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2012年9月1日土曜日

閉じ込められたアルフレット


閉じ込められたアルフレット



閉じ込められたアルフレット

夏の小説祭り


1 

アルフレットはヒンズースクワットをしながら、独り言をいった。
「クラーク君。こういうのは一発でノックアウトしなくてはない…」
工場にあるような、銀色むき出しの倉庫のような、そんななかにいた。
しかも、10分ごとに一面が前に、ガゴンとまえにでる。
広い部屋?なので、圧縮死するまで明後日まであるだろう。
別に棘や槍がついてないが、閉じ込められていい気がしない。
「そのうち、水攻めも来るとか?…!?」
ガゴン
また動いた。
デパートなど、品物を入れる裏口を見たことがあるだろうか。
白い頭巾をつけた、おばちゃんが、バケットをたたんで並べている。
トラックがいつの間にかいて、積み下ろししている。
冷凍庫をあけたときの白い冷たい煙が沸いている。
道路がないのにどこからはいるんだろう。地下から駐車場のあれで登るのか?客がいるデパートの中と違い、地味な業務用の作りだ。
業務用冷蔵庫が体当たりしても壊せなさそうだ。
そんな銀色の業務用冷蔵庫が無機質に動いて自分をつぶそうとしている。
「僕のパンチなら一発だけど…」
ふと、カーターの奥さんを思い出した。
地球にいたころ、カーターの妹はどうしているだろう。(ドロシー)
カーターの妹=ドロシーと冷蔵庫にしまっていた。
魚が氷といっしょにとどいた。発泡スチロールにはいって。
自分はたまたま客でカーターの自宅にいた。
ソファに座って緊張していた。
なぜかそういう作りだった。
珍しいことだ。
カーターの家に伺ったのは。
その一回しかない。カーターは経営者で僕はオレゴン州の警察官だ。
ワトソンはいない、クラークもそのころはよく知らない相手だった。
「チルドよ、冷凍庫にしまっちゃダメよ」
そう、カーターの奥さんはドロシーにいっていた。


オーラを68%にして、動く壁にむかう。
(いや、業務用冷蔵庫か…)
左のジャブをめいっぱい壁にくらわす。
渾身に力と体重を乗せて右ストレート。

ガンガンガンガン!ドシーン!!

壁が汚れた程度でびくともしない。
(マジか…)
ばんざいのポーズで蹴りをいれた。
ドカ!
容赦なく回し蹴り!
ガッ!
背面から蹴る。
ドン

(………クラーク君。もういちどオーラを全開にしてみるか…)


2

みると、クラークの槍がおちてる。
(クラーク…)
「この槍だと、僕のオーラをまとわせたら、一回で消滅するな…」
アルフレットは、思案した。投げやりに使うか、壁にたたきつけるか…、
箱の中にはあとは何もない感じだ。



惑星エジオン


「レイチェルモンドさん…別の惑星で軍人をやっていたあなたでも、策がないのか…」
パーカーは司令室で頭をもたげていた。
「十絶陣だけは…飲み込まれた後の通信は、前例がありません」
レイチェルモンドがいう。
カーターが通信していたが静かにいった。
「地球に連絡を取ったが…オレゴン州警察の反応は冷たい。アルフレットは地球で支持されていない。みな、エジオンまでいってなにをしている!?という世論だ」
レイチェルモンドさんがいった。
「われわれ、防衛軍や政治家は人の同情だけはもらうことはできません。軍人は最後まで、胸をはらなければ報酬がもらえないものです」
クラークが炭酸飲料を飲みながらいった。
「んだな。やつら、俺らが役に立った時だけしか、よろこばねー。俺らが怪我したら厄介者扱いなんだ。それが軍人だな。ただ、俺らダテに偉そうにしてねーからな。嫌われるわな」
カーターもいった。
「道をどけってな。倒れてたら、邪魔にされる…」
「どれだけ、怪獣をたおしていても、そうなる。それが軍なのです」
「サムライのつらさだな。奴の電波とどかないかな…」クラークがいった。


3


(勝負は一回…)
あとは、オーラを極限まで開放するしか、すべがないな。
槍を横なぎにたたきつける。オーラをまとわせて。

ジジジジジイ…ジ…ジ…ジ…ジ…

クラークの声が聞こえた気がした。
太い方の声で…
(世間の人、俺ら見捨てたぞ…アルフレット…おめー威張りすぎだしな。だけど世間の人、業務用冷蔵庫に閉じ込められたみたいに、肩身狭く生きてる人大勢いる…今のお前と同じで助けてくれる人誰もいねんだ)
アルフレットは思わず、問いかえした。
「(なんで、世の中そうなっている!?割とみじめに……クラーク!?)」



(……人と人がいるからだ。アルフレット…おめーが二人いたら、つねに喧嘩だぞ。自給自足じゃないんだ。役割分担したら一長一短なんだろな…ロビンソンクルーソーみたいにひとりで生きるか!?)

