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2012年8月17日金曜日

焼け落ちた空





焼けちた空








1

病院のベットでクラークは目が覚めた。
「うぐ。あいつら力任せに殴りやがって…いてーな」
パーカーが病室に入ってきた。
「声が太いぞ。大丈夫そうだな」
「大丈夫なわけねー、そういやあれからあいつらどうなった?」
「異次元に放り込んで奴らは奴らの世界に封じ込める。時空警察がそう言ってきた」
「それがいい。奴ら自分でけつまくれってな。力には力だ。攻めてきたの奴らのほうだぞ」
「だが、神が罪ありと決めただけで罪人がおとなしく地獄に突き落されるか?クラーク、やつらのパワーは半端じゃない。神々でもやられるほどだろう。それと同じだ。時空警察や我々のいうことなど、奴らには虫けらのたわごとなのだ」
「聞く耳持たないってか。いわさんといかんな…最後の審判でおとなしく判決聞き分ける罪人なんかいないってな。やっぱ神々の戦争なんだな。やばいの奴ら強すぎるんだな。炎上しなかったらやられてたぞ」
「ここら辺の宇宙の奴らなら、時空警察の名前をだせば、おとなしく言うことをきくと思っていた。だが、そんなそぶりはないな」
「そうとう遠くの奴らなのか?」
「わからん。だが、居心地のいい惑星を統治するも、地球の平和もなにもなくなる。地球も攻められるぞ。エジオンはほぼ壊滅した」
「カーターとアルフレットはどうした?敵さんもそうだけど、あいつらも、黙ってやられる立ちじゃねぇ」
「地球にいる。お前と同じで入院だろう」
「そうか…」
「またくる」


2

退院したクラークのトレーニングの毎日が始まった。
「空中槍殺法(くうちゅうそうさっぽう)を完成させるぜ」
パーカーが投げる槍を宙でうけとり、そのまま敵に突き刺す。
「ようするにアウリープだろ!?」
「障害物を用意しろ。それを避けながら走ってたたき込む!」
「やりをパスしながら、喰らわす!」ガス!
「すきなだけトレーニングしろ。それと、軍隊の中から一名、協力者が来る」そういってパーカーがさっていった。
「誰よ…。余計なやついない方が気が散らなくていいけどな…」

カーターの技を応用した、槍を地面につきたてジャンプしそのまま喰らわす、空中殺法。

走りながら、槍を投げ、自分はそのままダッシュ、ジャンプして回転キック!槍をつかんでたたき込む。

槍を横なぎにくらわし、かわされたら、蹴りにかえる技。

汗だらけになり、トレーニング室を出て着替えて仕事部屋にはいる。
イスに腰掛け、壁のモニターをみる。
「地球の奴らと交信したいな。電力不足で週に一回か…アルフレットとか鍛えてんのか。そういや、さいきん声太いままだな俺…」
開発した空中殺法をコンピュータに保存する。
疲労も手伝ってクラークは腰かけたままボーっとしていた。
(カフェでも飲んでくるか…)
重い腰を持ち上げ、コーヒールームに行く。
「誰もいね」
コーヒーを飲むが節電のため通信もモニターもつかない。
「壊滅状態だもんな…しかたね」
コーヒーもなんかだぬるいようなきがした。

