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2012年12月26日水曜日

ヒキガエルの王女様






ヒキガエル王女様








1


誰もが知っているおとぎ話のアレンジバージョンを書いてみたいと思った。
おとぎ話とか土地や時代により微妙に違う。
その際、鉄道のレールが右に行く話を単に左にするのではなく、レールが全体としてつながるのが面白いのかもしれない。

シンデレラとか白雪姫に似ているがアレンジされた物語とかおもしろい。


エカルテの人気の少ない、岩場。
オーブリーがたたずんでいた。
小川がチロチロ流れているが、すべて人口である。
コインメタトリーは地球のように天然でできた惑星ではなく、空飛ぶ円盤を人工的に作った星だからだ。

すすきが風になびいている。


オーブリーは自問していた。
悪人には悪にたいする欲がある。
なにもしなくてもいいのにと思うが、悪いことをする。
だが…、その成分を分解すると、正常な欲がある。
欲があること自体は普通だ。
腹が減るとバターのついたパンをかじりたくなる。
喉が渇くと、一杯のビールをのみたくなる。
それは正常だ。

だから、欲をコントロールできるだけ、
理性を太らせるのが、成長した人だ。

それとは別に悪そのものを好む人種もいる。
その悪人は本物の邪悪だ。
犯罪を犯すこと自体目的で快楽な人種だ。
ぼくにも欲から来る悪心はある…


そのとき、足元にヒキガエルがやってきた。
おどろいたことに、オーブリーに人語ではなしかけてきた。
「お願いだから、ブロームインにつれていってゲロゲロ」
「だめだろ~、君の恋人はあの川の向こうにいると占いがいっている」
そういって、オーブリーはヒキガエルを反対に向けて、川に返した。




2



エリア85


マイクで増幅したような女の声が聞こえる。
「またあったわね、時空警察のジュール君」


ジュールはパーカーたちにいった。
「やつらが繁栄しない、栄えることがないのはその信条が間違っているからだ。だが、やつらは改めようとしない、それどころか奴らの宗教を押し売りする。バカな連中さ、相手にしてたらこっちまで不毛の大地にされる。

やつら、知らないのさ、どうやったら実るのか、苦労すること、僕たちは組織の繁栄のために、手づから働いた。いらない苦労をした。その苦味が深い味わいになり、作物が実る。だが、やつらは苦労をいかにスケープするかを考える。ズル、抜け道を探り当てる。それじゃ腕に肉はつかない、実らない。楽しくないのさ。僕たちは一から試練に耐えてきた。やつらはそれをズルしてほしいものだけ手にいようとする。

惑星が太陽の周りをまわる。
宇宙の法則が気に入らないと逆らってもなすすべはないんだ。
ところが連中は他人がつくった法律を破ることからはじめる。
自分をおとしめているのは、法律じゃない。
宇宙の法則(のり)に逆らっている自分自身だ。

そりゃわかる。苦労しろ、なんていわれたら、怠けて楽しいことしたくなるさ。
でも、やつらに苦労の尊さを説いても全く理解しない。奇妙なほど。
最後にぼくらは、奴らにいう言葉を見つけた。
GO TO ヘル!!
これ以外ない!!」

ジュールはグレイトソードにバリバリのオーラを蓄積して撃った。
ズドーン!!

小型宇宙船のいくつかが爆発する。




3


オーブリーはヒキガエルをつれて、エカルテのコーヒーハウスに入った。
暖炉には火があかあかと燃えている。

エカルテのなかでもこの通りはギャラウェイと呼ばれる。
すぐちかくに、建物の何もない荒野が広がり、反対には繁華街が並ぶ。
そのため、コーヒーハウスには貴賎を問わずいろいろな客がおとづれる。


いろいろな広告が壁や柱に貼ってあり、薬の試供品が置かれている。
煙草のけむりがまいあがり、コーヒーの煮詰まったにおいがプンとする。
新聞や雑誌、最新刊の本などもサービスされる。
デジタル器具はあまり置いてないのが普通で、この世界ではアンティーク調なつくりになっている。


旅人が連絡の合図に、これなんかそうだ。羽が壁に貼ってある。
分かるものだけに分かるサインだ。
≪ぼくはここに来た。おまえをさがしてる≫
怖いのはナイフを壁に突き刺していく奴だ。
≪このナイフに見あたりのある奴はオレに連絡しろ。一斉蜂起が近い≫


ブロームインか…ニュートラルブリッジはまだ完成しない…
なら、…ラグナクロク経由ではいるか、それともゴールド・ウィン?