「せめて…そらとぶラピュータにしてほしいな!クラーク君!!」

アルフレットはベストタイミングで敵度なオーラをのせて槍をスラッシュした!!





4


「…もう、みつけたぞ、クラーク!」
アルフレットはしばらくしてから、構えを解いた。


ズズーン!


粉くさい、煙をあげて、壁は4,5回分後ろに下がった。

(たったこれだけか……)
槍はしばらく手元にあった。ジ・・ジ。が、ロになり、塵になった。
(クラーク君…偉い人が弱音をはくと、涼しいんだ…でも、政治的問題を抱えている偉い人が弱ると、おかずが確実に一品減ることになるさ。だから映画の中の偉い人が茶の間のTVで困るんだ。それで涼しく感じる。うちわくらいは…)

つかつか、すすんでアルフレットはゴンゴン拳で壁を叩いてみた。
進んでこないように見えるが、簡単に押せる感じでもない。

アルフレットは右手がしびれるのに気づいた。
「おかしくしたか…」
そういうと、首の後ろの骨をいじった。
ガゴ

(神経がはずれたな…)
右手は痺れを感じなっなったが、そのかわり、糸の切れた、ばねの外れた、ヒンジ支点のようになった。
(軽いが、ブラブラするな…窮屈でないがこんどは気味が悪い…)
制御のはずれた右手にオーラを乗せて、壁に渾身の一撃を放った!!



惑星エジオン

「のら百姓が嫌だからと言って軍人と恋すると、夢だけ見て捨てられる」
パーカーがいきなりいった。
「いつの時代の話よ…」クラークが驚いた。
基地の裏の川辺にベンチをおいて、屋台のそばを三人で啜った。
「レイチェルさんはどうしたのよ…」
「帰った……」
「割りばしおれるべ。なんばん入れすぎたな」
屋台のおやじが「すいかもありやすが…」
「ひと切れくれ」
秋の風がふきそうでまだ蒸し暑い。
薄暗い中後ろを見ると、虫の鳴き声が聞こえる。





5


アルフレットは帰ってきた…
だが、肩がイカレ、足腰が立たず、オーラも燃え尽き。

地球

わたくし、ワトソンは書きとめておかねばなるまい。
彼ら戦士たちのたたかいを。
カーターとクラークが二度目の帰還を果たしたとき、わたしは暖かく出迎えたつもりであった。
アルフレットがみえないが、前、クラークがいないように都合によるものだと思い、気にも留めなかった。
彼の話を聞いて、むせび悲しんだが、同時に気が遠くなるほど、心寒い恐怖を感じたことを、躊躇することなく、書きとめねばなるまい。

彼は十絶陣からの脱出のため、車いすか寝たきりの生活を余儀なくされ、その時の苦労からの悟りを、惑星エジオンでいかすべく、パーカーの相談相手の職を得た。
ドロシーは地球から宇宙船で飛行し、エジオンで暮す。
半分寝た切りのアルフレットの身体の世話をし、子供も生まれる。
体は壊れ、オーラもつきたが、頭の働きにより、子供や孫(のちの話)の面倒をみ、知恵で生きる者の見本となる。

パーカーは相変わらず、惑星エジオンの統治者でありつづけ、クラークは地球ではカーターの会社のバイト兼役員、エジオンではパーカーを支える軍人かつアルフレットの話し相手として生きる。
わたくし、ワトソンは小説を書きとめ、生涯を古本書店主としてくらそうとおもいたつが、電子書籍の流勢のため、断念を余儀なくされる。
カーターは妻と子と暮らし、会社を運営し、休暇をとりエジオンにいき、アルフレットを悼む。

以上、わたくしがみた、惑星の戦士の生きるということの顛末である。




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