次の日トレーニングマシンが送られてきた。
「このロボット相手にたたかえってか…!?」
「そうだ。完全に破壊していい。殺す気でやれ!」
「壊す気でってか…」
「それとパートーナーだ。紹介しようレイチェルモンドだ」
白人の大柄な男だった。元軍人という感じだ。
「はじめまして」
「なんだ、歳よりか…若いのじゃないときづまりだぞ」
「そういうな。じゃあとはまかせた」
パーカーはトレーニングルームをでた。
「えと…レイチョルモンドさんの得意技は…」
「みせましょう。そう気づまりにならないで」
そういうと、トレーニングマシンにむかってダッシュした。
マシンのエンジンが動きだし、右手のカッターが回転した。
ギギギギギギギ
レイチェルモンドは機械の関節にあたる部分を蹴った。
刃をかわすとともに関節が伸びきって衝撃が伝わりマシンのカッターが静止した。マシンがガクンと揺れる。
そして、ひじを距離をとってくらわすのでなく、鉄板のボディに触れてから、静かに、しかし力を込めて押した。
ボコ!
マシンのボディがへこむ。
「離れて放つ技もあるが、接触してから力を入れる技は100%に近く力が伝わる。離れた技は当たり具合で威力が変化する。つまりギャンブルのように博打技でもある」そういうと、回転して着地した。
マシンのメーターに古臭い電光掲示板が現れ180Pと表示された。
「なるほどな。スチールのガラナつぶすときといっしょか。しばらく握って暖めてから力むとボコンといくもんな」
休憩にすることにしたが、腹が減ったので食事をすることになった。
中庭にでると、パーカーが牛をひいてきた。
「なによ、いくら惑星が壊滅状態だからって牛さんつれてきて、殺して食えってか…しかたね。闘牛のつもりで一瞬で眠らせてやる。食えば供養になるんだ」
そういうと、クラークは槍を回転させジャンプして、牛の首に突き刺した。
「ああぁ!ちこっとずれた!首半分ちぎれて終わったな」
しかし、牛は即死して血を流して倒れた。ガク。スヤ。
牛の胴体に着地するつもりが、すべってこけた。
その拍子に顎をぶつけた。
「おぉう!いてな。あご打ったぞ」
レイチェルモンドと牛を解体して、串にさして火であぶる。
クラークが喰いつきながらいう。
「屠りかた悪いと、血の匂いしてくさいんだろ四足獣…わるいな」
パーカーがいった。
「食料自給率が89%になっている。惑星始まって以来だ」
レイチェルモンドが肉を喰いながらいった。
「でしょうな。今の文明であり得ない状態だ。すぐに自己修復して100%になるでしょうが」
「家畜など、通常の時間が経過しないと増えない。工場で作る機械じゃないんだ。植物は可能だ。地球のように季節をまたないで24時間体制で育てている」
クラークが煙でむせながらいった。
「品種改良か、よく知らんけど地球で習ったな。DNAとかあんまりよくないのか」
「いや、食用なら種を造らないで、食肉の野菜だけどんどん採れる方法がある。だがうまくない。食える植物と喰えない雑草の違いが分かるか…」
「いや…」
「生き物によって喰うか食わないか決まってる。人間の場合、腹に合うかと栄養とうまいかだ。人間の味覚と野菜が釣り合うように進化したんだ。馬が喰う飼い葉は人間は喰わん。完成された絵を描くようにDNAをいじって品種改良しようとしても、吟味するデータが多すぎて不可能だ」
「DNAってそんな複雑なのか…プログラム修正するみたいにいかないんだな」
「自分のルーチンなら解読できるが、他人のルーチンは理解しずらい。DNAの謎めいた難しさだ」
三人は飽きるまで肉を食べると自分の部屋に引きあげました。


3

クラークがコーヒールームでパーカーと談笑していた。
「こんなとこでしゃべってていいのか?大変な時なんだろ」
窓の外は曇りで雨がすこしちらついていそうだった。
「長い時間はまずい。だが少しなら許される…」
青いコーラを飲んでいたが、
「青いな、コーラの味だな、色がついてるだけか…そういや、学童のとき授業つかれるんだな。だけどホームルームとか説明聞いて終わりのとき、たいして疲れないんだな。要件聴いてメモして解散だから、暑苦しくないけど、時間いっぱいいる講義とかしんどいんだな。以外だけど理科室ってひたすら涼しかったんだぞ、なんでか夕べ考えてわかった。理科室のイスって背もたれないの、立ったり座ったりするイスなんだ。実験ってそうで立って理科器具いじったり、座ってノートに記録したりだろ、理科ってそれなんだ。自由にどっかいったり、座ってメモしたり、なにかとりにいったり、強制がないんだな。逆にレストランもそうだけど、講義はいったん始まったら動けないんだ。神経質になるほど座ってなきゃないんだ。自由がきかないから疲れるんだな。実験室って自分の都合で動ける。自習のときの図書室みたいに身軽なんだ。自分で時間外に勉強してんだから自由だわな。なんなら、ガラナ飲みにいってもいいし、本棚の本眺めてもいいし、ノート広げて勉強してもいい。講義は自由がないんだな。選択の余地がないから息苦しいんだ。レストランって自分が客だけどそれなんだ。ぎこちなくなるほど、喰い終わるまで喰う以外できるわけない。食ったら金払ってでるしかないだろ?強いて挙げればトイレだけなんだ、中座できるの。へたすりゃ、お膳の前でかたまってなきゃないんだ」
「なるほどな。実験室なんか、器具をセットしたら黙って待ってていいことが多いんだ。催促されない。ところが職場でもそうだが、無言でだまっているとさぼってるように思われるから意識するんだ。『手を動かしなさい』とかいわれるきがしてな。時間いっぱい動いてなきゃさぼりみたいにいわれる。それで神経質になる」
「講義とかコンピュータの演習でもそうだ。いくらやる気ない奴でもお地蔵さんみたいに1時間固まってるのしんどいぞ。ハッハッハッ」
「理科の実験なんか何でいいのか分かるぞ。やることやって、数値かきこんだらOKなんだ。それ以外咎められたりしないんだ」
「講義なんか開き直ってても鉛筆動かさないのつらいだろ。逆に書きとりしてても、なんか気が病むんだ」
「自由なのか、指示に従って黒板書いたらいいのかあいまいなんだな。あんまり自由にしてると当てられる。疲れる職場と『科学者の自由な楽園』のメカニズムがわかるきがするな」