ラグナクロクには最近いったな…
ハイカラな街だ。
最新メカの。

ゴールド・ウィンは同じか…似たような都市世界だ。
地球よりずっとすすんでいる星だ。

カロリーナ姫なんか、ぼくはあったときから思った。
たいして、地位が高くないぞ、このお姫様。
いいとこ、ぼくと同一。
気位や地位の本当に高い貴婦人なら、ぼくが部屋に侵入して、叫び声もあげないのがおかしい。
最上クラスの大王の妃などになると、夫以外の男性に、肌はもちろん、顔や手などすら見せない。
夫に貞操を保つのだ。

そこまでいかなくとも、地位の高い人は決まった男性しか相手にしない。
金で男の相手をする女。
コインにはいない。入れないんだ。
地球にはいる。
ぼくもそういうのは嫌だ。
それでコインにつてれこられた。

クラーク王の前歴を少しつかんだが、なんと僕の故郷。
地球人だ。
ぼくがいたのは王政復古とかピューリタン革命とか、そんな時代。
その何世紀も後の2000年代から来たらしい。
時間の流れがどうなっているのか僕にはわからないけど。

クラーク王なんかわかっているのかな。
地球人だぞ…。
さらにその前の履歴はわからないけど。
都落ち、革命、トランプの大富豪と同じで、王になんてなったら、転落したとき無様なんてもんじゃないんだぞ。(アーリーリタイヤをうまくできるかな)
王の命令で面白くない思いをした奴なんか、地位が転落したとたんやり返そうという輩なんていくらでもいる。コインでも。

ぼくはそれが嫌で王になんてなりたくないんだ。
ぼくはぼくという身分でいい。
トランプのキングは王、エースは王子なんだ。
ジャックは兵士…。
キングよりつよい、エースは大富豪で2にやられる。
食物連鎖のように輪になっている。
グー・チョキ・パーと同じさ。
シンデレラが本来身分の低い意地悪な姉にいじめられるみたいな話だ。
エース王子なんて、世間知らずで、立場を隠して、同じ土俵に上がると、身分の低いものにいたぶられる。
“王はかくあるべき”でいきると、ずるがしこい人間にコテンパンにされるんだ。


カロリーナ姫はぼくとおなじで、2にやられない。
悪いわけじゃないけど、お姫様なのに転落に強い当たり、僕に似てるんだ。
コインやエカルテで革命が起きても、僕の身分は変わらない。

クラーク王なんか、わかってくれるのは、ぼくは金で雇われ、力を貸しているだけで、王に忠誠を誓ったわけじゃない。
それを理解してくれるところが彼がわかってくれていると感じるところだ。
クラーク王とは、僕の気が変わればそれまでの関係だ。
彼はそれを理解してくれている。
ぼくにはそれがありがたい。

エカルテなんて、なんとなくぼくの直感じゃ、革命が起こりそうな気配だ。
そうなったとしたら、ぼくはクラーク王に助言はするが、それほど肩入れするつもりはないんだ。
「あとは自分でやってください」
そういって去るつもりだ。


エリア85


アルセウスがジュールにいった。
「ジュールさんが失恋した相手って、あの女ですか?」
「ちがーう!なんでそうなるんだ。ぼくはあなたに落雷を落とすぞ」
パーカーがいった。
「エジオンソードをバリバリにふかす!」



4


オーブリーはコーヒーハウスをでた。
ゴールド・ウィン経由でいくことにした。
音速カーは基本使わないでいく。
「それにしても、カエルだとレストラン入りづらくて困るな」
オーブリーがそういうと、ヒキガエルはむくむく膨れだし、旅行鞄になった。
「なるほど、もちやすい」

