはねて始末した。
ザ…
ドサ
竜の切り落とされた頭がころがる。
「やった…」
9
レッドは地面に落ちてたおれた。
ヒーリングメスで自己修復している。
ポー
「大丈夫だ。4、5分で癒える…」
エドアールはしゃがみこんで答えた。
「オレはもう少し休ませてもらう。霊玉でかなり回復したが…」
出血は止まっていた。
ライオンナイトがジャストヒットを喰らわす。
ガドプレバスは蜃気楼のようになり消えた。
あとには首の落ちた竜の死骸だけだった。
オーブリーがきいた。
「レベルラハムはアリスタンダー退治に手を貸してくれるわけか」
ライオンナイトがいった。
「そうだ。このあたりで暴れられては不愉快だからな」
そういって切符をわたした。
「幸福の切符だ。金が尽きたとき、あるいはチケットがとれないとき、代用になる。まちがっても他人を侮辱することに使うな。自分に帰ってくるだけだぞ」
「…悪いな」
「それと、あのエアポートだが、明らかに怪しい。私はこれから様子を探りにいく」
「ぼくらは…ギズモンドの様子を…」
ひとりにもどったアルフレッドがいった。
「いや、いったんここからコインに帰る」
三人はエアポートからエカルテ・コインのエアポートにいく船に搭乗した。
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