4

槍を空中でキャッチして、片手でぶち込む。
ドシ!
両手でつかんだままぶち込む。
ガシ!
体を反るようにバネにしてたたき込む。
「俺とか、戦いだしたら本来の目的忘れて、暴れまわるだけだから、気をつけてな」
クラークがタオルで汗を拭きながらいった。
レイチェルモンドがいった。
「それでは生きた象をつれてきますので、技を試してみてください」
「なによ。ゾウさん殺せってか。あまりいい気がしねーな」
「マサイ族なんか日常ですよ」

レイチェルモンドが槍を放り投げ、キャッチし像にぶち込む。
「おおお、狩りの気分だ」
ザク!
「一撃で倒せなかったな」
像はたけり狂い、クラークを踏みつぶそうとした。
「おおお、やべ、やられるぞ」
クラークは像の腹にひじをくっつけると、力を入れた。
「エレファントバスターだ。おおお」
ズーン。
巨体の像がひっくりかえった。
「おおお、槍に夢中になると寝食忘れるぞオレ」
「マサイ族のコンピュータでしょう。もう一つ技を教えましょう」



5

クラークの仕事部屋。
レイチェルモンドさんがいうには、次は、飛び道具の開発だという。
「なるほどな、マサイ族のブーメランか」
「いろいろにカスタマイズできます。形状、円盤もいいし、ブーメランみたいなもの手裏剣型、さらにいろいろなアートで模様もつけます。相手を威嚇する意味や、あるいは的に気づかれにくくするカメレオンのような」
「ああ、アーミーのまだらの緑な」
「カスタマイズしたものを量産して販売しましょう」
「ゲームにある武器や見たいだな。そろそろ、野生のバッファローと対決してみたくなったぞ、コイサンマンになった気分だな。マサイ族もいいけど。葉巻ふかしたくなったから、コーヒールーム行くか」
コーヒールーム
「パーカーの用意したスポーツドリンクなによ、ビタミンくさいな」
「私もそれをいただきましょう」
「それで、開発、アルフレットがやったみたいに水晶玉に念じて造らせるな。いろいろ作ってつかい勝手がいいの採用するか…そうだ、基本形つくって、あとからカスタマイズできるのがいいな。スマホと同じだ」
「あと…狩りの時コイサンマンは太鼓でリズムをとって戦闘心を鼓舞します」
「的に当たりやすくなるんだな。狙いが定まる。セロトニンがどうのとかかな。日々のトレーニングが大事だな。やっぱバッファローに挑むか。飛び道具直撃して巨人の脳天かち割りたいな。頭がい骨くだけて終わりだぞあいつら。オレ心はやるぞ。獲物しとめるまでやすまらね」