とりあえず、エカルテとウィンの関所に歩きだした。
カエルがきいてきた。
「どうして、そう考え方やしきたりにいろいろな種類があるゲロ?」
「そりゃあ、おまえ。将棋でもチェスでもそうさ。うわ手ばかり相手にしてると、それに対抗する打ち方が身につく。自分より下を相手にしてると、それに応じた打ち方がくせになるんだ。だから、突然違う相手と打つと戸惑うのさ」
「それが?」
「立場によって考え方が当たり前に異なるってことさ。普段相手にしてる教科書が違う窓が違う。頭に入る知識が別々なんだ。ぼくは王侯の考えにも好きじゃないのもあるし、大衆の嫌なとこも知ってるつもりだ」

「見えて来るモノサシが違うんでゲロ」
「そうだな。あと自分の国民にどこまでいうことをきかせるのか。古代の国とい違って嫌なら出ていけばいいのがここらの星雲の星だ。だから、相手の言い分をどこまで聞くのか?へたすりゃ、法律を変えろと言ってくる」
「法改正を求むゲロ」
「個人の王国だ。嫌なら出てけ。でも人数が減るかもしれない。逆にだ、そのポリシーが好きな人が集まってるんだ。バカなやつらのルールを許したら国なんて居心地悪くなる。自分だけじゃなく国民に迷惑がかかるんだ」
「そういうやつらは、そういう国に行けばいいゲロ」

「ぼくなんかエカルテは故郷に似てるから好きでいる。だけど嫌いな法規もあるさ。でも、自分の国じゃないからなにもいわない。自分個人のことならされにも指図されないつもりだ。自分があっちにいけといわれたら、すなおにそうするさ」

「相手を誘うときは?」
「そりゃ、難しいかも。クラーク王が僕を招待したとき、機嫌を取るためにこのブルーレイピアをくれた。“よくきてくれた。無理いってすまない“こういう態度のない奴は誘っても来ない。」
「でも、わがままでなさすぎると、足がしびれるゲロ」
「まあな。悪いのはなにもありがたくないのにありがたがれ!こういう奴だ。いや、いいですって断られるな」
「武士道精神のない奴に誘われると怖いゲロ」

ギャラウェイの通りを離れて。
エカルテ城がみえる通りを歩いている。
「城が見えるな、ここからストリートを右に曲がるか。あとは崖沿いの道路だ。やっぱり音速車のタクシーをたのむか…」
そういってオーブリーはタクシーをつかまえると鞄を持って乗った。

関所にテナントではいっているホテルに泊まった。
地球でいう空港のようだった。

オーブリーはロビーの無料自動販売機でビールをとってくると部屋に持って行った。
「レストランで注文すると高いからな。壊さないようにパンチするのがコツなんだ」
ヒキガエルはもう一部屋とれという。
「おまえ…もしかしてメスか?」
コインロッカーにかばんを入れることにした。
「ホラ」


5



自動で動く通路にオーブリーはのった。
幅が広く反対側はエカルテ行きの通路だ。
かばんを床に置いて、だまって立っていた。

「だまってまっててもしょうがないゲロ。トレーニングを兼ねて走れゲロ」
「うーん。そうするか」
オーブリーは早足で歩いた。
関所から出るとそこはもうゴールド・ウィンだった。

チューブ状の道路の中を音速者が走る。血管を流れる血液のようだった。

ヒキガエルがきいた。
「女にふられたときどんなかんじだゲロ?」
「そうだな。買い物にいって、帰りに母さんに置いてかれた感じかな」
「ああゲコ」
「あと、孫娘が遊びに出かけて、帰ってこない。電話がきて孫が交通事故にあった。そんな気分だろうな」
「………」
「すっかり都市世界だ」
「恋人だと?」
「そのままだろ」
「ああゲロ」

高速道路をおりたが、ここはゴールドウィンの真ん中寄りは端に近い。
もうすこしいくと、城があり(右上)、まっすぐ右(地図的に)行くとエアポートがある。
クラークたちが泊まったのは、エアポートの中にあるホテルだ。
ブロームインとの関所もエアポートの真下にある感じだ。

