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2011年3月18日金曜日

ラジオ恐怖小説 ちびっこ

ラジオ恐怖小説 ちびっこ

「レジのおばさんって、愛想悪いよな」


「金ちゃんと払っている客なのにハンベかきそうになるほどきついもんな」


「本格的なデパートのお姉さんなんか子供相手敬語使うんだぜ。


あれは感動したよ。ちゃんと教育されているんだよ」


「子どもだからって、あなどるなよな」


「お祭りのお兄さんなんか気前よすぎるよな」


「後で親方に怒られるんじゃないかってこっちが心配するよな」

さやかのお店



「いらっしゃいませぇ」


アクセサリーショップに勤めるさやかは、元気に挨拶する。


愛総よく客に商品を説明し、パワーストーンや


アクセサリーを販売する。


後輩の面倒もよく見る。


店長からは頼りにされている。


「時間帯によってかけるCDを変えるべきだと思います。


高校生が来る下校時間には流行の音楽で、


仕事帰りの女性が来る時間帯はおしゃれで

疲労がなごむ音楽がいいと思います」


後輩のアルバイトがさやかに助けを求める。


「レジはこうこうこうやって、こう」


後輩アルバイトの評判は決して悪くはないが、


きつくはないがどこか浮いた人でとおっている。

2



さやかは実は学生時代、人と会話するのが苦手で、


周囲に溶け込めず、引っ込み思案だった。


いじめに会ったことはないけれど、


なんだか学校のクラスメイトも教師も不親切だと感じていた。

社会人になってからも、仕事の量の割に給料が少ないし、


いじめられることこそないが、周囲の人は不親切だと、


常に感じていた。


レストランやコンビニ店員など、接客業を何度か転職した。

口べた、だと思っていたさやかだったが、


経験を積むに従って、接客の腕はあがっていった。


仕事は評価されるようになっていった。

恋人もできた。


しかし、なんだか不親切で1年くらいで別れた。


いじめられるわけでもないさやかが、


不親切だと感じるわけはこうだった。


自分だけが不親切にされるのではなく、


不親切なのが当たり前の職場だらけだった。


そこで、自分が親切を始めたが、


今度はまわりから浮くようになって一年くらいで止めた。



3

めったに会ったことのない、アクセサリー・ショップの


オーナーが来てさやかを呼んだ。


さやかに自分の店を持てという。


そして小切手に金額を書き込んだ。


「そんな…こんなにたくさん!?いくらなんでも、


こんなにお金はもらえません」


さやかがこう言うと


「いや、いや、いいんだよ。君の店が成功したら、


それに見合う金額を返してもらう。いわゆる投資だ。

失敗したら、私の丸ぞんだ。


君にただでお金をあげるわけじゃないんだよ」


さやかは決心した。


さやかは接客に熱中した。


オーナーはどちらかと言えば親切だったが、誰も親切にしてくれない。


しかし、買い物に来てくれるお客さんは喜んでくれる。


どんどんさやかは接客に熱中していった…


30年後さやかのお店は歯ブラシから


ジャンボジェットまで売る「さやかデパート」として繁栄していた。

おしまい