6

クラークは自分の部屋で飛び道具を開発していた。
「形状は円盤で、飛び道具として使わないときは楯にもなる。デフェンドブーメランとなずけたぞ」
スケッチブックにアウトラインをかき込み、
「あとはペイントでアートをかきこまないとな」
テーブルと机にいろいろ広げ、クラークは夢中で取り組んでいた。
「ちょっと休んでガラナと葉巻ふかしにいくか…」
ガー
コーヒールームにはいる。
「パーカー」
パーカーがスポーツドリンクを飲んでいた。
「ビタミンがもろだな。Cらしいぞクラーク」
「そのCを壊しに来たんだなや。喫煙でC壊れるしな」
「たばこの自働無料販売機をおいておいたぞ」
「なによ、スロットそろえると出るのか…」
ガコン¶
§§☆
「でね」
ガコン¶
777
「セブンストライク…デラックスなたばこだな」
火をつけ吸いこむ。
「槍のトレーニングやりすぎて、体ろくに動かなくなったぞ」
「すこしは休めよ」パーカーが眠そうにいう。
「おまえが肘ついて枕にするなんてめずらしいな…そういや、あの巨人ども、魂のレベルで知ってたぞ!猛烈な怒り覚えるあのつら忘れね。やつら、ああ見えて特権意識の塊なんだ。ふつう、相手が認めるからとか、で謙虚に受け取るもんだけど、ごり押しなんだ。相手のルール考えねだけじゃね。自分で、けつまくるのも嫌なくせに、ひとのいうこと抜け道見つける達人なんだ。口でいわさんとしても無駄だな。力で叩きつぶさんといわせん!!あいつら居心地いい世界なんか与えたら終わりだ。傍若無人なんだ。リフレッシュルームでいうと、自分たちで掃除とか整頓とかしたくないくせにきれいな部屋欲しい奴らなんだ。苦労して自分で整えないから、ちらかすんだ」
「ん、そうだな…破壊した惑星、あいつらこき使って修復させたいな…」
「無理だな。自分たちだけの異次元に閉じ込めて、けつまくらせろ!ガラナとってくる…」
ガゴン¶
◆◆◆
「ホイ、ガラナ…あれ、なによレモンスカッシュか」


7

クラークはコンピュータで業務記録をつけたあと、頭を抱えてイスに座っていた。
「飛び道具、どうするか悩むな…“スカイモンキー”ってネーミングでいいか…」
そのとき、爆音がしてインスタント(簡易)メールが届いた。
ボカン!
「なによ。≪時間があるか?コーヒールームに来い。300に。≫
パーカーか…おお、地球からも来てる。ひさびさだなアルフレットか、パーカーのとこいってからめくるか…」
そういうと、クラークは自室をでて、コーヒールームの自動ドアの前に立った。

ガー

「なによ、まだいないじゃねーか」
クラークはシガレットふかし、イスにふんぞり返った。
めぼしいニュースを壁のモニターに表示させ、パーカーをまった。
「お、パーカーのブログだ。なによ、読んでみるか」
≪自分と同じくらい苦労した人間の言葉は、その重みが分かるため、人は簡単にあざけったりしない。意思疎通が通じないのは苦労のレベルが違う人たちである。相手の苦労がわかるため、そのひとを侮辱したりしない。私は時空図書館にあるありがたい本のなかに、自分が読んで理解できない本を数多く見出すことができる。先人の苦労を感じるときである。自分の苦労などたかが知れてる。人知を超える苦労をして生きてきたものの言葉は誰よりも重く心に響く≫

「あー、そうだな。あざわらうやつとか、苦労してねー。だからかわいそうと思ってねえで、喰らわせた方がいいんだな。本か電子書籍めくってみるか」
広めの中央テーブルに適度なサイズのまきものが表示された。
「まきものかよ、今の時代。スクロールだろ。ほおづえついて、ひじでめくるぞオレ。ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』かゲーテのおっさん相変わらず難しいぞ」

そのとき、レイチェルモンドとパーカーがはいってきた。
「きてたか、クラーク」
「なによ、麺類か。うまそうだな、腹にたまるぞ…」
「ヌードルだ。食料自給率が95%まで回復したからだ」
レイチェルモンドさんがいった。
「例の敵のことだが、時空警察の分析によると、恐竜が全盛のとき、貧弱な哺乳類が、惑星が崩壊の危機に生き延びたように、生存競争は環境によります。やつら悪の巨人はわれわれからすれば死滅すべき生物だが、いつか環境が変わったとき、われわれの代わりに生きてくれる可能性がある。善悪などそんなものだと」
「なるほどな、さっきまで補欠だったけど、雪が降ったころにはエースみたいな話か。それでもオレ、あいつらに頭下げるのいわさんな」
8

飛び道具は“スカイモンキー”と名付けた。
クラークが地球からのインスタントメールを開くと、ビデオが表示された。
≪すまん、クラーク…惑星エジオンにはいけなくなった…奴らとの戦いはまかせたぞ…とにかく、ごめん≫
「なんだと!?、あいつらたち悪いな」

その夜、パーカーは寝室で“本当にあった幽霊話”を読んでいた。
「怖いの…?」
「怖い。一人じゃ無理だ、なんかこう人間の当てつけみたいなのが✍
自分が人を殺したことがある人間だという自覚だ」
「殺したことあるの?はやく次読んでよ…」
「タッ!☛、責任の重さで間接的にだ!戦争で敵ならある…」