エアポートのホテルではなく高速道路の終点のホテルに泊まろうかとも思ったが、昼食にした。
ヒキガエルは水だけで食事はいらないらしい。旅行鞄に化けた。

「エアポートまでいくといいけど、疲れるしな。まだ200だぞ。安めのローカルに乗るか…ポートに夜つく」
「金で女を買う星はあるのかゲロ」
「なんだよ」
「カエルのとき少し頭の中読める魔法があるゲロ」
「ミノタウロス星雲のはじっこにそういう星がちらばってるらしいな。あそこでは合法で大々的にやってる。惑星の方針なら時空警察も何も言わない。個人の趣味だと断定されている。侵略してこなければな」
「やっぱ、ミニジェットに乗るか。空輸だから4時までにポートの宿に泊まれるぞ。でも、散財だ」
「ゴメンゲロ」


エリア 85

アルセウスがジュールに訊いた。
「ジュールさん奴らの狙いは金目のものですか?」
「やつらが文無しだとおもったら、大間違いだ。巨万の富をなぜか持っている」
パーカーがいった。
「さっきまでの話と矛盾してるぞ」
「わからない。贋金なら犯罪だが、錬金術みたいに貴金属を合成する技術ならビジネスだ。原子力発電でエネルギーをつくって売ってますみたいなはなしだから。でも、正体不明に、高額の宇宙船をたらふく持ってる。そして強い!侮ったら負けだ」



6


オーブリーは張り紙をみていった。
「おお、ゴールド・ウィンの新作武器発表会が開かれているぞ。時間をずらして見ていくか」
「ええ?ゲコ」

オーブリーは展示会にいくとこにした。
「なんだ?この建物エレベーターでのぼるのかとおもったら?」
なんと、建物の周囲にチューブのような道路があり、車でのぼって、高い階に移動するのだった。

「広いからな~それに高い。車がビルの上空まで走っている。本当のハイウェイって感じだな」

向こう側のチューブにいろいろな色の車が登ったり降りたりしている。
チューブがつた植物のように三重らせんのようにクロスする。
雲が近く見える。巨大な建物の向こうでは誰が何をして過ごしているのだろう。数え切れない人数がこの巨大な施設で時間を過ごして働いたり、楽しんだりしているんだなとおもった。エカルテではかなりまれな建物だった。
余計な階で降りるのは怖いので、展示会場にすぐいった。
「なんの武器なんだ~」

展示会のフロアは鈍く光る床で、ときどきダクトがまわって空気を喚起してる感じだ。
天上にライトがない。星空のような微灯だけで、床が発光するライトだ。
全体的に映画館のように暗めで品のいいデザインの広告があちこちに走っている。

お客さんの数はそんなでもない。時間帯が違うのか。

ケースに入った武器は楯と斧だった。
お手を触れないでくださいと書いてあるが、その中は高圧電流でガードされてるのだろう。

サイコシールド  1クラウン
スマートコントロールアクス 2クラウン

「おお?すごい。高価だ。個人で買える金額じゃないな」
武器製造メーカーの営業マンが解説をしている。
「スマートコントロールアクス。えースマコンアクスは、見ての通りデジタル戦斧でして、デジタルアクスとも呼ばれます。それと念のため、お手は触れますように。ガラスのケースのなかは照明を兼ねた高圧電流でガードされています。盗難を防ぐためでして…」

「なるほど。紫に光ってるな。すごいぞ。イーグルフルーレも芸術的な剣だったが…サイコウェポンやデジタルソードも頼もしい!」

「えー、それで名前の通りスマートな、つまり賢い武器でして、戦闘を重ねると相手の攻撃をサポートする動きを獲得していきます。ただし、サポートでして、本来の操縦を使用者が誤ると戦闘に勝てない。サポートに自動をセーブしないと、勝手な動きで使用者の意図とバッティングする。そういうわけで…」

「メカニカルアクスってかんじゲロ」

「大量生産品と違い、ここに展示された一点のみとなっております。そのため、お値段はジャムをこえ、クラウン価格となっており、最高レベルのソルジヤーの武器となっております」