クラークは夢の中でファイトしていた。
「おう!」
槍を天高く投げ、落ちるころ合いを計り、ジャンプしてキャッチ。そのまま巨人にぶち込む。
ドシ!
額にもろに喰らった巨人はたおれる。
「なんだと、本気出したら一発か!?」
次の瞬間、雪ふかい、雪原を歩いていた。
「どこよ?」


「わたし、自分で幽霊見たことあるけど…」
「よせ!ニヤニヤしていうな!」
「夜、コンビニに買い物に行ったとき…ゴミ箱の上に座っている女のひとみたことある…月の夜」
「やめろ!たのむ」
「満月…?」
パーカーはガタガタ震えだした。



9


次の日、パーカーはクラークに、コーヒールームで機能の幽霊の話をした。
「ふーん。オレだったら、槍ぶん投げてくらわしてたけどな。『なんだ、死に帷子(しにかたびら)着こんだ白髪の婆さんか…夜中にゴミ箱すわってたらあぶないぞ』ってな」
「よせ!怖くないのか」
「幸せそうにしてる、若い女とかビビらせにくるんだな」
「怖いだろ!」
「お前、そんなんで星統括できるの?」


クラークは槍にペイントし、スカル(骸骨)のアートを入れた特製の槍をつくった。太い、といっても直径5cmくらいの槍に長細いアートを入れるのに苦労した。
「できた。ボーン・ランスとよぼう」

その夜。
パーカーは『アラビアンナイト』をかかえて寝室に入ってきた。
「今日は、“アラビアンナイト”だぞ~。昨日の幽霊話は、たちが悪すぎた。今日は楽しいぞ~」
「へー、おもしろそうねー、明かりロウソクにして読みましょうよ~」
10

クラークが作業してるとボカン!とインスタントメッセージが届いた。

≪時空警察と会議だ200までに用意して会議室に来い≫

「なによ、会議か…会議室ってはいったことないけどな」

通路に出て表札のようにかかっている掲示板に「会議室は?」と話しかけると、空間に軽めのレーザーで案内が表示される。
「けっこうチリがとんでるんだな。湿度対策か?」
会議室をノックするとき、クラークは緊張した。
パーカーが幽霊を怖がるのを思い出した。
はいるとレイチェルモンドさんとパーカー、それに何人か参謀が座っている。
「おごそかなチェアだな。よごされねーべ」
まもなく時空警察の役人3人がはってきた。
パーカーの彼女がお茶をくばる。
時空警察の役人は、「あ、おかまいなく」といって会釈した。


11

会議が終わって、その夜。
自分の部屋でTVをみていたクラークは、ふいに右手が震えた。そのしゅうんかんアラームがなりPPPP…、アイコンが空間に表示された。ホログラムで、

≪アルフレットからのメール フロム地球≫

と書かれていた。
パチンとたたいて割ると、ボカンと煙が出て消えた。
壁の一面に映像が表示された。
みるとアルフレットがすまして立っている。
「!?」
あたりが輝いている。どうも高エネルギーの圧力にさらされている様子だった。
ゴゴゴゴゴ
『クラーク君…時間を2秒か止められるかもしれないと、部下にミサイルをうたせたときだった…アウストロクロスの応用さ…高圧のエネルギーのなかにいても、息を吸ってはくように平然としていられる』
「なんだと!?こいつ…おちつきはらってやがる」
『クラーク君…君も適度に運動したまえ…僕はとうとう太陽を克服してしまった!!今、太陽の中にいる!太陽の熱などぼくの“アウストロガード”のまえでは涼風さ』
「オーラでガードしてやがる!? バカかお前! 太陽ってマンガじゃないんだぞ!?」

『そうそう、クラーク君。太陽の内部に潜って、面白いものを見つけたよ。太古の神々のおくりものかな』
まばゆく輝く光のなかでアルフレットはおちつきはらってすましている。
「マジか!?この野郎…想像以上に強くなってやがる。恐ろしいな……」


12

テーブルを囲んだ5人は安楽椅子に腰掛け、めいめいが好きなことをしていた。テーブルにはやり散らかしたトランプのカードがちらばっており、
パーカーは葉巻をくわえ、無言でだまりこんでいる。「…………」
クラークは槍を布で磨いている。「…………」
アルフレットはモニターのTVをながめている。あごを握りこぶしにのせ。
「……………」
カーターは腕組みをして瞑想しているかに見える。「……………」
レイチェルはコップのウィスキーをながめて、ときどきなめていた。「………」

食後だけに、けだるい物憂さの中での沈黙だった。
半分眠っているかのような心地よさの中、口を開いたのはアルフレットだった…。
「それで……」
誰もが無言だった。
「連中との対決は…?」

パーカーは葉巻の煙の刺激がこいしく、口を開かなかった。
吸い込みたいときに煙を吸い込み、はきだす。
チンダル現象を起こしている煙と光線をながめ、また目を閉じる。

クラークはボーン・ランスとなづけた愛槍を布で磨く手を止め、布をテーブルになげるようにおいて、槍を肩にかけた。そして目を閉じた。

レイチェルは、ペース配分を考えていたが、アルフレットの言葉に暇つぶしの刺激を感じ、酒をなめるのを休めた。時間が長持ちした感じがした。
そして、誰が返事をするのか、楽しみでもあった……。だが、自分は返事をする気はなかった。無意識にそういうつもりになったが、ややして、誰も返事をしないときには…あるいは?

カーターがテーブルのリモコンを操作した。
目をつぶったまま、無言の動作だった…

「なるほどね。あと4日か」
モニターをみているアルフレットはそういって、コップにワインを注いだ。

「´´つまみにチーズも食べろよ」クラークはチーズの皿をアルフレットのほうによせた。声は元の声だった。

「どうも」

海に浮かんで深呼吸。無言が続くと海底に沈む感覚だった。
いきがつづかなくなると…
葉巻を吸いこむ。
グラスをかたむける。
ワインのにおいをかぐ。
姿勢を変え、寝返りを打つ。

そうすると、また海面にうかび、息が吸えた。

アルフレットがまた口を開いた。
「安心しろよ。クラーク…オレがいるだろ!?」
コポコポなにかいってるなとおもったが、クラークが声を出した。
「コーヒーメーカーとまったな。誰かカップに注いでくれや」
誰もが口をつぐんだ。
パーカーは思わず葉巻を口に運ぶのを遠慮した。´´

クラークが自分でカップに注いで、席に戻ると、彼はいった。
「アルフレット。おめ、太陽散歩してきたわりにはおしゃべりだな」
声が太くなっていた。
「おめ、加減分かってねえからな。いざとなったら、オレの槍でたすけてやるぞ」
「どうも」

カーターは退屈しのぎに聞いていたが、口が笑っていた。
パーカーがいった。
「あまり興奮させるな。さっきまで半睡してたんだぞ~寝冷えするだろ~」


13


カーターは瞑想して修行していた。
ハウスの外の裏の森で。
神通力で宙に浮き、座禅をしていた。
(やつらに親父にされたら終わりだぞ)
パーカーの声を思い出した。
奴らの力の秘密をなんとかして…

ガオンに蹴りを喰らい、気を失ったが、最後のプラネットの崩壊の瞬間目がさめ見た。
あの巨人ども。

奴らのネックは自分で自分の首を絞めること。
得意なのは相手のすきを打つこと。

時空警察との会議。
「ダビデはペリシテ人をうってうって、二度と、立ち上がれなくした。
彼は一度、ペリシテ人の仲間になったことがあるからわかる。
話のわかるふりをしたらたかられる。その恐ろしさ。
半分農業、半分海賊の民族、ペリシテ人。
イスラエル人はだまっているとたかられる。
ただ、そのダビデも父代わりで前王のサウルの手のひらに収まらなかった。
ペリシテを打てば済むなら、話は単純だったろう。
悲しいのはイスラエル人どうしの軋轢だった。
サウルは千を打ち、ダビデは万を打つ。
ダビデの子ソロモンくらいなら、その父の手のひらにすっぽりおさまるのにちょうどよかった。
前王の手のひらに収まりすぎると、今度は務まらなくなる。
ソロモンの次の代でイスラエル帝国は分裂した。

働いているふりの達人は半分だけ働く。そして、律儀にもっていく。
こっちが大人になると、半分いうことを聞くふりをして、たかる。
有無を言わさず、叩き伏せる。あるいはやりとりしない。
腹を割って話せわかるのは常識ある相手だけだ。
たかるのを是としている輩に通用しない。
自分の自由と他人の自由、自分の責任を勘違いしている。」


クラークたちに聞いた会議のレポート…
教師ぶったら負けだ。
たかりのエキスパート。
奴らのエネルギー源…
弱点…

自滅…自活できない奴らの本質は、正しい道を嫌うこと…
その結果、自ら生産できない。
「食うべからず」というだけではだめだ。
返し技で返される。
たかる相手のいない世界。
自分の本当の力でないと出られない塔。
塔…