「誰が買うんだ?」

「サイコシールドですが、サイコウェポンの至高作でして、魔力がない方は、バッテリーからバリアをシールドの表面をコーティングいたしますが、持続時間は、保証いたしかねます。魔法の修行をされた、えーブロームインの魔法軍などにおおくいらっしゃいますでしょうが、あちらで修業された方の魔法力でバリアを構築する設計であります」

オーブリーはまた、車に乗り透明のチューブの道路を走り、一階に降りた。
窓から小さくいろいろな人影が動くのが見えたりする。
狭いエリアも広いスペースも、何をしてる人たちなのかなと思いながら、快敵にのっていた。

そのまま、格安の低サービスジェットにのり、エアポートのホテルに移動した。
「クラーク王の奥さんだけどゲロ…」
「ああ、王さまは王座でだらけていたらいわれるだろ?惑星の王なんて大企業のCEOと大統領を合わせたみたいな職業だ。多くの人を働かせている。でも、疲れてきたらぐだらとなるんだ。クラーク王の奥さんなんて見たことないけど、シャキっとした感じの女性がいると、自分がだらけたとき背筋が自動で伸びるのさ。ようするに王様の代わりにビシッとしてくれる。王の威圧感のための背もたれさ」



7


ゴールド・ウィンのエアポートのホテル

「一番安い部屋を借りるからな」
「しかたないゲロ」

TVをつけた。

TVドラマ
柔道一本背負いで豪快に投げられる。
「いてて、なんでだよ、田中君ぼく、きみのこと…」
「山田君、これは柔道の練習なんだよ。弱音はいてちゃ」
「やめろよ、ぼく普段優しくしてるだろ」

オーブリーは次の日の朝、地図をフロントからもらってきた。
端末にゴールド・ウィンの地図と乗り物の時刻表をインプットしてもらったが、人口の山や運河が邪魔をするし、道路が直線ではないので、ブロームインとの関所は、かなり距離がある。

「結構遠いぞ~」

歩いて間に合うわけがないので、音速車をたのんだ。


旅行鞄に化けているヒキガエルに話しかける。
「メスなんかふるっていた職人なんか、現役下りて10年後に、再びメスもったりしたら、震えるほど怖いとかあるらしいぞ」
「へええ」
「経験を積むのもいいけど、怖くなる。しろうとの良さは怖さがわからないから、案外楽にいくこともある」
「…」

サンドイッチを車の中でかじりながら、車は進む。


エリア 85


ジュール達は、自慢の剣をふるっていたが、疲労してきた。
「どうしたの~。疲れてきたかな?ジュール君」

「くそ、なめられている」
「すごい数だ。三人では疲れても来る」

「最後にこのバトルロボをたおしても、負けても引き上げるわよ」

中型の巨人ロボがおそってきた。




8



オーブリーはとうとう関所を越え、ブロームインにはいる。
「それで、どうするんだ、とうとうついたぞ」
「魔法殿をさがして」

ブロームインは地図的にいうと円で、ブロームイン城はラグナクロクの国境に近い、円の中心の真左くらいに位置する。
魔法殿はその右下くらいの近距離にある。

オーブリーはさすがによれよれになってきた。
帽子をポンポンはたいた。
乗り物の疲労と徒歩の疲労は中和されるというものでもなく、基礎体力のなさを実感した。

「これは…究極の戦士の称号は無理だ。よってスマートコントロールアクスもダメだな」

とりあえず、ブロームイン城下町のホテルをとった。
「あー、疲れたな」
「いろいろみたゲコ」
「常連のコーヒーハウスみたいな店とちがって、入ったことないレストランとか、飾りとか置物があっても、緊張して目にはいらないよな」



Tvをつけた

山田「田中君、ぼくらの学生時代はこんなぬるくなかったよね」
田中「そうだよ。ぼくらの時代、書き取りだけでも音を上げられなかったよ」
中山「なによ。学年違うくせに」

翌日、魔法殿をおとずれた。

魔法軍は魔法を使える剣士の軍隊で、最近ザール王子が管理している。

ひとりの術師がでてきて、ヒキガエルを見ていった。
「魔法をかけられて、カエルにされておる」
「なに!?おまえ、そうだったのか」

術師はオーブリーを見ていった。
「若いの。強そうじゃの。うちの戦士のひとりと勝負するところがみたい。勝負の勝ち負けにかかわらず、このヒキガエルの魔法を解こう」
「さすがにそんな気分じゃないが。いったいどういうことなのか説明してくれ」

「まず間違いなく、ダークシンデレラ・ウィッチがしかけた魔法だな」
「ダークシンデレラ・ウィッチ?」
「ブロームインにはサンダーバードが舞う。そのため怪物は襲ってきにくいが…人間か魔女か、得体の知れない怪人が住んでいる。もと魔法殿で研究していたといううわさもあるが、結婚前の女性をカエルに変身させ、その幸福を阻むと」
「なんのために?」
「さあ。白雪姫を殺そうとした毒りんごのお妃やヘンデルの魔女など、ダーク・ウィッチが正体だという」
別の魔法騎士がいった。
「反対にラグナクロクにはホワイト・シンデレラウィッチというのがいるらしいぞ。生涯かけて自分の魔法の力をため、王子と結婚する王女をサポートするという」
「カエルの魔法と違い、幸福にする呪文などエネルギーがバカでかいから一生に一度の魔法らしい」
「シンデレラにかぼちやの馬車をだしたのが、それだというな」




9


「ダーク・ウィッチはふだんブロームインにいるが、夜ほうきにのり、上空を飛びさまよい、魔法をかけていたずらして回るという」
「へええ」
「それじゃ、試合をしてもらおうか」


中位魔法兵


みたところ、軽い防具をつけただけの軽装の戦士だ。得物はライデンソード。
術師がいう。
「魔法軍はゴールド・ウィンからライデンソードを大量輸入している」

オーブリーはブルーレイピアをかまえた。

中位兵が火の玉を放つ。
ボウ!

「おっと」
オーブリーは回転してよける。よけるように見せかけ、相手の懐に潜っている。

スカラムーシュ!!

疲れているのと、試合であって、勝ち負けに対して興味がないため、力を抜いていた。

「グッ!!」
中位兵はよけるのが精いっぱいだ。

キャロムゲーム!!

「炎の剣!!」
中位兵は魔法をライデンソードにかけ、火の剣にした。

ガギン!

「おまえの、魔法術は火の球だけか?」
「だが、応用できる」

火焔をバーストさせ、目くらましにした。
バオオン
「おお、まぶしい」
そのすきに中位兵はライデンソードできりかかる。
「だが、気配で見える」
オーブリーは足を曲げ、ヒザで兵のミゾを撃った。
ぼふ
「ぐああ」
勝負あった。

「フム。我が国の王子とわたりあうかもしれん。約束どうり、魔法を…」

そのとき、そらからほうきにまたがった魔女が飛んできた。



エリア85


ジュールが巨人ロボのバトルソードをバリアハンドの左手でうけとめながらいった。
「今の時代サツが犯罪者を追いかけまわるんじゃなくて、犯罪者がサツをおいまわす」
「時代だと思います」
「だが、われわれも戦闘のために戦いたい癖がある」
「そう、闘神の悪い癖。戦闘で人殺しといていいひともない。だから闘神お断りの地区もある。ミルキーウェイ(天の川)のあっちらへんの地区なんかそうだった。ぼくらは半径1光年、侵入しないことにしている。あと、魔法禁止の星雲もあるな」




10


ダーク・シンデレラ・ウィッチ

「そうはさせるかえ。ケヒヒヒ」

中位兵が火の玉を投げた。
「おっと」
ひょいとかわし、おりてきた。
オーブリーは今度は真剣に構えた。
挨拶もスキもなく、技を打つ!!

スヌーカー!!

「石になれ!ヒヒヒヒヒ」
ビーンビビビビ

オーブリーは体が凍りつくように石化してきた。
「ぐ、ぐぐぐ」



エカルテ城

アルフレットがクラークにいう。
「君のその家族の幸せを願う気持ちを表して、旅路に付き合おうと思って…」
そのとき、クラークのジォヴェの楯が振動し始めた。
「おおお」
鏡のように楯が輝き、オーブリーの様子を知らせた。
「あいつの危機だ」

クラークは王座に飾っておいた、イーグルフルーレを天高く投げた。
雲の上まで飛んでいったが、黄金の鷲になって羽ばたいていく。

そのままブロームイン上空に飛んでいった。

「キヒヒヒ、二枚目のお兄さん。そのまま石になるがいい」

「グ、くそ」
術師は石化に対抗しようとしたが、ウィッチの魔力が強い。
中位兵が助太刀に斬り込もうとしたとき、そらから黄金の鷲が飛んできた。

上空で二三、旋回したかと思うと、細身の宝剣となり、落ちてきた。

ズドーン

オーブリーのところに突き刺さって落ちてきた。
「イーグルフルーレ!!」
オーブリーはさやから抜くとかかげた。
とたん、魔力を跳ね返し、石化が解ける。

「くらえ、スカラムーシュ!!」
「うおおおおああ」
ウィッチはあわてる。
「ヒキガエルになーれ!!」

イーグルフルーレで魔法をつくとはじけて消えた。
「どうやら魔法をはじきとばす宝剣らしいぞ!!」

スズメバチの巣 2138

ガガガガガガ

「ヒイイイイイイ」
ウィッチはほうきにのり、あわてて飛んで逃げだした。

そのとたん、ヒキガエルに掛けられた魔法がはじけ飛び、丈高く、美しい身なりのカテリーナ王女となった。
そこにいた一同はその光景にみとれ、息をのんで黙っていたという。


「あああ、魔法が解けたわ…ありがとう。オーブリー・ウォーターさん」
「あ、あなたはカテリーナ姫」





11


帰りは研究中の魔力移動装置でエカルテとラグナクロクにワープさせてくれるという。
「だめよ。危ないわよ、研究中の移動装置は」
「なら魔法エンジンの空飛ぶ船でエカルテのエアポートまで送ろう」

ブロームインのエアポートから乗船し、飛び立つ。
コインメタトリーの裏側の宇宙を飛び、浮上してエカルテのポートについた。
そこから、迎えが来て、カテリーナ姫はラグナクロクに帰った。



カテリーナ姫の日記

午後から、夕食まですることがなく、たいくつだったので、城の図書室に行った。
そこで二三面白い書物をみつけた。面白いものが見つかって得をした気分だったので、サラサラめくっていると、窓からほうきにのったお婆さんがみえた。
ながめていると、こっちに近付いてくる。
窓を開けて相手にすると、部屋に入ってきた。
そして、こういった。
「おや、小娘…立派ななりをしているね、ヒキガエルになるがいい。キャヒヒヒヒヒ」
そのとたん、からだがヒキガエルになっていった。
幸いなのは人語を話せることだった。

「なんてことをするの?お婆さん。わたし、何かひどいことをして!?」
「わたしはブロームインにいる。元の体に戻りたいなら訪ねてくるがいい。召使として使ってやろう。ヒヒヒヒ」

思いついたのはイカルスに連れ去られたとき助けてくれた、あの男。オーブリー・ウォーターだった。
あの人なら助けてくれるかもしれない。
あと、本で読んだブロームインの魔法殿。
いろいろな魔術を研究している人たちがいると。



筆者は「マッチ売りの少女」の絵本を、子供のとき読んだ。
大人になり、あれはかわいそうな女の子の物語だったのだろうかと首をかしげた。悲劇というか。

筆者は、真の勝利者があの少女だと思っていた。
マッチをすると魔法の力を呼び出せる能力に目覚めた話だと。
最後に街の誰より早く天国の扉が彼女に開いた。
彼女こそ勝利者だ。
そういう話だと解釈していた。

恋人がいなくても、大金持ちでなくても、お姫様でなくとも、気持ちよく働いている娘には天国がおとづれる。
働いた後給金が普通入る。
ささやかな幸せが来る。

人の働いた金をねこばばする人は、天国が来ないと叫んでも神は決して憐れまない。天国が与えられないのが当たり前だからだ。

正直に働く者、ジャガイモのスープを他人にゆずることを覚えた少女。おとなになり、聞き分けのいい正しい人にこそ、天国はやってくる。